第五巻 天啓の雲

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サスケ、[どこから漏れたんでしょう。][たぶん米国で株や先物で稼いでいる、石田三成の配下だろ。][心配ですね。][なに、そのくらいはいいさ。資金を稼いでる連中だからな。][今、1870兆円ですから、予定にもうすぐ到達しますね。][そういうことだな。][竹中半兵衛参謀長もこれから忙しくなります。]

[話が戻りますが、エアトレインはすごいことになりますね。飛行機がいらなくなっちゃうんですよ。それもリニアの1万分の1ぐらいの予算でしょ。][もっと少ないかもしれんな。][東京からアルゼンチンのパタゴニアまで普通で2時間、特急で40分というところかな。]これは大革命でしょう。平賀源内さん大活躍ですね。

王様、[さて本業に戻ろう。横浜と川崎の料飲組合から合同で展示即売会のリクエストが来ているが、意見を述べてください。]すず、[忘年会シーズンに入る前ですので、食器を売るタイミングとしてはいいです。]
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志野、[横浜、川崎にもたくさんの料飲店がありますので、そこそこはいくのではないですか。][そうだな、まあ東京の半分ぐらいが売れれば上出来かな。]サスケ[それでも売上額は京都の1.8倍ぐらいですかね。魅力的ですよ。]

遠州、[山の手なんて高級住宅街もあり面白いと思います。食器のほかにお茶碗も期待できます。]すず、[マスコミに知らせた方がいいですよ。面白いネタをいつも提供していますんで喰いついてきます。ロスチャコスにお茶碗一個2億5千万円で売った男とお茶の大家小堀遠州も好みを展示販売。なんてね。]ワンワンワン。

[そうだねマスコミをあおって火をつけるか。今回も3日間だけだから集中していきましょう。じゃあ準備をしてください。そうそう、マスコミに騒がれるには強烈なエサが必要だが、清の西太后が使用していた満漢全席用の食器と同程度で故宮博物館に陳列されているものと同程度のものを8人用各10枚、合計80枚を8億円で提供します。]
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[中国人の好きな8にちなんでいる縁起のいいものなんていうのはどうかな。]すず、[これだけの肩書で世界トップの人気作家が作るのですから、この3倍の価値がありますよ。]サスケ、[インパクトが強いしいいんじゃあないですか。]

[それから案内して決まった場合は特別ボーナスとして、100万円を出します。尚2匹の犬も案内は可能です。私のところに連れてきてください。私のところに来てリーチを宣言するか、お客さんを直接連れてくるかですが先着が優先します。犬の場合は100万円の替わりに猪肉の生肉食べ放題を10回提供します。なお、食べ物のことで犬をからかったり、ジョーダンを言ったりした場合は犬の場合は間違いなく怒って噛みついてきます。私は2匹から左右の足を噛まれましたので注意をしてください。]ワンワンワン。

[100万円もらいたいです。][わてもや。]マスコミはまたまた鬼陶芸作家のサンリンポチェが話題を提供と面白いように書き立て、事前人気もいいようである。
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当日、マスコミは本年度最後のサンリンポチェ展示会とあって、多数が詰めかけた。注目はもちろん西太后全漢満席使用レベルの8億円の食器セットである。東京と同じように古伊万里魯山人・京焼の普及品がよく売れている。

遠州好みの3,500万円に2,500万円のお茶碗もすでに売れて快調なようだ。王様のほうは500万円の茶碗とか600万円の花器とかがポツポツと売れている。悪くはないがまだ5,000万円の話は1件もない。[客の入りは悪くないので、波が来れば一気に行くと思うぞ。]

[100万円欲しいです。いろいろ使い道があるんで。][それなら一客入魂で気合を入れてやれば何とかなるんじゃあない。][ゴンちゃんにユリこっちに来て、今年最後だから一客入魂のハチマキを用意した2匹とも頭を出しなさい。]怪訝な顔をしていたが猪肉食べ放題10回がかかっているので、ハチマキを着けることにした。お客さんからは拍手喝采である。
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すず、[あれ、ゴンちゃん達気合入っている。][すずさん景気を上げるため、天ぷら3匹載せ蕎麦の出前を頼んできてくれるかな。][は~い喜んで行ってきます。][よ~し食べて運気をあげるぞ。ゴン太にユリはクラッカーだ。]すず、[ここの天ぷら大きくておいしいですね。ダシもいいですよ。]

食事中に大物感漂う2家族がやってきた。100万円が掛かっているので食べているものをそのままにして、飛び出して行って。雰囲気的にはとてもいいようだ。食器を詳細に点検している。別の家族も値段がちょっとなとかいい感じである。サスケのほうは値引きの話をしている。さすがは華僑の多い土地柄である。お金にはとても執着心があるようだ。2組とも8億と高額なので、とことん値切りにかけている。

クラッカーを食べていた2匹はヨレヨレの調理の仕事服を着た老人を見てすぐに駆け付けた。老人はハチマキ姿の2匹を見て、[はっはっはっ、なんだこの犬。]
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と言いながら8億円の食器セットを30秒程確認して、犬がワンワンと吠えながら先導するのでその通りに王様のところにやってきた。[いらっしゃいませ、お気に入りのものがございましたか。]と丁重に挨拶をした。

[あなたが西太后の食器を作ったのかな。][はい、その通りです。][なかなかよくできていて、そのうえずいぶんお買い得の設定にしたな。][価値を認めていただきまして、ありがとうございます。]サスケの客は指値で7億5千万円なら買うとの交渉がまとまったようで、王様のほうに行こうとしたら、すずのほうもまとまったようですずが走り出している。

王様の前の老人はおもむろに内ポケットより銀行渡りの小切手額面8億8千万円を出して、[買うよ。]と言った。サスケとすずは大声でまとまったことを言おうとしたが、小切手の額面を見て無言になった。両方の商談は8億円以下だったのである。[ご覧の通り購入された。]両者ともうなだれて、お客様に断りに行った。
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ゴン太にユリは遠吠えをあげて勝ちどきをあげている。[展示会が明後日までですので、終了しましたらお届けに上がります。]老人はひょうひょうと帰っていった。

王様はこの事が記事になり宣伝されると販売に好都合ということを考え、各メディアに記者会見する旨を伝えた。もちろんゴン太にユリも一緒である。”現代の忠犬、西太后使用食器の再現品セット8億円を売る。”こんな感じで一客入魂のハチマキをキリリと締めた写真をポーズを決めて撮らせた。この狙いは翌日の新聞に犬の写真入りでデカデカと出た。[王様、狙い通りに大きな記事になっています。][これで来場者が増えるな、はっはっはっ。]

来場者の購入単価は低いが普及品の食器がよく売れている。もちろん犬と写真を撮りに遊びに来た客も多い。[まあ、8億円が売れたので多少の遊びはよしにしましょう。]すず、[あ~、100万円もう少しだったのに。]二人は並んで、冷めた食べかけの天ぷらそばを無念そうに流し込んでいる。
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予想した通りに山手の金持ちが手頃なお茶碗を探しに来た。小堀遠州好み骨董の赤膚焼き250万円に古曾部焼き300万円が売れた。やっぱり遠州ファンは根強いものがある。横浜と川崎の料飲組合合同食器販売会は目標より少し上の売り上げで終了したが、なんといっても8億円セットの売り上げが柱になった。

王宮の会議室にスタッフと子供3人組がそろっている。[夏見の現地は頑張って売り上げをあげています。こちらも売れそうないいアイデア商品を出していこうと思います。なにか考えがありますか。]サスケ、[まだ究極の宗教グッズがあります。それは復活したお釈迦様、龍樹菩薩に弥勒菩薩のグッズです。ただこれをやるとやりすぎの感じもしますがどうでしょうか。]すず、[そこまでいかない方がいいと思います。]

王様、[とりあえず外しておこうか。]志野、[宗教グッズではありませんが、北斎さんや広重さんがおられるのですから、浮世絵に力を入れるべきです。]
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王様、[そうだな、そのとおりだが、どんなものができているか確認をしてきてくれるかな。タエちゃんが親しいから一緒に行くといい。][浮世絵のことは私も一緒に同行します。別件ですが達磨大師がいるのですからそのグッズも作るべきです。やっぱり達磨です。]

[そのとおりだな。ただありきたりでは面白くないんで、どうだろ写楽が画いた達磨大師っていうのは面白いと思うが。]すず、[どうでしょうか、面白すぎるということもあります。]サスケ、[併せればいいんですよ。写楽のダルマに大師の書いた般若心経を背中に入れる。これを分身すればいいんです。]

志野、[写楽はちょっと砕けすぎだと思います。普通のダルマに大師が書いた般若心経を印刷して、大師直筆の名を入れればと思います。それで大師が入魂式をしている写真を掲げておけばいいのです。本家のダルマとして売り出せば人気が出ると思います本家か総本家かしれませんけども。]
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王様、[そんな感じがいいな。これはター坊とよっちゃんの両親が売ることになるので、タエちゃんがリーダーでそれぞれの両親の売りやすい商品の意見を聞いてまとめるようにしてください。][はいわかりました。]

王様、[達磨の本家の売りは面白いかもしれんな。]サスケ、[もしかしたら化けるかもです。]すず、[私もそう思います。]

王様の夏見の作業室で小堀遠州と相談中である。20個の茶碗と10個の水差しに10個の茶入れも並んでいる。[遠州さんが復活して陶磁の遠州七窯の骨董や、高麗李朝の朝鮮陶器を見たてて使用されていますが、復活してから独自の茶道具はなかったのでこのように銘石で作ってみました。薄造りですが特別に強化していますので、割れにくくなっています。木椀に漆を塗った茶碗はありますが、天然石のお茶碗は聞いたことがありません。一点物の販売と普及品の販売を考えています。遠州さんの復活のシンボルとしての意味づけもあります。

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まず使用しての使い心地や値決めをどのようにするか、アドバイスをいただければと思います。]遠州、[これはまた面白いですね。天然ものですので造形だけの作為で、本体そのものの材質は天から授けられたものです。作家の個性に振り回されずに、天の作意をそのまま感じ取ることができるお茶碗ですので、楽焼とは真逆のものです。私はとても気に入っていますよ。]

王様、[まあ、自分で使ってみると同時に茶会などでも使用して、みんなの感想を聞いてくれるかな。][はい、そのようにさせていただきますが、私も石の茶器は初めてなのでとても興味を持っています。[これは面白いですね。銘石をこんなに薄く作れるのは王様しかいないですよ。上限が500万かそれ以下の350万円くらいが妥当だと思いますがいかがでしょうか。]

すず、[私はこれは名物クラスだと思います。練り上げのように幾層にもなっていて、大理石のような白いものもねじれて入っています。]
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[これは数千万の価値がありますよ、安くしないで5,000万円クラスに設定すべきです]志野、[お茶のプロの遠州さんの意見がとても重要だと思います。販売をする前に使用した人の意見をいろいろ聞いて参考にすべきです。]王様、[そうだね、そのようにします。]

王宮前のバードサンクチュアリーの大型水槽の前である。[親分、金魚型のダルマって面白いですよ。][そうだジョー。ランチュウダルマに出目金ダルマがいいジョー。]
[なんで達磨さんのダルマが、金魚のダルマになっちゃうのよ、そんなの作っちゃったら、あなた達のお父さんやおかあさんが、売れなくてたいへんでしょ。]夏見の売り場の応接コーナーにチベット僧が2人来ている。いずれも品があり、頭もよさそうである。

[私が責任者のサンリンポチェと申します。こちらは部下のサスケです。[ほう、サンリンポチェとはチベットではとても大きな名前ですよ。]
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[いえいえ、サンはお香のことでリンポチェが専門家という意味です。][ははは、そうですか、私達はダライラマ法王の側近ですが法王の命令でお邪魔しました。法王はご存じの通り高齢で身体もかなり弱ってきました。そこで最後の仕事は2つありまして、1つ目は次期後継者の選定ですが、これは世界中から高僧を集めて意見を聞き、どうするかそのうちに決まると思います。

そしてもう1つはジョカン(大昭寺)の本尊ジョウォリンポチェ(釈迦牟尼)像と同じものを作ってほしいということです。それと先日京都の寺に青銅製の観世音菩薩を収めたと思いますが、それと同じクラスのものを16体造ってほしいとのことです。

なんでも法王がおっしゃるにはダラムサラにも仏師はいるが、あなた様は抜きんでていて通常では考えられない境地におられるとのこと。予算はすべてで30億円です。たぶん6倍の費用が普通にかかるがなんとかお願いして来いということなんです。]
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サスケ、[法王様の依頼でしたら何とかしたいのですが、これはいかんせん無茶な仕事ですよ。お釈迦様を造るだけでもそれ以上かかります。それに同じような本尊なんて世界中に他に、誰も造れる人なんていないでしょう。]

[無茶は充分にわかっています。でも何とかお願いします。]王様もため息をついて考えあぐねていたが[ゴン太にユリはどう思う。]ワンワンワン。[そうか、ちょっとスタッフと打ち合わせをしますので、お茶でも飲んでお待ちください。]いつものスタッフが集まっている。

王様、[30億でかなりの難題だが、ダライラマの依頼です。みんなの意見を言ってください。]遠州、[たしかに仕事の割に金にならなくて難しい依頼です。ですが私らの仏教の本尊は観世音菩薩ですし、ゴン太も化身です。それを見込んでのことですので、損得の考えも必要ですが、もう一歩別の考えも必要だと思います。ここはやるべきです。]ワンワンワン。
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志野、[仏像の依頼とともに、王様にチベットの後事をお願いするという意味合いもあると思います。仏像よりこちらの方が強いように見受けられます。]ワンワンワン。[なるほどな。]すず、[超能力で造ると言ってもこれは大仕事で犬2匹の気を借りてもやっとできる感じです。よほどの覚悟が必要ですよ。][ワンちゃん達協力してくれるかな。]ワンワンワン。

[よし、やろう。分身して全員出動でいいかな。][賛成です。]全員一致である。[それでは依頼に応じます。明日10:00にここに来てください。瞬間移動でダラムサラの公邸に行きます。]

[ありがとうございます。どのくらいの工期ですか。][3日~10日ぐらいです。][口をポカンと開けて、ほんとうにそれでできるのですか。][年の瀬で忙しいので、早く作って早く帰ります。ハッハッハ。][わかりました。そのように伝えます。]ここはインド北部のダラムサラにある法王公邸である。王様は10年前に個人旅行で訪れて以来である。
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[いや~、よくきたな。オーダーを受けてくれて礼を言う。本来、私が行ってお願いしなければいけない立場だけれども、この通り体調があまり良く無くてな。][すみません、ちょっと教えてほしいのですが本尊のジョウォリンポチェを超能力で投影してもぼやけています。この前の焼失で事故にあいましたか。][事故にあったようだが、固く口留めされていて詳細はわからない。困ったものだ。]

[それでは法王が亡命された、1957年のお姿を再現してみます。]そうかすまないな。それからその犬は噂通りにたいへんなものだな。本来私が座布団を譲らなければならないのだが、この通りなものでご容赦を願いたい。]ワンワンワン。

[法王も観世音菩薩の化身とされていますが。][ふぉっ・ふぉっ・ふぉ、私の場合は形だけだよ中身がない、本物はこの犬だよ。][この犬は観世音菩薩の化身ということは承知をしているのですが、こちらのユリはなんの仏様の化身でしょうか、教えてくれないのです。]
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[それは~。][ワン。][教えてはだめだと言っているが、そのうちにわかるだろうよ。話は替わるがパドマサンババが復活していると聞いているが。][その通りですが、小さなお寺に住んでいます。サンババも同じく座布団を譲りましたよ。][なるほどな。オム マニ ペ メ フム。]と言ってお題目を唱えた。

3日後にお釈迦様と16体の青銅製の観世音菩薩の仏像が完成した。8名の高僧が来て出来上がりを詳細にチェックしている。一様に釈迦牟尼のジョカン寺の本尊の出来栄えに驚いている。亡命してきたときのお姿そのものであるからだ。

法王、[実はここだけの話だけども、亡命するときにジョカンの観音堂の観世音菩薩像を持ち出してな、あそこにあるものは偽物だったのだが、それも今回の火事でどうなったことやら。それでは決済をしますので経理の方に行ってください。終わったらモモ(チベット餃子)にトゥクパ(ほうとうのような湯面)を食べていきなさい。私はここで失礼するよ。]    
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全員、[ありがとうございました。]法王[今後ともよろしくお願いしますよ。それと皆様の前途を期待しています。]寒さもやっとやわらぎ、桜の季節がやってきた。子供3人組は門前病院の院長が飼っているランチュウと東錦の池にやってきている。それぞれ卵が孵化して幼魚に成長しているので見に来たのである。

[親分、そろそろ選別ですね。]振り分けられた不良品をもらうことになっているのである。[たくさんもらって飼えば死んでも残っているジョー。][親分、僕たちも勉強しましたんで、こんどはヘマをしませんよ。][そうだジョー。うまく行くジョー。]ダイとウメが首をひねっている。

[ほんとうに大丈夫なの。][間違いないですよ、僕たち自信があります。][大丈夫だジョー。][ちゃんと気を付けることをノートに書いて、その通りやるのよ。][がってん承知だジョー。]2回目の京都料飲組合の展示販売会依頼である。今回も会期は3日間でホールの使用料は無料になっている。
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[京都にまた行くことになりました。人気の京焼大御所の仁清・乾山・潁川・仁阿弥・木米に保全の普及品を厚めに用意してください。それといつもの魯山人古伊万里の普及品も多めにお願いします。遠州さんは遠州七窯と国焼の手頃な骨董とお茶碗の普及品をお願いします。

私は東京で評判の良かった明朝色絵の琳派風と琳派風の染付にオリジナルの益子乾山を用意します。尚、このオリジナルは絵柄を増やし釉薬もグレードアップしたので価格帯を500~3,500万円にいたします。遠州さんの目利きで朝鮮陶器5,000万円クラスは今まで通りでお願いします。

私も5,000万円クラスを用意するとともに、今回初めて石のお茶碗に食器を展示いたします。京都は銘石が多い大寺が多く昔から親しまれている土地柄ですので期待をしています。意見がありましたらどうぞ。]サスケ、[京都はお寺が多いので、宗教グッズも用意しますか。]
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[お線香の販売高が日本一になり、また宗教関連グッズもよく売れています。でも今回は料飲組合主催で呼ばれていますので、宗教グッズの展示はいたしません。ただ宗教グッズの卸や仏像に仏画などの高額商品の注文は受け付けます。それと無茶な注文を入れてくる場合もあります。その場合は決して嫌な顔をせずに、私に相談をしてください。その時にあまり利益が出なくても、次に繋がるかもしれません。]

前回、ここでの展示会が好評だったのとジョカン寺本尊の釈迦牟尼ダラムサラに復活させたこと、それに初めての石のお茶碗の発表ということで開場の時間前からマスコミが興味津々で詰めかけていた。

明日香陶芸店の展示販売会のアイドルになっている犬2匹にも好評の一客入魂ハチマキを今回も締めさせた。ワンワンワン。予想通りに京焼の潁川・仁阿弥・保全の普及品が好調である。茶道が盛んなのでグループで見に来ているのが特徴的である。
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石の茶碗は今回が初めての展示なので様子を見るために、価格を250万円~5,000万円までの素材が勝負で付けているが、さてどうなることやら。[まあ、珍しいわね。これは人間国宝の松井康成さんの練り上げよりずっとよろしいわよ。][ほんとうですね。本当の天然の色ですのでこれはいいです。普通のものでも3,500万円以上の価値はあると思います。]

[中国の磁州窯で焼かれた骨董の練り上げのものがあるのですが、こちらの方がいいですね。私は3,500万円のものを買います。]と言って、すずに対処をするように指示した。

他に2,500万円のものをグループの友人が1点、同じく仲間の人が3,000万円のもの1点購入された。買われた3人にすかさずにマスコミが殺到して感想を求めている。小堀遠州もさすがという顔をして、苦笑いをしている。自身は今回より御本手茶碗を3,500~5,000万円で出しているのだが、こちらはこちらで期待をしているようだ。
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御本手というのは日本より形のお手本を送り朝鮮で焼かせたものである。なかでも今回、半使茶碗に5,000万円を付けている。半使とは朝鮮使節の役職名であり、彼らの持参した茶碗にこの手があったのでこのように名付けられたのである。

御本手には遠州もかつて絡んでいたので愛着があるのである。やっぱり目の高いお客さんはいるようだ。御本手の彫三島に金海がそれぞれ3,500万円と3,000円で売れた。ひとまずはほっとしたようだ。料亭や割烹の女将や仕事服姿の調理人が買い物籠にまとめて入れている。明日香陶芸店の名前が知られ信用も出てきたようだ。

ゴン太にユリが8歳ぐらいの双子の女の子を母親と一緒に連れてきた。[ママ、このワンちゃんのハチマキおもしろい。][ははは、そうね。2人にあうようなお茶碗を探しているのですが。][はい、いいものがございますよ。この高取焼の普及品はそれぞれ25,000円です。高台裏の印が違うだけで本体は本物と同じです。]
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同じようだが少し釉薬の流れが違う2個を用意した。[まあ、遠州さん直々の見立てですから間違いございませんね。どうあなたたちこれでいいかな。]2人ともコクンと相づちを打った。[さ~て昼食にするか、すずさん縁起のいい天ぷら3匹載せ蕎麦をお願いしますよ。][はい、わかりました。行ってきま~す。]

サスケ、[ここのお蕎麦は天ぷらがうまいし、ダシも効いていてつゆがうまい。]すず、[私はどっちかというと、この昆布だしよりカツオだしのほうがいいな。][犬用に尾っぽをやってくれ。]ワンワンワン。

前回の展示会で1億円の礼賓の見込みに南無阿弥陀仏のお題目を入れた老師が、同じように弟子に支えられてヨタヨタ歩きでやってきた。[あ、どうも老師久しぶりです。ようこそいらっしゃいました。][あんたの礼賓で毎日お茶を飲んでいたら、死にぞこないになってしまった。ふぁっ・ふぁっ・ふぁっ。][何かご用件がありそうですね。]
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[この私の友人がじつはとんだトラブルに、巻き込まれてしまって弱っているんじゃよ。][私でできることでしたら、協力しますが。][うん、それを見込んできたんだけど、五日後に落成式予定の本堂に収める仏像5体が、トラック事故で粉々になって壊れてしまって頭を抱えているんじゃよ。そこであなたがダライラマのオーダーで、ジョカン寺の本尊釈迦牟尼と観世音菩薩を16体を、3日で造ったことを思い出してなここに来たんじゃ。]

[明後日までここで展示会ですので、1日で造って次の日に届けるということになりますね。][1体8億で5体で40億のしごとじゃ、仏像の詳細はここに書いてある。あなたならできるだろ、一客入魂のワンちゃんに聞いてみなさい。はっはっはっ。]

少し考えていたが、[どうだゴン太にユリ。]ワンワンワン。[はっはっは、できると言っているぞ。][わかりました5日後にお届けいたします。][持っていく場所と時刻は書類に入っている。よろしく頼むな。]
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青くなっていた老師は活力が出たのか、背筋を伸ばして帰っていった。サスケ、[ひえ~、いろんなことが起こりますね。でも40億ですよ。]サスケ、[大本山仁和寺の住職はさすがに顔が広いですね。総理の御母堂さんのお仲間ですから。]

王様、[そうだな、今回もきちっとやれば次につながる。]すず、[やっぱり天ぷらそばの御利益は大きいですね。毎回いいことが起こりますよ。それからこれは志野さんのお手柄です。というのはジョカン寺の本尊と16体の観世音菩薩をダライラマの依頼で、3日で造ったっていうのはまさしく世界一の仏師といっても間違いありません。これは宣伝になると思って各マスコミに情報を送ったのです。案の定いい宣伝になりました。500億円の青銅製の花器のオーダーもそうですが、大きな商談2つ成功というのはすごいことですよ。]

[そうだなよくやったがみんなのチームワークがいいというのが一番だと思うよ。これからも、協力しあって頼むな。]
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マスコミがまた何かあると思って、王様にいろいろ聞いてきたがもちろん守秘義務があるので言えるわけがない。[さあ、今日はそろそろ終了ですので、準備をしてください。]今日の売り上げはもちろん40億円が入ったので大きいが、食器や茶碗もよく売れた上々の一日であった。

2日目は新聞で石の茶碗が報道されたり、有名どころの普及品食器が料亭などの和風高級店に大人気という記事が出たので、名古屋、大坂に神戸近辺からもその関係者が多数来店した。昨年来た方も多いようだ。

今日は5,000万円のものが出展している中で最高の価格であったが、それの1.8倍の価値を持つものを7,500万円で出した。目利きで資金のある人はこちらを選ぶと思われる。それは天然石のお茶碗でほれぼれとするような景色のものである。まさしく天然の芸術品というもので、色違いの層が見事な文様になっている。
もう一点は奥高麗で、昨年も販売したがそれの1.8倍の総合力を持ったものを7,500万円で提供する。
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これも見る人が見れば納得するだろうという、半分遊び心の設定にした。遠州も栄胡録の茶碗を7,500万円で出してきた。さてどうなることやら。明朝色絵琳派風と琳派模様の染付の食器は京都で初めて展示したが、普及品でなく一点物を探している高級料亭などがよく買われていく。

[すずさん、今日は鴨南蛮蕎麦にしてくれるかな。]はいわかりましたが、昨年と同じですね。私も好きなんですよ。]食べ終わって、すこし寛いでいると犬が短く吠えた。重要人物がやってくる知らせである。現れたのは京都で知られている有名な財閥の会長で数寄者である。昨年もたくさん買っていただいた。[どうも会長久しぶりです。]

[いろいろ派手にやっていますな。ロスチャコスにお茶碗一個を2億5千万円ですか。][あれはこちらの値付けが1億5千万円だったのですが、向こうの自分の目利きで1億円を上げて2億5千万円にしたのです。]
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[ははは、ほんとうのお金持ちは遊び心があっていい。ところで石のお茶碗を見せてくれるかな。][はい、これが最高のものです。]

[ほう、これは見事だ。よくこの素材が見つかったな。][天からの贈り物だと思います。][ふ~む、倍の価値はありそうだぞ一つもらっておこうか、それと奥高麗もいいな。あなたのオリジナルの益子乾山もやっと私が買うレベルになってきた。浜田が開発した釉薬琳派の文様がうまく融合してきた。いい感じになったぞ。

遠州さんのもいいよ、栄胡録の逸品でなかなかこれだけのものはあまりないな。御本半使茶碗は本来本歌に御本が勝てないことになっているが、これはこれでいい感じだな。それでは石のお茶碗7,500万円、奥高麗7,500万円、オリジナル3,500万円×3=10,500万円、栄胡録7,500万円、御本半使茶碗5,000万円で合計3億8千万円+消費税3,800万円=4億1千8百万円。こんなもんでいいかな。][はい、ありがとうございます。]
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秘書がすぐに振り込みを完了した。秘書は四角の革製のキャリーバッグに大事そうにすべて収納した。[おかげさんでいい買い物をしたよ、またよろしくな。][たくさんお買い上げをいただきまして、ありがとうございました。]

サスケ、[よしやった~、王様やりましたよ。すごい売り上げです。][すずさん帰りに天然ウナギでも食べていこうか。どっかにいいとこあるかな。][鴨川沿いに看板だけ見たことがあります。たしか天然鰻と書いてあったと思います。][よ~し、そこに行こう。][え~、生まれて初めてです天然鰻なんて。][俺も食べたことないうまそうだな。][携帯で予約しておきます。]

2日目はみんな大満足で終了して3日目も順調に売り上げを伸ばし2回目の京都料飲組合招待販売会を無事に終了した。次の日は予定通りに仁和寺住職依頼の5体の仏像の製作にかかった。国宝と同じレベルにしたので品質についての苦情はないものと思われる。
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仏像5体を収めるために王様とサスケにすずそれに犬2匹が京都の仁徳寺にやってきた。落成式のために五色幕が張り巡らされ、本堂の中に仏像が並んでいた。担当者がすぐに住職を呼んできた。

[約束を守ってくださり、まことに申し訳ない。して仏像はどこに持ってきましたか。]と不安そうなまなざしで一同を見渡した。[大丈夫です。心配には及びません。]とニヤリと笑った。[それよりもどこに仏像を置きますか。置き場所と種類をおっしゃってください。][ここに千手観音菩薩。]と位置を示した直後にいつの間にか指定した仏像が収まっていた。居並ぶ関係者は唖然として言葉も出ない。[次の仏像の名前と場所を教えてください。]

このようにして5体を無事に届けることができた。出来上がりはもちろん国宝並みであるから出色である。関係者、[ほ~、これほどのものは他にあまりありませんよ。さすがにダライラマ法王が、あまたの仏師の中から選抜しただけあります。]

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住職は大きくうなずいて、深々と感謝のお辞儀をした。[どうも助けていただいて、ありがとうございました。経理で支払の用意をしてありますので、そちらでお願いいたします。それでは儀式の準備中ですので失礼をします。]と慌ただしく行ってしまった。

[さあ、手続きをして帰りましょうか。すずさん処理が終わったら、みんなへのお土産にお菓子を買っていきましょう。]お寺近くの老舗の店で、多めに買いそろえて持ち帰った。

いつものバードサンクチュアリーの大型水槽の前で、ター坊によっちゃんが前と同じように職人町の乱暴者3人の前で、偉そうに講釈をたれている。ター坊、[飼い方のポイントは4つある。1に水、2に餌、3に病気、あとは愛情である。ボクとよっちゃんはこの事を完璧にやっているから、飼育の難しいランチュウと東錦の幼魚をもう無事に3週間も飼っている。]2人は大きくうなずいて[これから師匠と呼んでもよろしいでしょうか。]
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[ま~な、そう呼びたいならそれでいいよ。][それでいいジョー。][今日はどうもありがとうございました。][ああ。][ああだジョー。]2人とも得意になってふんぞり返っている。

[あなたたち、金魚の飼育は難しいのよ。明日のこともわからないのに生意気なこと言っちゃっていいの。][親分もぼくたちのこと師匠と呼んだ方がいいですよ。][そうだジョー。]ボコボコ、それぞれにゲンコツがとんできた。[前みたいに全部死んじゃって、死にそうな顔をするかもしれないのよ。]

夏見の明日香陶芸店ビルの3階会議室である。いつもの企画スタッフが参加しているが、北斎30点の浮世絵、広重に写楽が各20点にお栄10点の合計80点の浮世絵とお栄を除いた3人との共同制作の陶器が集まってきた。初めての浮世絵師4人との合同展示会に向けての対策である。花器はネット販売が主なので2階に3分の1ぐらいに詰めておくようにし、空いたところで展示販売をすることにした。
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期間は3週間で値段は浮世絵が北斎15万円、広重と写楽各13万円、お栄11万円。陶器は北斎の70cm大壺各3億5千万円を7点、大皿を5点各2億5千万円。写楽に広重の70cm大壺2億5千万円各5点、大皿1億7千万円各5点。抹茶茶碗北斎5千万円5個、写楽に広重は3千5百万円各5個に決まった。

[こんな感じですけど意見をどうぞ。]サスケ、[浮世絵が相場と比べるとずいぶん安価ですが。][その通りだが販売枚数を決めていないので、いくらでも売れる。][なるほど。]すず、[陶器は一点物なので同じく安く感じられます。]サスケ、[浮世絵と同じ色調で一点物。これは人気でそうだよな。]

遠州、[お茶碗はいずれも面白いですよ。][北斎に広重は外国でも人気なので、外国のマスコミにも連絡をしてあります。もしかしたらそちらから来店するかもしれないし、たぶん例の大富豪も見逃さないだろうな。それではみんなで会場作りを手伝ってください。]
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展示会のオープンを明日に控え、内外のマスコミと評論家を呼んで先行閲覧会をこれから催すことになっている。
すず[これは本物の北斎や広重ですので、世界中から関係者が押し寄せてくるんじゃあないんですか。美術館とかコレクターに頼まれた業者とか面白くなりそうです。それに日本趣味の富豪は多いですから。]

サスケ[展示期間が3週間もあるので、焦らずにゆっくりでいいんじゃあないんでしょうか。私の予想ですと陶芸品は2週間以内で勝負はつくと思います。]すず、[国内だけですと厳しい値付けですが、世界に発信していますので充分に完売できると思いますよ。]

はやくも英国大使館員が、うわさを聞きつけて調査にやってきた。女王の依頼ということだが、納得して帰っていった。マスコミ各社の評判も上々である。さて今日はオープン初日である。昨日のマスコミの取材でも北斎と広重などの浮世絵有名作家新作の大量発表ということで興奮状態であったが、広くスペースを割いて情報を載せてくれたので電話での問い合わせが多い。
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卸希望の業者も内外からかなり多く来所されているが、英語は志野とすずが普通に話せるので心強い。某大手自動会社の総務担当3人がお見えになった。本社と支店のあちらこちらに和のテーマで飾るということで、海外を含めて合うようなのを探しに来たと言って熱心に見ている。

[壺3点と大皿3点それに浮世絵を15点買おうと思っているのだけど、稟議決裁を取らないと金が出ないのです。社長命令だから間違いないと思うけども他の人の認めももらいますので、明後日まで取っておいてほしいのですがよろしいでしょうか。]

[それでは請求書を書きますのでお待ちください。入金を確認しましたら、担当者が直接にお持ちいたします。][え、業者ではなくここの担当者が来るの。][高額で壊れ物ですので、直接うかがいます。][それではよろしく。][ありがとうございました。]北斎、広重、写楽の大壺に大皿を各1点ずつに浮世絵を15点で売上合計約14億4千万円になる。
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サスケ、[さすが世界のT社ですね。スケールが違う。][まあ、社長命令だから壊れないだろう。][こういうのやっていたら、普及品が売れなくなっちゃいますね。][それはだめだよ。うちは普及品で儲けさせてもらっている。おろそかにしてはいけないな。][そうですね、気をつけます。]

高級車の運転手付きで華道海の坊の次女が降り立った。最近の婦人雑誌にイケてる女性のようによく出ている。[責任者はいますの。][ど、ど、どちらさんで。[海の坊です。][ど、ど、どうぞ、中にいますんで。]

小政が人物を確認して、すばやく応接コーナーに案内した。[私が責任者のサンリンポチェと申します。][あなたでしたの。よく新聞や雑誌に出ていますね。][恐れ入ります。して何かご用件がおありのようですが。]
[私どもの重代の花器と同じようなのが、ネットで販売されているようなので、確認しに来ました。]
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[弊店はいろいろな参考資料を見たりして、アイデアを組みわせながらデザインを決めているのもございます。たまたま似たのだと思いますよ。][ケチを付けに来たのではなく、よくできているので感心をしているのです。何なら取引しますか、需要は多いですよ。]

[それは天下の海の坊さんですから名誉なことですので、ぜひお願いいたします。][それでは後で担当者を来させますね。実はここに来たのはそれがメインではなく、お皿を買いに来たのです。見せていただけますか。]

[どうぞ、どうぞこちらです。][まあ、素敵ですね。これは一点物ですので価値がありますよ。これとこれとこれ3枚くださいな。][消費税込みで、6億4千9百万円です。]秘書が振り込みを済ませ、荷物を大事そうに持った。[それでは担当を越させますね。]
[どうもありがとうございました。]
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すず[これじゃあすぐに売り切れになっちゃいますよ。][なくなっちゃったら作っちゃおうか、頭にインプットしてあるんで、少しだけ絵柄を変えることはできるさ。]サスケ[それはよく考えた方がいいです。すぐに売れちゃうから、ありがたみもあるんです。]

[それもそうだな。2つ大きいのをやったのでちょっと休憩するわ。食堂でお茶を飲んでくるのでやっててね。][はい、どうぞ。][これで海の坊の花器が絡んでくると忙しくなるね。][そうですね。人員を増やさなければいけなくなります。]

オープンから7日が経過し、北斎や広重の陶芸品は3分の2が売約済みになっている。売れた作品のところには実物大の写真が置かれるとともに、販売金額も表示されている。売約済みの作品の場合は予約も受け付けることになった。また、展示中の陶芸品であるが、あと1週間で完売見込みである。浮世絵は卸希望の業者が多く一般販売数を超えている。
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白人の老夫婦と従者がタクシーから降り立った。従者は鞄を抱え外で待機している。老夫婦は展示会場を詳細に見ながらうなずきあっている。[責任者はどなたですか。]ゴン太が頭で足を小突いているが、重要人物の合図である。[いらっしゃいませ、責任者のサンリンポチェと申します。]

[実は抹茶茶碗を妻に買ってやりたいのですが、老後の貯えの中からやっと50万円しか出せません。すみませんがどんなものでもかまいません、選んでいただけませんでしょうか。]ゴン太が頭ではなく前足で足をトントンと叩いている。かなりの大物のようだ。[わかりました。こちらで少しお待ちください。]小政に、[遠州さんにお茶を2つ頼んでください。][へぃ、承知しました。]

[これを見立てましたがいかがですか。]2人で高台裏からじっくりと見ていたが、お互いに笑みがこぼれている。そこに遠州がお茶を運んできた。[まあ、一服してください。]
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[これはおいしいですし、貧乏人の老夫婦にはもったいないサービスですよ。それとこのお茶碗はとても50万円には見えませんが。][はい、そのとおりですが、せっかく遠いところからはるばるとやってこられたのです。このくらいはかまいませんよ。]

[さきほど遠州さんとおっしゃっていましたが、今持ってきたのが遠州さんですか。][はいそうです。]外に向かって手をあげると、従者がすかさずに鞄を持ってやってきた。[実はお願いがあって来たのです。私は米国で投資会社をやっています、バフ〇ットと申します。][バフ〇ットさんと申しますと、有名な富豪の方ですか。][有名かどうかわかりませんが、それなりに資産は所有しています。]

おもむろに従者がかばんを開け書類を取り出した。[お願いというのは妻のためにこのような美術館を建てまして、まかせようとおもうのですが妻も私も日本文化が好きでして、その関係のものを揃えようと思っていました。]
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[そんな時にこちらの北斎さんなどの展示即売会があることを聞き、早速やってきた次第です。この美術館に展示するものをあなたと茶道で有名な遠州さんにお願いしたいのです。もちろん展示するものの他に、その数倍の収容物が必要だということも心得ております。収容期間は1年で予算は5,000億円です。予算を超えても1兆円ぐらいでしたら用意できます。それだけでは当然に不安だと思いますので手付金として500億円を預けておきます。引き受けていただけますか。]

[すみませんが、話がとても大きくて重要なのでミーティングが必要です。少しお待ちいただけますか。][けっこうですよ。ゆっくり打ち合わせをしてください。私どもは店内を見て回っていますので。]

[面白い案件が出てきた。そばで聞いていて内容はわかっていると思うので意見を言ってくれるかな。]サスケ、[これはものすごく大きな話ですね。全力で受けるべきです。]
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志野、[額は大きいですが、超能力を使ってしょっちゅう先方に行って打ち合わせができるので充分に可能ですよ。]遠州、[これはまた面白いですね。一生に一度あるかどうかの話です。断る理由は何もありません。私も興味を持ってこのミッションに協力をします。]

すず、[でも収める作品の調達がたいへんです。分身してチームを作れば可能ですかね。]
サスケ、[手付金を500億円預かるんですから、やってみるべきです。][じゃあやることにするか。][異議な~し。]

[お待たせをいたしました。それではありがたく承ります。][それはよかつた。私は投資家なのでふ、ふ、ふ、あなたに実は投資をしたいのです。ですから3分の1の1,500億円ぐらいはあなたの作品にしてください。それとさきほどお持ちいただいたお茶碗は50万円でいいとおっしゃっていただいたのですが、2個1億円で購入いたします。手付金と合わせて501億1千万円を振り込みます。]従者が素早く振り込みの処理を完了した。
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[これはどうもありがとうございます。私達は超能力でそちらの方に気軽に訪問することができます。打ち合わせにうかがいますので、よろしくお願いします。][ではよろしく頼みますよ。]みんなで最敬礼をして送り出した。

すず、[王様、食堂にエビ天ぷら3匹載せ蕎麦を用意してあります。][やっぱりエビ天そばは後利益があるな。]ワンワンワン。[あ、そうだエビの尾っぽは犬用だな。]ワンワンワン。

展示オープンは2週間が経過したが、残りあと1週間である。浮世絵は卸も入っているので800枚程が売れているが、陶芸品は北斎の大皿2億5千万円が2点残っている。他は全部が売約済みである。サスケ、[今日あたりでそろそろ終了ですかね。]すず、[でも普通の人が買えるもではありませんからね、残るときは残っちゃいますよ。]と、その時、オープン前日に見えていた英国大使館員がやってきた。
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[まだ残っているといいのですが。]小政、[何をお探しで。][北斎の大皿よ、まだありますか。][はい、こちらへどうぞ。][あ~、よかった。この2皿いただきますわ。]小政、[消費税を入れまして、5億5千万円です。][銀行渡り小切手を用意しましたがよろしいですか。]額面通りのものを、ハンドバッグより取り出した。

[それでは領収書を作りますのでお待ちください。][これで女王陛下も安心をされると思います。][お待たせいたしましたが、領収書とお品物です。どうもありがとうございました。]

経過を見ていた王様、[よ~し、完売したぞ。夕食は特上寿司食べ放題だすずさん、料理長に行ってください。][はいわかりました。]みんなから拍手が起きた。
[いや~、やりましたね。][今日はさっき言っといたけど特上寿司食べ放題に、なんと350年物の泡盛を開けるぞ、琉球の王様が飲んでいたものと同じものだ。][それは楽しみです。]
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王宮の中華専用食堂に北斎・広重・写楽・お栄などの浮世絵師の面々に子供達3人と王様などのスタッフなどで10人が円卓を囲んでいる。[まあ、好きなように飲んで食べてください。]メイドがそれぞれに老酒を注いでいる。すでに前菜の三併盤は置かれていて、それぞれが取り皿に盛っている。

[みなさんのおかげで共同で作った陶芸品は完売し、浮世絵もたくさん売れました。お礼を言います。料理はどんどん出てきますので、好きにとってください。][親分、僕達も食べていいんですか。][食べたいジョー。]メイドが次に置かれた腰果鶏丁と前菜を取った小皿を2皿づつ子供たちの前に揃えた。[わ~ぃ、おいしそうだジョー。]

[皆様もどうぞ、お取りになってください。]北斎、[ずいぶんと気さくなお殿様ですね。呼ばれたのはごちそうをするだけではないと思いますが、どうぞ気軽にお話をしてください。]
続いてイシモチの甘辛煮も出てきた。
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[それでは申し上げます。どうぞ、食べて飲みながら聞いてください。実は皆様にここの仕事はこのままに進めてもらって、もう一度江戸にもどって仕事をしていただきたいのです。]

写楽、[え~っ、また貧乏長屋に戻るのですか。][いえいえ、昔のスタイルで流れている歴史はそのままで、それとは別に真に江戸のど真ん中で、その当時の雰囲気そのままに仕事をしてほしいのです。]広重、[具体的にどういうことでしょうか。]

[はい、紀伊国屋文左衛門という有名な豪商がいますが、その豪商に私の魂が乗り移ります。そしてここにいる10人で行くのです。私が文左衛門になっていますので、決して嫌な思いはさせません。まず私とこのサスケとすずの3人で行って皆さんをお迎えできるようにします。準備ができましたら、もう一人の私と残っている子供たちを含めた全員で一緒に紀伊国屋邸に入ります。皆さん分身で行きますんで、ここの生活はこのまま残ります。
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したがって当然に今の生活に戻ることができます。]お栄、[紀伊国屋さんの客人扱いでしたらお金に不自由はしないし、何か問題が起きても、お金で解決ができますのでとても面白いと思います。貧乏な暮らししかしていないので、贅沢なこともしてみたいです。新しい発想の絵も画けるようになると思いますので興味深いですね。]

写楽、[お金に心配なく一流どころの芝居を毎日見れるのはとても絵を画くのに役立ちます。][絵の題材は自由です。売らんがための考えは一切必要ありません。好きなものをおかきください。

それと子供たちの役割は私たち4人のスタッフの間にいて雑用係をやってもらいます。その方が事がスムーズにいくと思ったからです。]北京ダッグが出てきた。メイド[これは皮にネギの細切りを添えて、専用のミソで食べてください。][親分これはおいしいですね。][おいしいジョー。][王様、そこで金魚を飼えますか。][飼いたいジョー。]
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[そうだな、お金に不自由はしていないので飼えるだろうよ。][わ~ぃ、おもしろいジョー。][それから犬2匹も一緒に行くから。]タエ、[それはよいことです。ゴン太にユリは頼りになりますから。]

[王様、よく考えてみますと。紀伊国屋さんでなじんだら、北斎さん一行はそのままにして引き上げた方がよろしいと思います。もちろん文左衛門の魂に入った王様はそのままですが。][そうだな、そこにいてもすることがあまりなくなるから、それだったら王宮で美術館に収めるものを進めていた方がいいかな。]タエ、[そうしますと、すぐに帰ってきちゃうんですか。][ボクはおまんじゅうをたくさん食べたいジョー。][1週間から10日間ぐらいかな。]

北斎、[王様が文左衛門になっているんでしたら、それで大丈夫ですよ。全く題ありません。][親分、1週間でも面白いですよ。子供のお大臣遊びができるじゃあないですか。][何言ってるの。遊びに行くわけじゃあないのよ。]
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お栄、[おいしいところたくさん知っているから、案内してあげるわね。][ボク酒まんとかお団子も食べたいな。][食べたいジョー。]ここは江戸の紀伊国屋文左衛門の屋敷である。魂の入り込んだ文左衛門とサスケにすずが昼食をとっている。

サスケ、[王様、えらい贅沢ですね。刺身の種類だけで8種類もありますよ。毎日こんなもん食べているんですかね。][食い物にはずいぶんこだわっているね、成り上がり者はまずこれからだろう。]すず、[魂だけ入り込んで、たいへんな事はありませんか。]

[いや、まったく大丈夫だ。二面性を持っているので、文左衛門の時にはそれに任せればいいし、今の状態も普通にできている。まずこれを渡しておこうか。]切り餅を2つずつ、一包み25両であるから50両ずつが渡された。[ひえ~、こんなにいただいちゃってよろしいんですか。][いろんなものを買えますね。これは助かりますよ。]
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[サスケもすずも武道の達人だが、暗くなると危険なので早めに帰るようにした方がいい。それと道案内の小物を付けるので、連れて行きなさい。]

[サスケさん、とりあえず案内を連れて二人で町中を歩いてみましょうか。]いろんな商店が並んでいる。すずはやっぱり女の子である。呉服店に入りたいらしい。[いいよ入っても。仕立ててもらうんだったら、早めに出来上がりをしてもらうように確認したほうがいいね。]明日香国の門前町は江戸文化保存地区なので、普通に着物を着ているのでまったく違和感がない。すずが着ているレベルの布地を3種類出してきた。[仕立てはどのくらいの日数がかかるの。][7日あればできます。]

[3着買ったら安くなるかしら。][そうですね、1着が3分ですので9分ですが、1分を引きまして8分になりますのでちょうど2両です。][私は紀伊国屋でこんななりをしていますが、客人扱いですずと申します。支払いは届いた時でよろしいですか。]

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小物を連れているので信用をして、[はい、結構ですよ。][さすがすずさん、こちらでも値切りますね。][こんどはサスケさんの好きなとこでいいですよ。]

 

小者に、[この辺に鍛冶屋さんはあるかね。][この先の辻の右手にあります。][ありがとう。]トッテンカン、トッテンカン威勢のいい槌音を響かせている。5人程の職人が忙しくしている。店頭には農具のほかに大工に左官道具それに包丁が並べられている。サスケは出刃包丁を手に取って、じっと見ている。[これは良さそうだがどうかな。]

 

すずは実家に刀剣や忍者道具がたくさんあり見慣れているので目が肥えている。[それよりもこちらの方がよさそうですよ。]と日本刀と同じ四方包みでできた方を薦めた。[そうですね、こちらの方が全然よさそうですが値段がどうかだな。]両方をとって職人に値段を聞いたら2分と4分だという、4分は1両であるので庶民になかなか買えるものではない。[なるほど、でもいいほうがいいね。これください。]

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小者に[この辺で美味いまんじゅう屋か、だんご屋はあるかな。]小者は自分も食べられると思って、目をキラキラさせながら、[へい、この先の橋のそばにうまいまんじゅう屋があります。]板ぶき屋根の簡素な店だが甘い日本酒の香りがしてきた。酒まんじゅうである。白い皮でサラシ餡だがここらあたりの名物になっている。

 

[親父さん、まんじゅう3皿とお茶を3つな。][へい、お待ちを。]なかなかにうまい。小者も久々なのか嬉しそうな顔をして食べている。品のいいおじいさんの店主が、[あなたがたは甲賀の出ですかな。]といきなり尋ねてきた。サスケとすずはびっくりして、[そうですがなにか。]

 

[私は伊賀同心を子供に代を譲って引退したものです。同心はご存じのように裕福ではありませんのでこのようにしていますが貴方様の身のこなしは甲賀特有のものです。伊賀同心と申しても3分の1は甲賀が占めており、家康様の伊賀越えに協力して、取り立てられたものの子孫です。]

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[お名前を教えていただけませんか。][こちらは主筋で望月佐渡の守の子孫のすず様で、私は代々使えている者でサスケです。]一瞬驚いていたようだが、[それはそれは先祖が仕えていた親方様の子孫ですか、またサスケ様の名前も甲賀では大きいです。すずも驚いている。][して何用でこちらに。]

 

[はい、担いでる神輿がありまして、その関係です。][そうですか。なにかありましたら甲賀一党で協力します。][それはどうもありがとうございまう。お代はこちらに置いときますね。][またどうぞお越しください。]すずさん驚きましたね。でもなにかあったら頼りになりそうですよ。][そうですね。このようなこともあるんですね。][あまり遅くなるといけませんので帰りましょうか。]

 

ゆっくりとした足取りで戻りを歩いていると、後ろからつけられているのを感じた。小者を前に押しやって、[すずさん気を付けてください。どうやらつけられているようです。]すずも気配を察知して身構えている。



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どうやら3人組のようだ。すれ違いざまでも匕首で刺して、懐のものでも狙う算段か。匕首を抜いて間境に入った瞬間に[ふっ。]っと短い気を発した。3人の無頼漢がゆっくりと倒れていった。合気武道で、手・足・アゴの関節を外してしまったのである。振り返りもせず、そのままの足取りで帰っていった。

 

[そろそろ明日香から一行を迎えようと思うが、準備は大丈夫かな。][部屋はそれぞれありますし、障害になるようなこともありません。][下のものをきちっと従わせるために、番頭と女中頭に申し送りをした方がいいと思います。]

 

[そうだな、私から話をきちっとしておこう。ところで昨日3人に襲われたのか。][はい、橋のところで匕首できました。関節を外しただけですが、2度目は背骨をずらして下半身不随にします。][それから甲賀一統の件だがとりあえずは今は何もない。しかし頼もしいな。金が必要だったらいくらでも出すから。はっはっはっ。]

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[かなり金はため込んでいるようですね。][そのようだが、けっこういろいろなところにばら撒いているようだぞ。][すずと2人で金をネコババしているやつらや、反紀文の者などを探りましょうか。][はっはっはっ。それもおもしろいが、とりあえずは一行を迎えて落ち着いてからだな。][はい、わかりました。]

 

いよいよ王宮からの準備が終わったようである。サスケとすずがいったん戻り先導してくる。[ではみんないきますよ。忘れ物はありませんか。]

北斎、[さすが紀文さんだ。豪勢な邸宅に住んでいるね。][親分、すごい家ですね。][ボクはすぐにご飯にしてほしいジョー。][各自の部屋を女中が案内しますんで、落ち着いたら集まって昼食にしましょう。]

 

[親分、あそこに池がありますよ行ってみますか。]金にまかせた錦鯉が多数泳いでいた。[たかそうだジョー。][これは高価なものばかりね。][金魚もいるジョー。]江戸ランチュウがたくさん泳いでいる。

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見とれていると世話をしている老人がやってきた。[大将のお客さんかな。][上等ではありませんが、そういうことです。][みんな、鯉や金魚が好きなようだね。][そうだじょー。][ここのランチュウは毎年大会で優勝している、江戸では一番いいものです。

 

][頭の瘤がまだ少ないです。][ほう、厳しいことを言うね。][もっとイトミミズとか動物性の餌をやりませんと瘤が出ませんよ。][ふぁっ・ふぁっ・ふぁっ。そのとおりだ。よく勉強をしているな。]

 

すず、[ごはんよ~。][わぁ~ぃ、ごちそうかな。]刺身に魚に鶏と野菜料理など15品以上のおかずが並んでいる。お栄、[さすがに紀文さん、たまげましたわ。]写楽、[貧乏長屋で夢にまで見たごちそうだな。][さあ、いただこうか。][それから、子供たちは自分達だけでは出歩かないように。必ず用心棒と小者を連れて行くようにすること。先日、サスケ達が3人組に襲われたけど、サスケは武術の達人だから撃退できた。注意をするように。]




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[ボクおまんじゅう買いに行きたいジョー。]そこに紀文になった王様がやってきた。包みから小判の入った箱を取り出して、3人には切り餅2つの50両ずつ、お栄には30両が渡された。

 

[当座の資金にしてください。多くないので様子を見てまた用意します。]タエちゃんにはお小遣いに小銭を多めに渡された。[王様、何で親分だけがもらえるんですか。][タエちゃんはしっかり者だから、みんなの分も一緒に渡した。]

 

北斎、[少ないと言っても私ら貧乏人には何年も暮らせる金額です。][画材を買うのにお金が必要だったらいつでも言ってください。高価なものでも構いません。]広重、[これだけいい待遇でしたら、いい絵を描かなければいけませんね。][そう思ってくださればありがたい。私は仕事があるので、あとはこちらの王様と話をしてくれるかな。はっはっはっ。]

子供たちはお腹がいっぱいになり寝っ転がっている。

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この屋敷には獰猛な番犬が2匹いるがゴン太とユリにはどう言うわけか吠えないで、親しみを感じているようである。文左衛門から女中頭に言ってもらって骨董を見せてもらうことにした。

 

金を稼いでいるんだったら当然に高価なものがたくさんあるだろうと思ったからである。まず茶道具である。[王様、茶碗にはお金をかけていますね。専門の道具商がいるんじゃあないんでしょうか。][そうだな、まあそこそこだ偽物はないな、たぶんそのほかの骨董にたくさんあるんじゃあないのかな。]

 

[探し出して、だました業者を痛めつけましょうか。][ははは。まあ、みてみよう。][ありましたよ、この李朝の大壺下の20cmと上部は違うもので、継いだものですね。ちょっと見はわかりませんけどね。]王様は壺の中を覗き込んだ。[そうだな間違いない。他にもありそうだな。][あと古伊万里のあと絵付けもあります。][ほんとうだ色が少し違うぞ。]

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[ありましたよ見事なものが、あははは。][これはセンスのいい明朝後期の呉須色絵だが・・・ま、ま、まてよなんかおかしいな。]指に唾を付けて強く拭いてみた・・・なんと色絵が剝がれていく。[はっはっはっ、これはかなりあくどいぞ。たぶんこの3点は同じ業者が売ったものだな。][王様、懲らしめてやりましょう。][そうだな。]文左衛門の王様を呼んできて、この偽物は誰から買ったのか聞いたらやっぱり同じ業者だった。

 

[俺が入る前にだまされたんだな。][買値の10倍返金と江戸所払い。こんなところですか。][あの業者はかなりあくどくて、幕閣にワイロを渡しているから手ごわいぞ。][天下の紀文が大丈夫ですよ。]

サスケ、[まずその業者を呼びつけて、10倍返金と江戸所払いを伝えますが当然に従わないでしょう。そうすると裏の力勝負になります。先方はゴロツキを5・6人雇って、紀文さんか要人をさらうか痛めつける荒業に出てくると思います。

ゴロツキを集めるのを察知したら逆にこちらから打って出て、そうですね首吊りにでも見せかけて殺してしまいます。]




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[こちらもかなり荒っぽいが、助っ人でもいるのか。][はい、私一人でもなんとかなりますが甲賀一統から腕利き2人を橋のところのまんじゅう屋で元伊賀同心ですが頼みます。殺しは相場が5両ですが20料払うと言って、まんじゅう屋にも10両でも渡せば紀文の名前で喜んできますよ。]

 

[そうだな、殺しちまえばあとは何とかなる。日頃こちらも鼻薬をかましているからな。はははは。][では前金で半分を渡しますんで、お願いできますか。][はいよ25両。もっと必要なら遠慮なく言ってくれ。]

 

サスケはすぐに橋のそばのまんじゅう屋に行った。客のいないのをみはらかって、川のそばに連れていき子細を話した。[よくぞおっしゃってくださいました。私どもが今日あるのもご先祖様のおかげです。息子と腕利きの仲間にやらせますんで。][では半金を前金で渡しておく。終わったらもう半金だ。]

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[え、私もいただいて、息子たちにもこんなにはずんでくださるんですかい。すぐにでも行ってきます。]橋のまんじゅう屋に行く前にこんなやりとりがあった。紀文、[やあ、すまないな忙しいのに来てもらって。][とんでもございません。してご用件は。]

 

サスケとすずが偽物の3点を運んできた。[もうわかっていると思うが、買値の10倍返金と江戸所払い。従わない場合は奉行所に行くことになるが。][はっはっはっ。いきなりで困りましたね。売り手と買い手が現物を見て合意をして売り買いが成立したんで、あんたの目が節穴だけだったんじゃあないんですか。]

 

[わかった。不服ということだな。ではそれなりの対応をするが帰っていいよ。][こちらもそれなりの対応をしますさ。ふひゃっ、ふひゃっ、ふひゃっ。]こんな感じで、それを聞いていたサスケがすぐに金を持ってやってきたわけである。まんじゅう屋はすぐに息子に子細を話し、仲間で腕利きの友人とすでに見張りをしている。

472

[どうだ、動きはあるかな。]はい、ゴロツキが5人程入っています。][向こうも戦闘態勢を、整えているとうことだな。それじゃあ今夜決行だ。丑三つ時にここに集合。いいかな。][わかりました。]サスケは紀文邸に帰り王様に報告した。

 

王様から紀文に丑三つ時に決行を知らせた。消化のいい湯漬けを食べて寝転んでいると、すずと2匹の犬たちが気配を察して入ってきた。[私たちに手伝うことはありませんか。ワンワンワン。][気持ちはありがたいけど私たち3人に任せてほしい。3人で集中した方がやりやすいんで。悪いな。]

 

いよいよ丑三つ時になり集合が終わった。[なるべく主人だけ殺って他には手を出すな。やむを得ない場合はゴロツキは殺ってもいいが、店のものには峰打ちにしろ。主人は首を絞めて殺し自殺に見せかける。もちろんすぐに見破られるがそれでもいい。あとは全部紀文が処理してくれる。わかったかな。][はい。][それでは行くぞ。]





473

そこは忍びである。縄梯子を使って簡単に邸内に入ってしまった。事前に家の間取りを調べてあるので、夫妻の寝室に容易く侵入することができた。薬品を嗅がせ2人を眠らせ、主人を素早く絞殺した。天井の棟木にひもを通し首吊りのように見せかけて、手際よく引き上げた。

 

ゴロツキは酒でも飲んでいたのか全然気が付いていない。まんじゅう屋に熱い甘酒が用意してあった。[まあ、どうぞ召し上がってください。][みんなよくやった、約束の半金だ。]素早く、5両、10両、10両と支払った。おやじ、[サスケさん、また何かあったら遠慮なくいってください。][ありがとな、じゃあ失礼するよ。]サスケはさっさと引き上げて行ってしまった。

 

翌日、店主が自殺したと大騒ぎになっていた。町人でも有力者なので与力が同心と岡っ引きを従えてやってきている。与力[この男が自殺するタマか。][なんかトラブルはなかったか。]はい、紀文さんのところに行ってから、人を集めていました。]

474

[なに、紀文か。よし、じゃあお前ら行くぞ。][へい。][おやおやお揃いで、どうかされました。][お前のところに行った後で、自殺をしてびっくりしているのだ。]

 

[へい、そのようですね。私もないが何だかわかりませんが、驚いています。][ここにきて、どんな話をしたんだ。][へい、私はあそこで何度も骨董を買っていますんで、またいいものがないか聞いたんです。][それだけか、殺していないのだな。][へい、私も何が何だかわかりません。]

 

[今日はこれで引き上げるが、またくるぞ。][あの程度じゃ、全く先が読めないでしょうね。][いやあ、安心はできんぞ今は北町奉行所の遠山金四郎だ。][あの有名な遠山桜の・・・ふ~む、ちょっと手ごわいな。]3日程音沙汰がなかったが、いきなり乗馬で与力同心を従えて遠山金四郎がやってきた。金四郎だけ1人で中に入り、他は外で待機である。[これはこれはお奉行様、お久しぶりでございます。]

475

[ちょっとお茶を飲みたくなってな、いっぱいごちそうしてくれんかな。][へい、お安い御用で少々お待ちください。]サスケ以下どうしたことかと見守っている。[うまいな、このお茶・・そなたの身ごなしは甲賀だな、腕達者だとサスケの末裔か。]サスケは一瞬考えて、[はい、私は甲賀のサスケです。]

 

[う~む。]サスケに近づいていきなり、[よく紀文を守ってくれた。礼を言うぞ。はっはっはっ。これにて一件らくちゃ~~く。]と言ってさっさと引き上げてしまった。

 

サスケ、[ど、ど~いうことですか。][はっはっはっ。金さんとは長い付き合いでな、バクチで負けてすってんてんになっていたのを何度も助けてあげたし、ケンカで奉行所の牢屋に入っているのも助けた。このくらいはしてくれて当然だろうよ。わっはっは。]しばらくしてから店主が自殺した骨董屋が潰れて、どこかに行ってしまったといううわさが流れてきた。




476

[みんなの進捗具合はどうかな。][はい、広重さんは新しい試みで江戸名所百景を画いています。北斎さんは生命力のある庶民の暮らしを画いています。写楽さんは相変わらずに役者絵一筋ですが、なんか吹っ切れたのかスピードが上がってきました。お栄さんは子供の遊んでいるところを画いています。]

 

[そうかありがとう。橋のとこのまんじゅう屋がうまいと聞いた。みんなを連れて行ってきなさい。]と言って小銭の束をくれた。[それとまんじゅう屋はサスケに聞いたというと喜ぶと言っていたぞ。]3人がにこにこしながら行こうとしたら、素早く前にもサスケさんを案内して慣れていますので案内しますと言って、スタスタと前に行ってしまった。

 

タエは断ろうとしたがお金に余裕があるので、そのまま一緒に行ってしまった。[こんにちはサスケさんから、ここのお饅頭がうまいと聞いてきました。4人分ください。][サスケさんの身内ですか、こりゃあどうも。]

477

と2個一皿なのに1個ずつおまけをしてくれた。[ひゃっひゃっひゃっ。1個おまけでそれでうまいジョー。]タエ、[ここの酒まんおいしいですね。][ありがとう。サスケさんがお神輿を担ぐって言っていましたけど、どなたのことですか紀文さんのことですか。][いえいえそれは違います。]

 

[ボク知ってるジョー。][よっちゃん!!][無理には聞きません。なんか事情があるんでしょう。]タエの聞き取りによって、順調に浮世絵の仕事が進んでいるのがわかったので、ひとまず王宮に引き上げることにした。

 

参謀長の竹中半兵衛重治が王宮にやってきた。[王様、予定の軍資金2,000兆円が貯まりましたので、幹部会議を開きたいのですが。][やっとできたか。この時を待っていたんだよな。それではご苦労ですが、幹部会を招集してください。]首相の真田昌幸財務大臣石田三成外務大臣高杉晋作・外務副大臣伊藤博文防衛大臣明日香軍大将で総司令官の島津義弘

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防衛副大臣で明日香軍大将でもあり副総令官の島津豊久・陸軍大将ロシア方面総司令官の西郷隆盛・陸軍大将ロシア方面副総司令官の大山巌・対露内務大臣ロシア首相予定の勝海舟・副首相予定の山岡鉄舟などのそうそうたるメンバーである。

 

[いよいよ軍資金が石田財務大臣などの頑張りにより、目標達成できましたので、この次元を現次元に接続したいように思います。その為の用意として世界の人達の意識を受け入れるのが当然のようにコントロールします。また自然環境を破壊しないような対策が取られています。もちろん世界中の海が陸に変わってしまうので、大きな変化ですが海はなくなりませんし、最低限の漁獲も守られますので、スムーズに行くと思います。]

 

真田、[本拠地をここではなく日本に置くと思いますが、どちらになりますか。]竹中、[夏見の陶芸ビルの道路向かいに広い更地があったので購入し、建物も立て終わっています。そこに大臣以下が分身して詰めるようになります。]




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竹中[尚、上階に住居があり、食堂に大浴場それにトレーニングセンターも併設されています。]海舟、[日本との交渉が一番重要になりますがどのような対策を立てていますか。]

 

竹中、[まず、明日香王国には日本が必要な石油にガス、それにレアアースに食料など、何でもそろっています。それに超能力でアメリカの傘下で核におびえていなくても対処できます。すなわち、明日香軍だけで日本を守れるのです。そしてこれはまだ伏せておきますが、露死阿をやっつけて北方四島をプレゼントします。]

 

勝、[なかなか面白いですな。それと私どもには子孫が代々続いている人と、復活した人が混ざっています。それを認めるように超能力で意識付けをしておくのも必要です。日本だけでなく世界中にもです。]島津、[明日香王国オープンに備えて全土をバリアーで包みましたので、あらゆる攻撃に対処できます。水中はもちろん地中1,000mまで対応しています。]

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竹[高度は如来山が8,888mですので9800以下はバリアーで上空は飛行ができます。それから人工衛星で国土を全部覗かれてしまわないように、人工衛星からは黒幕で覆われたように写ります。軍隊は全軍で10万人ですが、分身で何倍にもなれますので世界最強だと思います。]

 

高杉、[オープンしてすぐに全土を開放するのはひじょうに大変です。とりあえずは龍州だけにしたらいかがでしょうか。九州ぐらいの面積で龍口市は人口も多く大きな病院もあり、有力な観光地もあります。先行することで、そこから学んでいけばいいわけです。]

 

石田[ちょうどいいんではないんでしょうか。]王様、[法務と広報に有能な人材を置き対処したいな。立ち上がりはとても重要になります。あとはオープン日をいつに設定するかだな。]竹中、[1週間後にしたいと思いますので、日本で全員がそろうようにしてください。こちらには当然に今までの人材がそのまま残るように分身してください。では、解散します。]

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王宮の応接コーナーで王様とサスケにすずがお茶を飲みながら話している。[これから忙しくなるなぞ、これから補佐官という立場で会議に出るようになる。もちろんここの仕事と両立するために分身してだけどな。日本では宮内省大臣や侍従長を置かないので、それを兼ねる大役だけども頑張ってくれ。期待しています。]

サスケ、[王様も露死阿の20倍程度の領土を個人所有している、世界一の不動産所有者で国家元首が店長しているなんて面白いですね。他では絶対あり得ませんよ。][日本での王様の仕事は分身がやるさ。サスケとすずの分身の協力を得てな。

そこでここだけの話だけども、明日香王国がオープンすると国の信用度合いが必要になってくる。いくら石田三成が2,000兆円確保してある、と言ってもだれも信用しない。そこで今回に全面オープンするのは龍州だけだけども、そこにセキュリティ万全の保管庫を立て8,000tの金と500tのプラチナを保管して、これは王室のものだけどもいつで
も無利息で貸し出すと報道させる。
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そして王室の信用のためにそれとは別に金5,000tにプラチナを300tを併せて保管します。米国でも8,000tをプールしているというし、他の国々でも金の貯えはある。

そこでここからは面白い話なんだけ能力で、まず金とダイアモンドをほとんど取れなくしてしまう。そうすると露死阿にイスラエルそれに金産出量世界一の中国が慌てるし価格もアップする。ただ明日香国が出現してすぐやると疑われるので徐々にだ。

その後に露死阿と戦争するがその前に露死阿の石油にガスを完全にストップしてしまう。そうすると経済が成り立たなくなるので、露死阿の民衆に不満が出てくる。その時に我が国が露死阿全土を抵当に入れて金を貸す。露死阿は明日香の軍隊を少数で組みしやすしと見るだろうから、金を返さなくても踏み倒せると踏んで借りてくる。それで勝負ありということだ。]
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サスケ[おもしろいですね。保管庫ですけどすぐに行って造ってきます。日本と違って建築確認がいらないですからね。できましたら王様に連絡しますんで、すぐに超能力で金とプラチナを入れてください。警備は私の直轄の特殊部隊30人と軍用犬DOGOALZENTINOと四国犬のMixの20匹でやります。]

すず、[これもタイミングを見定めてやったら面白いと思うのですが、人口ダイアモンドが世界中ではびこってきました。天然ダイアモンド市場を脅かしています。超能力で一瞬で粉にしてしまったらいかがでしょうか。世界中の人工ダイアモンドが粉になってしまうのです。天然のものは当然に値が上がります。]

[はっはっはっ。それもおもしろそうだな。大仕事は外部に漏れるといけないので、3人で決めることにしよう。]
[保管庫の件は大仕事ですので、私とすずの分身2人で行ってきます。][そのようにしてくれるかな。]
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明日香王国オープンを明日に控えて副首相のA議員と、お世話になっている精密機器製造販売会社の会長と娘さんに挨拶に伺うことになった。行くのは副首相を末期癌から救った王様と志野と犬2匹である。

[いや~、よく来たな。いよいよか・石油・ガス・食糧それに防衛の心配がなくなるというのはとても大きいぞ。そちらで発表があったらすぐに動くので、政府の対応は心配しなくていいよ。このワンちゃんも元気そうだな。]と頭をなでている。

次に会長宅に訪問した。娘さんもいらして、[いよいよその時期が来たのですね。貴方は世界一の面積の国の王様になるんですよね。][すでにもう王様ですが、このように陶芸店の店長もしています。][露死阿の20倍で資源が豊富ということは日本の財界もほおっておかないだろう。][そうですね、会長が主導して財界を取りまとめていただければありがたいです。][そうだな、せっかくの縁だから日香企業者友好団体とかなんとか。]
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会長[グループを作って代表にでもなるかな。][それがいいです。明日香国の会社はすべて私がオーナーですので、話はなんでも早いですよ。私が推薦人になりますのでぜひお願いします。][わかりました。その方向で取りまとめてみよう。][ありがとうございます。]

新しい国の誕生とあって内外のメディアが明日香陶芸店前の明日香会館に多数押し寄せている。真田首相が概略を説明し、明日香国にいる閣僚はすべて分身してそろぅているので、こちらでも案件は決済できる。と言うといろいろな奇声が上がった。こんなことは今までにないので訳がわからないというような顔をしている。国王も明日香国にいるしこちらにもいるというと、ダメ押しのため息が漏れていた。

明日香国の一部の龍州を入国許可にして観光客を受け入れたが、いかんせん国としての信用が全くないので、無利息で政府に貸し出しできる8,000tの金と500tのプラチナ。それに王室用の5,000tの金と300tのプラチナを保管している建物を各国の政府や内外メディアに公開することにした。
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人員の輸送はまとめての瞬間移動である。日本は専門のプロジェクトを組んでいるし、米国・中国にEUも専門家を送り込んできた。案内はサスケにすずである。[それでは行きますんで。]それだけであっという間に龍州の龍口市にある保管庫に連れて行った。

[どうぞ好きなように撮影してください。手に取っても構いませんよ。]厳重な警備態勢をとっているが、いたってオープンにしている。20匹の軍用犬も距離を保ちながらおとなしくしている。[警備体制をオープンにしちゃってよろしいんですか。]

[はっはっは、国王がいたってフレンドリーなので、私たちもそのようにしています。][膨大な量の金とプラチナですが、どのように収集したのですか。][国そのものは異次元で50年前から作られていますので、産地で採掘してコツコツと積み上げてきました。]
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[地下資源は他にどのようなものが豊富ですか。][石油は全中東の産地より埋蔵量が多いですし、天然ガスも豊富で露死阿の数倍は産出できると思います。その他にダイアモンドもおそらくトップの埋蔵量だと思います。]

[専門家が鑑定しておおむね本物だという結論が出ています。][これで信用力が増したと思いますので、ほっとしています。すみませんがその他のことは夏見の広報が承りますので、よろしくお願いします。

あ、それから皆さんに重要なことをお知らせいたしますが、龍口市には大きな超能力病院がありほとんどの病気や障害が治せます。余命1ヵ月を宣告された方でも希望を持って来てください。それから全盲の方でも治療が可能です。その他の身体障害者でも好結果が出る可能性もあります。それから精神疾患でもOKです。これからパラリンピックはなくなるかもしれません。なぜなら明日香国の病院ですべてを治せるからです。]記者や関係者からどよめきがおこった。
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[夏見の広報に、資料やビデオが用意されていますのでご確認ください。それでは夏見に戻ります。]また、あっという間に戻ってきてしまった。広報にマスコミが押し寄せている。

明日香陶芸店である。王様、[かたずいたようだな。][はい、完了です。これから病院に押しかけそうです。][病院の広報も必要だな。]すず、[それは私が病院と広報を調整して何とかします。][分身が大活躍だな。しっかりと休養と栄養を取るように。]

すず、[病院の次は占いだと思います。超能力占いは世界で一番正確で、小中学校でも生徒の適性を見抜き将来の進路指導に取り入れています。][そうだな、それも面白い。龍口市の病院は55階建てが2棟だから充分にスペースがある。医者は坊さんも兼ねているので占いもできる。空きスペースでやらせればいいんじゃあないかな。2棟ともいっぱいだったら追加で3棟ほど建てられる空地があるので立てればいい。]
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[そうですね。空きスペースを調べてみます。][まあ、ゆっくりゆっくりでいいぞ。]バードサンクチュアリーに子供3人と犬2匹ダイとウメが今日は池のほうで鯉を見ている。[親分、この紅白少し小さいですけれどとびっきりですね。][これは高い鯉だジョー。]

文左衛門の王様からどれでも好きなものを持って帰っていいと言われたので、この紅白を選んで持ってきたのである。紀文が金にまかせて揃えたものなので、抜群に良いものだ。ター坊、[いくらぐらいの価値があるんですか。][コンクールで優勝できるぐらいだと思うから、3,000万円ぐらいかな。][ひぇ~、おまんじゅう何皿食べられるの、これはたいへんだジョー。]

[あなたたちもいいアイデアをたくさん出せば王様からご褒美がもらえるの。ダルマさんたくさん売れているでしょう。]タエが達磨が復活しているから、ダルマを出せば売れるといったのが元で、販売が始まったのである。
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ター坊によっちゃんも文左衛門の王様にお願いして、江戸ランチュウを5匹持ち帰っている。子供達の所有金魚はこれで17匹になった。大型水槽でもかなりいっぱいになってきて、迫力と見ごたえが出てきた。[これはぼくたちの宝だジョー。][これもいいわね、オランダシシガシラも瘤が出てきたわ。][糸ミミズをやったりミジンコも取ってきてるからね。][ボクのピンポンパールもいいジョー。]

精密機器製造販売会社の会長が友人と一緒にやってきた。[あ、会長いらっしゃいませ。][やあ、私の友人が是非に話を聞きたいというもので、連れてきたんだけどここでいいのかな。]

[どんなご用件ですか。][この人は石油元売り会社の社長なんだけど、貴国が石油を豊富に産出していることを聞いてきたんだけど。][はいこの話は道向かいの方でうかがうべき話ですが、会長の友人ということなので概略を話します。明日香国は国が広いのでほぼどんな種類の原油でも生産しています。]
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[価格はOPECの価格と運送コストの総合で決まります。普通と違うのは仮にストック場所に直接入れることを望まれれば直接入れることもできます。ストック場所の前のタンカーにいったん入れてくれと言われればそれもできます。OPECの価格+運賃の半額が卸値そんな感じですかね。

もちろん固有の品質は価格に反映されます。まあこれは概略ですので正確には担当とお話しください。あ、それから明日香国からの輸入は通常でしたら関税が掛かりますが、無くなる可能性もあります。これからの交渉次第ですけどね。以上こんなもんですか。]

[運賃というのは中東までかかる費用の半額と考えてよろしいのでしょうか。][その通りです。][それは助かりますね。日香関係の特殊性で関税がなくなるかもしれないということですか。][そうです。たぶんほとんどに関税はかからなくなると思います。][それはどういうわけでですか。]
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[具体的にはまだ言える段階ではありませんが、そのようにしても充分にメリットがある案件を提示するということです。][これはおもしろいですね。いやぁ~、お伺いして良かったです。ありがとうございます。別件ですが妻がワンちゃんをいただきまして、とても賢くて驚いています。それでは失礼いたします。][またどうぞ、お越しください。]

すず[専門外の話なんで、ちょっとわかりませんが、額の大きな取引のようですね。][元売りだから大きいだろうね。][犬の効果がありました。][はっはっは、すずさんが一生懸命やっていたからな。]

王様がゴン太とユリを連れて露店の見回りをしている。[ター坊のお父さんどんなものが売れていますか。][お守りやお札が多いですが、最近は達磨がよく売れますよ。売上額は一番じゃあないんですか。][よっちゃんのお父さん、こんなものがあったらいいなんてものはありますか。]
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[はい、宗祖様の似顔絵とお題目と般若心経のCDはありますが、もう一点追加してほしいのですが、死ぬまでの心の平安を保つためには写経もいいと思います。各宗祖様が復活しているので自筆の般若心経をお手本用として売るのです。コピーですが。宗祖様のものですので人気があると思いますよ。]

[それはいいですね。すぐに手配して進めます。お客様は増えていますか。][はい、当初よりは多くなっていると思います。ここは各宗派のグッズが全部そろっているので、ご近所の仲間たちが気軽に来ている感じです。門前町ですとその宗派だけのものですからね。ご近所でも宗派が違うのが普通です。]

[なるほどね。ところで子供達3人組も、いろいろ仕事を手伝ってくれて助かっているよ。][いえいえうちの子供はただ一緒についているだけです。][またいいアイデアがあったら教えてくれるかな。][はい、恐れ入ります。][露店は頑張っているようだ。]サスケ、[はい、売り上げは上がっております。]
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[宗教グッズの卸やネット販売はどうかな。]すず、[卸や個別販売も随分と増えていますよ。何しろ全国各地のほとんどの宗派ですからね。]

黒塗りの高級車が横付けされた。降りてきたのは副首相のA代議士である。小政、[いらっしゃいませ。中にどうぞ。]応接コーナーに通した。[先生どうもお久しぶりです。][やあ、大々的に発表になったな。今日は相談事で貴方の意見を聞きに来たんだ。][それはそれは、どうぞおっしゃってください。][実は龍州の交通の便だが国際空港があるので問題はないが、エアトレインというのが完成されていて数秒で行けるとか。それが本当なら力になるぞ。

実は国会議員はご存じの通りに病気持ちが多くてな。ほとんどの病気が治せる病院にアクセス良く行けるというのは大きな魅力で、仮の話だが病院に年間10室を確保していて、いつでも利用できるということになれば野党を含めて全員が賛成すると思う。門前仲町とか田端駅を改修すればいいと思うがどうだろう。]
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この一歩が足がかりになって世界に広がっていくかもしれんぞ。][わかりました。重要な話ですんでみんなの意見を聞く形になります。その結果をお知らせに伺いますので数日お待ちください。][わかったでは連絡を待っているよ。]

[真田首相にでも指示しますか。][いや、専門外かもしれないが竹中さんの話をまず聞いてみよう][じゃあ呼んできます。][王様お呼びですか。]今の話を子細に話した。[国会議員を味方につけるのはとてもやりやすくなりますよ。全力でやるべきですが、真田首相と平賀源内さんをペアでやらせればいいんじゃあないんですか。]

[それでは真田首相と概ねの段取りをつけて、数日以内に知らせてください。副首相に一緒に挨拶に行きます。その時に竹中さんも来てくれるかな。これからいろいろ世話になる人なので、顔を売っていた方がいい。][わかりました。早速、真田に伝えます。]
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小堀遠州が抹茶を3人分運んできた。[どうぞ、一服してください。]
[どうもありがとう、遠州さんもかけてください。][教室の生徒は増えましたか。][少しずつですが、確実に増えています。][それはよかったですね。][王様はだいぶお忙しい様で。]
[分身してやれば充分にこなせるのだけど、総合的な気疲れはありますね。一服いただきます。][サスケさんたちもどうぞ。]すず、[おいしいですね。次郎長さんの抹茶と遠州さんの手前で最高です。]

竹中半兵衛と真田首相に平賀源内がやってきた。竹中、[準備ができました。][それでは行きましょうか。]サスケに犬2匹がお供をした。瞬間移動で副首相の事務所にやってきた。

[やあ、よく来たな。まあ座ってください。][こちらがすべてにわたっての参謀長の竹中半兵衛、明日香国にもいますが分身で首相の真田昌幸に技術責任者の平賀源内です。][ほほう、有名な名前ばかりですが末裔ですか。][その通りです][エアトレインはやらさせていただきます。詳細はそちらの担当と真田と平賀とで決めさせていただきます。]
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[参謀長と首相を連れてきたということは他にも深い意味がありそうだが。]とキラリと鋭い視線を投げかけた。[そのとおりですが、おいおいと相談をさせていただきます。今日は顔合わせということで。]

[そうか楽しみに待っているぞ。あとはこちらの秘書と話をしてくれるかな。私は申し訳ないが他での約束があるので、出かけないといけない。賢いワンちゃんまたよろしくな。]とゴン太にユリの頭をなでながら行ってしまった。王様もあとを任せて帰っていった。

明日香国は太平洋、インド洋に大西洋にまたがる広大な領地の国であるが、沖縄と同緯度で九州ぐらいの面積の龍州だけを一般開放している。明日香王国の人口は6億人で国造りをしてから50年になるので一般生活は全く問題がないが、急な全面開放はリスクが大きいので一部だけにとどめたのである。起点となる駅はJR田端駅になり、建物の回数は駅ビルとしてはトップクラスの55階建てに決まった。
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1,2階をJR,3階~16階までエアトレイン用ホーム、17階温泉大浴場にトレーニングジム(プール付き)18~35階テナントに明日香王国大使館、36~54回ホテル、55階展望レストラン。こんな感じの設計である。建物の建築は認可業者ではないが、エアトレイン用の特殊なものになるので特別に明日香建設が請け負うことになった。

建物の名義は王様の資産を管理している明日香ホールディングスであるが1,2階はJR名義である。もちろん土地の賃料を支払わなければならないが、かなり安く設定できた。3階~16階までホームとしたが、当初は2~3線の利用であるので3階だけで済んでしまうが、これからどんどん増えていくのでこのようにした。

建築確認はすでに取ってあるが、建築そのものはJRの仕事が終わった後に超能力で一瞬で造ってしまう。足場の組み立てや工程検査も何もないのである。その後は法務担当がやってくれる。
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サスケ、[王様、すごいことになりましたね。][資金はタップリあるが、造るのは私の会社なのでほどほどにしとくよ。][いきなり造っちゃって、問題がありませんか。]

[日本国と明日香国とで弁護士の相互乗り入れが決まっている。つまりどちらの国で仕事をしてもいいわけで、明日香国からとりあえず50人がすでに来ている。全員が超能力弁護士で日本の普通の弁護士の300倍の能力に設定してあるから、普通の案件だったら負けないな。世界に弁護士で勝負していくのでその試金石になる。]サスケ、[ひぇ~、やることが大きいですね。]

[竣工をしてもどっちみち役所とのトラブルの山なので式は見合わせる。まあ、内々だけで建物内のホテルか展望レストランでパーティーでもやるか。]すず、[竣工式に役人を呼ぶと問題があるかもしれませんが、精密会社の会長に娘さんやその友人などを、呼んでもいいんじゃないですか。][祝い金とか供花なしとかいうやつかな。]
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[まあ、それはサスケと相談して、決めてくれるかな。][わかりました。][それともっとすごいことを計画しているぞ。][な、なんなんですか。興味あるな。]

[続いての解放場所だけど、首都のきゃら市から200km先に世界一広大な敷地と規模の工業団地を作ろうと思う。200×200㎢の団地を2ヵ所予定していて、世界の工場のほとんど全部をここに集めてしまう予定だ。]サスケ、[こりゃあまたまたすごいですね。]

参謀長の竹中半兵衛がやってきた。[こんにちは王様、順調な進捗状況です。][そうですね。今、サスケ達に第2の案件を話していたところです。][どんどん行くべきですよ。田端駅が竣工しましたら、すぐに発表しましょう。この工業団地は膨大な資金を呼び込むこと仁ります。まあ、工業団地の特典を聞いたら、続々と来るでしょうね。自分たちが作った製品の3倍まで超能力で作った格安品で揃えられることができるんですから。]