第二巻 天啓の雲

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四越デパートの担当と広報がさっそく取材に来たが一様に感嘆の声で、まさかのまさか・・大変楽しみだと言って帰っていった。高麗陶器仕様の3点というのはある陶芸本に載っていた写真をヒントに、超能力で頭を整理してレベルをそれぞれ国宝と重要文化財クラスにセットして変化を加えたオリジナルである。異次元焼きでものの数分でできてしまったものだ。

大井戸茶碗はすべての伝世品で30個ということだが、ほとんどが大名物や名物になっている。その中でやっぱり喜左衛門井戸が圧倒的にNO1である。当初同程度という構想であったがそれぞれがレベルアップして、喜左衛門井戸の総合力180パーセント他の2点も国宝程度に変更した。せっかくの初個展でこれでもかというぐらいのアクセルふかしてみようと思ったのである。

ところが値段であるが加藤唐九郎の茶碗がバブルの時に2,500万円で売れたのを記憶している。志野焼きの鈴木蔵は今どのくらいしているのだろうか。
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1,000万円は超えたのかな。鈴木五郎や14代楽吉左エ門も同じレベルでではないかな・・さてどうしたものか・・サスケにすずも首をひねっている。いくらいいものを作っても受賞歴がなくそれに代々の窯を引き継いだのでもない、一般の名もない陶芸作家である。

思い切って井戸が3,500万円で他が1,800万円でどうかなと思った・・・ここで頼りになるのはいつものことながらゴン太である。[ゴンちゃん教えてくれるかな、じゃ~鳴き声1回で1,000万円井戸からいくよ~][ワンワンワン・・・]なんと十回吠えた。ひぇ~1億円かよ~・・ほかは5回だったので5千万円である。これ1個でも売れたら間違いなく日本一の陶芸家になってしまう。

このさいオリジナルの益子琳派もレベルを上げて、乾山に仁清を超えたものを展示することにした。これは日本陶芸史上画期的な発表になる。たぶん、現在の陶芸界では世界一と考えられるレベルである。
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でも冷静に考えたら、喜左衛門を超えるもので1億円は大安で他の2点も国宝級で5千万円はちょっと安いかなと思ったが、まあ最初は話題作りでもいいかと思った。現に予告を見て四越に多くの問い合わせが来ているということだ。

マスコミも話題のインパクトが強く、大騒ぎになっている。さて、一躍スター誕生で注目されるのが分かっているので、当日どのような格好で行くか・・英国屋でビシットきめていくかそれとも陶芸家風に作務衣で草履にするか。または普段着のチノパンでいくか考えたが武州三多摩藍染作務衣に草履履きで行くことにした。アクセントとして藍染の布にチベット文様を刺繡したバンダナを巻いて行くことにした。

もちろんゴン太は普段は入れないが、特別許可を取って入れるようにしてある。1億円の値段を付けた言い出しっぺには見てもらうのは当然なのである。展示期間は予定より2日延びて12日になった。お金のに匂いがしてきたので、特別延長ということのようだ。
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船橋駅近くの陶芸展では益子琳派抹茶茶碗が1個250万円であるが四越デパートで展示をする新作はレベルを上げたので500万円になった。

問題は売れるかどうかだが、普通だったら集客から購入まで心配をしなければならないが、超能力で購入対象者に気を送り会場に来てもらって購入をしていただく。ただそれだけで全く心配はないのである。結果は見えているが初めての試みなので多少は王様を含めて気にしている。

展示は一般的な方法によるが、高麗茶碗の3点だけは高額なのでプラスチックケース入りにし、高台がわかるように裏からの写真を添付した。デパートの開店1時間前に展示場入りをして入念なチェックをしオープンを待った。

マスコミには前日取材に応じているので、当日は様子を見に来るだけと思われる。[ただいま10時30分四越開店の時間です。]短くも美しく燃えの音楽にのって入場が始まったが、展示場にいきなり20人程度の業者と思われる集団が押しかけてきた。
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当然に来場者リストに名前を書かない連中だ。金の臭いに集まって来たというか、それともお得意さんからの依頼で展示品を確かめに来たのも多いようだ。みんな申し合わせたように大井度茶碗の前で、ウヮーとかウォーとかの唸り声をあげている。

茶道の歴史が始まって以来の最優良品で、一国一城に値するものであるから騒ぐのは当然か。小壺600万円とか徳利ぐい飲みセット250万円とかがちょこちょこ売れ出したが、さすがに5千万円に1億円はまだ匂いもしてこない。たぶん偵察隊がお客様に連絡してからのことになるので、2,3日後が一勝負ありそうである。

益子乾山茶碗も3個売れたので、出足としては悪くない。と、そこに秘書を連れた大企業のオーナー風のお客様がお見えになった。[ふ~むこの3点はお前さんが作ったのかな?土味と釉薬は高麗のものと同じだが、骨董ではないんだな。][はい、私が最近作ったものに間違いありません。]
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[なかなかやるな写真で高台の裏はわかるのだが、実物を見ていいかな。]と透明プラスチックケースを開けようとした。それはう~んと口から出かかった時に、いつものいいタイミングで頭で足を小突いてきて、ワンワンワンとグッドの返事を素早く送った。[茶碗もいいがこの犬もいいな2億円出してもかまわないけどな。」とのたまわって頭をなでている。

3点の高台裏を自分でしっかり確認して王様のサインが記されているのも確認した。いきなり[この3個と他に10個を購入しようと思っているが、高麗は自分用で後はプレゼント用にする。支払いはパーソナルチェックになるがいいかな]ゴン太がすかさず頭で足をつついた。[もちろん結構ですが、作品は終了まで展示して銀行から引き落としできた時点ですぐにお届けに上がります。]

他の10個は簡単に選び秘書から小切手を受け取ると、税込み2億7千5百万円をサインをして支払いを済ませた。売約済みの札を素早く立て、注目の3点は完売である。
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[この次は犬のことでも話したいので、暇ができたら犬を連れて遊びに来てくれるかな][もちろんお伺いします]名刺を見たら電子機械会社の会長になっていた。[ありがとうございました。]ゴン太も最敬礼で、ワンワンワンと吠えて送り出した。

初日ですでに売り上げが3億円を超えて、美術品売り場の責任者がにこやかな表情であいさつに来た。従業員部屋にお茶とお菓子が用意してあるということだ、もうかりゃ下にも置かないというかこんなもんでしょう。交代で休憩を取ることにした。ここの様子が新聞にでるのが明日だから、明後日あたりが忙しくなりそうである。

[今日はゆっり休憩をしながらやってください]まあ有頂天にならずに謙虚にしていればうまくいくような感じがしてきた。騒ぎを聞きつけて一般客も様子を見に入ってくる。うるさ型のオバチャン連も高額品がたくさん売約済み身になっているので顔を見合わせている。
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[私は陶芸品の展示会を見るのが趣味でしょっちゅうここにきているけど、今までのもので最高のものね、特に最近の人間国宝がダメダメのボンクラばっかりだったけども、この作家さんは本物ね、ものが全然違うよ。とくに大井戸茶碗がすごいわ]

他のおばちゃんたちもうなずいている。狭い会場なので50点ほど並べたが21点ほどが売約済みになった。[さあゴンちゃん今日は焼肉だ、いっぱい食っていいぞ。足取りも軽く船橋に引き上げて行った。

さすけとすずと別れて駅前のイトーヨーカ堂でステーキ用肉9枚を買って、自宅で5枚を茹でてゴン太にやり2枚ずつ志野と分け合った。本来ならば3億円も売れて大宴会でもやっていいのだろうと思うが、初めての個展なので気疲れがしてしまって後回しにした。それと3億円の売り上げと言っても半分はデパートに持っていかれてしまうので、たまには新規顧客の獲得でいいがばんたびには出来ない感じもしている。
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次の日はオープンと同時に茶道具商に美術商のお歴々8人が入ってきた[是非にうちと取引をしてください。][もちろん即金で買い取ります。]どの業者も売れて何割のマージンを稼ぐのではなく、すべて買い取り・・・結構なことである。

[まあ、ご存じのようにここの提示額の6割が業者さん達とのおつきあいの金額です。][オリジナルの益子琳派もこれから人気になって値上がってゆくと思うけども、なんといっても高麗茶碗です。種類を増やして、焼いていただけますか。]

[ありがとうございます。販売できるものが出来上がりましたら、皆様にご連絡をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。]志野は今までのお客様の詳細を自分専用のノートに書き込み、もちろんこちらの業者達もチェックしてある。[志野どうだ、いけそうか。][なかなか有望だけど、それぞれ目利きなのではんぱなものは提供できないわ。]と気持ちを引き締めている。
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これで人間国宝以上の人気と実力を兼ね備えた作家になるわけだけども、実際は轆轤もひけずに窯焚きも異次元焼きだからあっという間に最適な方法で焼きあがってしまう。

すなわち写真などを見て構想を練りまた、他と作行がダブらないように気を入れると、自分の方向性が備わった形で作品ができてくる。したがって、雑誌などから作陶の様子の取材依頼があってもNGである。

業者達が帰ってからしばらくするとこんどは韓国人と思われる10人が入ってきた。陶芸の専門家とマスコミの取材のようでややうるさそう。韓国語でなんやかんやと盛んに言っているが全くわからない。陶工のリーダーと思われる年配者が通訳を使って質問をしてきた。しかし約束もしていない突然の訪問なので[プロヒールと作品の説明はしおりに書いてありますので他に何も申し上げることはございません。]と席を立ってしまった。韓国の陶工も大物がいなく、話す必要も全くないのである。

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いろいろ話せば都合のいいように捻じ曲げられる。それなら最初から無視したほうがいい。通訳がこの人は韓国一の陶芸家で日本の重要無形文化財と同じだ、といっても別にどうでもいいのである。

なぜなら私は喜左衛門井戸の180パーセント、総合力が1.8倍の作品を作っている。実力から言ったらまるで桁違いなのである。年配者はもう一度深いため息をついて肩を落として帰っていった。

自分が冷やかし専門でいろいろな展示場に行っていた関係で、ここでは食堂のおばちゃんが制服で覗きに来ても、ウェルカムでスタッフ一同が愛想を振りまいている。買ってくださいというような態度は絶対にダメだと申し渡してあるので、一見やるきのないようなタラタラムードが漂っているようだがあえてそのようにしているのだ。

でも今日はまだ買ってくれるようなお客様が来ないなと思っていたら、品のいい奥様と囲碁の10歳の女性プロ中村菫初段のようなかわいい娘が入ってきた。
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ゴン太はどういうわけか愛想を振りまいて、尾っぽを振っている。かわいいワンちゃんと頭をなでながら[ママ、ワンちゃんと遊んでいるからゆっくり見てきていいよ。]
スタッフに軽い会釈をしてゆっくり見て回っている。大井戸茶碗の前で[これを作った方はただものでありませんね。父もそのように申しておりましたが、私も同感です。]私は首をひねって、誰だろうと思った。

[それにこの犬は普通の犬ではありませんね、父も同じように思っています。][わかりますか?お目が高いですね。ただ本当のことを言うとキチガイ扱いされてしまいますのでできないのです。]

[なるほどね。いずれ父と一緒にゆっくりお話をうかがいます。この花入れと小壺をくださいな。同じパーソナルチェックでよろしいですか。][もちろん結構です一緒にお届けいたします。]600万円と700万円のお買い上げである。娘はゴン太と仲良しになり、お手のお替わりをしている。
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[どうもありがとうございました。そのうちに犬と一緒にお伺いさせていただきます。]スタッフ一同は出口まで出てお見送りをした。[ワンちゃんバイバイ]

今日はこんなものかなと思っていたら、意外な人が入ってきた。[やぁ~やぁ~だいぶ盛大にやられていますね。]明日香王国で軍師の参謀長である竹中半兵衛重治である。[今の方達は大事にしたほうがよろしいですよ。お金もあるけどもそれ以上に、大きな人脈を持っています。現次元に接続した場合、大きな味方になりますから。][ふ~む、そんな感じがするよね。]軍資金も貯まってきましたのでもう少しの辛抱ですよ、それでは自分の仕事に戻ります。陶芸の仕事頑張ってください、では失礼します。]飄々と風のように現れ去っていった。

[今日は4点売れたので、あと残り半分の25点です。明日は新聞に載った関係で大勢ののお客さんが来所の見込みです、こんなところかな帰りの準備をしてください]
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[ゴンちゃん晩飯は何にする、たまには汁かけ飯にするか~。]ゴン太はフンという感じで横を向いてしまった。

3日目になった。今日は混み合いそうでスタッフはやや緊張気味である。[たぶん人数は多いと思うけど、もう半分は売れているんでゆっくりやればいいよ。ただ重要なポイントは頑張ってください。]デパートの売り場責任者がお茶の有名な師匠が来ることを伝えに来た。

そりゃ当然に来るでしょうよ大井戸茶碗の歴代最高のものが展示してあるんだから・・実物を見たら驚くでしょうな。さあ~てどんなもんかと思っていたら、はじめてのお客様は以外にも女子学生でお茶を習っているとのこと[練習用のお茶碗を師匠を通じて12,000円で購入していますが、全くしょうもないものです。練習用でももっといいものはないものですか?

もちろん同じような価格でです。]うわぁ~これは難しいパターン、ゴンちゃんどうしたらいいのと思ったら、ワンワンワンと尾を振っている。
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なんとかなるというサインだな、ふ~む[練習用はわざとテリをだして、本物とすぐに見分けができるようになっているものもあるけど、本当にしょうもないですね。練習用のほかにその店のオリジナルも出していると思うけど、今度は価格との釣り合いが取れていないということが往々にしてあります。

利休好みの楽焼は7種類でしたっけ、まあ総合力で長次郎と同じようなものを作ってみますよ。ただし私のサインの隣に庵の印が付くようになります。量販品だけども総合力は長次郎並みで価格は15,000円です。これでどうですか?すぐにはできませんが、準備が整い次第連絡をします。]

[どうもありがとうございます。父は美術品のコラムを書いているのですが、良心的な作家さんがいたことを知らせておきます。1億円のものを売っている作家さんが15,000円のものを真剣に考えてくださり、ありがとうございました。期待をして待っていますのでよろしくお願いします。]
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本物を1個作って分身でいくらでもできるわけだから、1個のもうけは少ないがコンスタントに売れる商品になればこれはこれで、大きな戦力になる。さていよいよ本日のクライマックスお茶の師匠がそろそろではないかな・・・取り巻きを3人連れてやってきた。

[話は伺っております。ご来所いただきましてありがとうございます。]一緒について案内をしたが、大井戸茶碗の前で唸ったまま動かない。透明ケースを開けて高台を確認してまた唸った。[大井戸茶碗は日本に30個程伝わっているが、これは最高のものだな。これをほんとうにあなたが作ったの?]

[はいそうです。ただあまりありすぎるのはどうかと思いますので、ほどほどにしたいと思います。][残念ながら売約済みだけども、同じようなものができるかな?できるならここにある大井戸・熊川・三島他に青井戸をお願いしたい。]少し日数がかかりますがやらさせていただきます。税込み3億3千万円になりますが、手付金はいりません。]
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[出来上がりましたらご連絡をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。][よろしくというのはこちらのほうだ、こんな満足をした買い物は初めてだな期待をしているよ。]とにこにこしながら満足の態で帰っていった。

しかし今までにここの展示会でこんなに商談がまとまったのはなかったんじゃないかな。浜田庄司加藤唐九郎でも無理だったでしょう。一段落が付いたので休憩しようと思ったら、60歳ぐらいで温和だが切れ者のお役人のような貫禄のある人が部下を伴ってやってきた。[迎賓館で外国人に喜んでもらえるようなお茶碗を探しに来たんだがちょいと見させてくれるかな。][どうぞ、ごゆっくり。]ゴン太がすかさず頭で足をたたきサインを送ってきた。

[ここに展示してあるものは8個ですが倉庫にはまだ用意してあります。どのくらいの個数をお望みですか][そうだな、ここにある琳派模様のものを20個在ったら見せてくれるかな。]
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[サスケにすずさん、12個不足だけども20個持ってきてくれるかな。すみません、すぐに追加でお持ちしますのでお待ちくださ。][乾山の絵付けはいいけど焼きが甘くてね、あなたのは浜田庄司で広がった釉薬の幅が琳派風の絵とうまく融合して焼もしっかりしているので、落ち着きがあっていい感じですな。]

追加で運んできた20点を丁寧に点検してピックアップし[これを展示会が終わったら持ってきてください。その時にお金を払いますので見積書を送っておいてください]名刺を置いて帰っていった。会場にはまだ売れ残りがあるが、予約を入れたらちょうど50点ぐらいの売り上げである。

[志野さん充分に資金ができたので、借家住まいから一戸建てを買って事務所のビルも、一棟買えるなら買っちゃいたいと思うけどどうかな。][将来に備えて一戸建てではなく、小さなマンションタイプの社宅をそして事務所も一棟買えるなら買ったほうがいいと思います。]
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志野[石田財務大臣がとんでもない軍資金をすでに蓄えてあります。足らなかったらそちらを充当したらどうですか。]サスケにすずもうなずいている。

[うわ~腹減っちゃったな、営業時間内に勝手に閉めたらいかんのだろうな、誰か弁当でもなんでも腹に入るものを適当に買ってきてくれるかな人数分とゴンちゃんの分もね。]地下の食品売り場はまだやっているので、志野が手をあげて自分で行くと言ってきた。[じゃあたのみます]休憩室で交代で食べて・・このような感じで3日目は終了した。

さて4日目、今日は平日でもありいろいろ知れ渡ったことでもあり少し閑散としている。スタッフも手持ちぶさたな感じでいると、取り巻きに囲まれて90過ぎのおばあちゃんが入ってきた。柔和な表情をしているが一瞬鋭いまなざしをする時もある。ゴン太は例によって合図を送ってきた。高麗茶碗の前で立ち止まりうなずいている。
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どこかで見たような特徴的な顔、まちがいなければ喜四元総理ということは娘さんの和子様で首相のご母堂様。[ほとんどが売約済みですが、この年寄りにあうようなお茶碗はございますか?][ございます。倉庫からお持ちしますので、少々お待ちください。]自分で取りに行って3個ほどもってきた。

[鶴の文様はいいですね、柿釉や鉄釉で型抜きというのも益子の雰囲気が出ています。浜田庄司さんの後はあなたがリーダーですね、頑張ってください。それぞれ趣向を凝らして楽しめますわ3点ともいただきます。息子にも申し伝えておきます。]

とその時7,8歳ぐらいの子供が騒ぎながら入ってきた。展示品にペタペタ触り、キャッキャ言っている。スタッフはあっけにとられてキョトンとしていたがそのうちガチャーンと最悪の響き、1,000万円の花入れが割れてしまったのである。母親がすぐにやってきて、深々と頭を下げて[まことに申し訳ございません、できる限りのことはやらさせていただきます。

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[いえいえ子供さんがやったことですから、全く弁済をしなくて結構です。もともと泥で作ったものですのでまた焼けばいいだけです、このままお帰りになって結構ですよ。

すずさん子供達のお菓子を持ってきて。][泣いていた子供たちはお菓子をもらってすぐににこにこ顔になっている][それでは連絡先を書いていきますので、必要な時にはお知らせください]

首相の老母は[あなたが焼く陶器は見事ですが、心がけもりっぱですよ。私の友人に紹介するとともに、晋一に言って国のお金でいろいろ買ってもらいましょう。そのうち担当のものがお伺いすると思いますが、待っていてくださいね][ありがとうございます、精一杯に頑張ります。]一行は頷きながら帰っていった。

[さて今日は気持ちがいいからパーティーだな、サスケにすずさんはアサード(アルゼンチンの肉の炭火焼)にしようか、肉は和牛の最上でいいぞ。ゴンちゃん肉だぞ~肉・肉。]食い物のことには敏感に反応しソワソワしだした。
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12日の開催期間で4日が過ぎて今日は5日になった。まだ何点か売り物が展示されているが、予約を入れると目標の50点には到達している。後はもちろん少し残っているものを売ってしまうことと、後につながるお客への対応を、きちっとすることが重要である。

さて本日はどうなることやら・・午前中はめぼしいお客様が来なかったが、午後一番で中国大使館の一等書記官がお見えになった。[なかなかいいものを展示されていますね。実は大使から日本人は焼き物が好きなので、みんなが一目を置くようなものを飾るようにとお達しがあったんです。それで自国の陶芸家の作品をいろいろ調べたのですが、残念ながら明と宋の時代と同程度のものを焼く作家が一人もいないんですね。

それで娘がお茶をやっているので相談したら、四越デパートで展示会をしている作家が評判がいいみたいだって言ったんです。なんか友達に聞いたみたいですね、それでうかがってみました。]
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[お越しいただきまして、ありがとうございます。どのようなものをご希望ですか。][ちょうど写真を持ってきましたが、専門の陶器ではなく磁器ですがちょっと無理ですよね。][明末期の万歴赤絵の花瓶ですか正確には五彩尊と言われています。1対になっているものが伝わっていますが対で作りますか]

[対になっているものでしたらそれでお願いします。][京都の博物館に確かあったと思いますが、その2点の前後左右上下の写真を対で取ってきていただけますか、それと縦横のサイズがわかればそれをもとにして、写しではない独自のものを作れます。もちろん総合的な仕上がりは写真のものに劣るようなことはありません。

資料がそろったところですぐに取り掛かります。1対で税込み3億3千万円になりますがいかがですか][まあお茶碗が1億円で売れているので、価格の注文はございません。資料が揃ったら連絡をします。支払いは出来上がってからでいいですか、それとも手付が必要ですか。]
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[出来上がってからで結構ですよ。連絡をお待ちしています。]段取りが付くとすぐに帰っていった。多忙な様子である。練習用お茶碗1万5千円がこんな形で帰ってきた。手は抜けないな。

このままいい感じが続くとダレてくるのが心配です。そこでこんなものを用意しました。ゴンちゃん用に[一客入魂]の文字入りハチマキを揃えたのです。ゴンちゃんゴンちゃんちょっとこっちに来てと犬用ハチマキを締めてみた。多少、目が吊り上がってしまうがダレていない雰囲気が伝わってくる。ゴンちゃんハチマキはお似合いだよ。なあみんな。それぞれみんな頭をなでながら、いい感じだと言っている。

ゴン太はするどい直観で本心を探っていたが、しかたがなくワンと吠えた。これで一客入魂の、看板犬の誕生である。[いよいよ明日で展示会は終了です。展示品はおとといに最後の品が売れ完売です。予約もかなりのものですし大成功だと思います。]
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[閉めて撤退をしてしまうことはできませんので、最後までゴンちゃんのように一客入魂でお願いします。]あとは売れたから態度がでかいと思われないようにするだけだ。

50歳ぐらいの紳士が陶器を抱えてやってきた。[すみませんが、お門違いは百も承知していますが相談に伺いました。いいものを作っている方は審美眼も鋭いと思います。それでこの李朝の壺の真贋を見てほしいのです。どうぞよろしくお願いします。]と最敬礼で頭を下げられた。

[李朝明治42年までです。これは古陶磁を模して大正時代に作られた大正李朝と言われ贋作です。だらけた造形で絵付けも稚拙ですね。][これでいいのかな一客入魂のゴンちゃん]ワンワンワンと吠えて尾を振っている。

[やっぱりね~思った通りです。なんか引っかかるものがありました。][船橋に私の作品を展示している店がありますがまもなく骨董陶磁も揃える予定です。連絡先を教えてくださればそのうちに連絡をさせていただきます。]
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[趣味は骨董だけなので期待をしてお待ちしています。今日はどうもありがとうございました。それにしてもこのハチマキはおもしろいですね。]頭をなでながら帰っていった。

次の日の最終日にはなんと四越デパートの社長がわざわざあいさつに来て[こんなに売り上げが多いのは初めてです。定期的な展示をよろしくお願いします。ほんとうに、ありがとうございました。]上機嫌で満足そうに帰っていった。
[後に予約で茶道師匠の3億円と中国大使館の万歴赤絵花瓶1対3億円か、まあよく売れたな。さ~今日は打ち上げのジビエ焼肉パーティーで猪肉と鴨肉がたっぷりと用意をしてあるぞ~。]ゴンちゃんは久々の猪肉と言われて狂喜乱舞で跳ねまわっている。たぶん明日香王国の狩猟以来か、[よ~し、かたずけて引き上げ撤収]・・・展示会が終わってまずやることはお買い上げの商品を確実にお届けすること。あとは予約品の作陶である。
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船橋駅近くのこのビルは1棟買いができなかったが2階は借りられるので、そこに骨董を置くことにした。

骨董といっても高麗陶磁器は私が作るので世界的に人気の高麗青磁を置くことにした。あとは中国物に安南・宋胡禄、官窯のものは値段が高くなるのでほどほどに、それに砧青磁の青龍窯のものもかなり高価なので少数にとどめる。

福建省石湾近辺で作られた呉須赤絵、明時代嘉靖期の赤絵に金襴手それに磁州窯の絵高麗でどうかな。超能力パソコンで検索してイメージすれば超能力画面でいくらでも、その時に作られて現在出回っていないものも表示されるので、それをヒョイと現代によみがえらせばいいだけ、したがってお客様を見つけ出し増やすことが一番重要になってくる。

[資金にだいぶ余裕ができたので、自宅と船橋駅と中間の夏見あたりに土地を買って社宅に店舗付き事務所でも建てますか?石田財務大臣に相談しなくても展示会の売り上げで何とかなっちゃうな。]
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[サスケさんちょっと土地をあたってくれますか。][はい、承知しましたすぐに行ってきます]たくさん購入をしていただいた、電子機器会社会社会長宅へ娘さんの分を含めて15点をお届けに上がった。

二人とも在宅で到着を待っていてくれた。[おじゃまします。犬とともに配達に来ました。][おうおう、待っていたよ。どれどれ拝見・・こりゃあすごいもんだな。1億円と5千万円ははたから見たら高額だけど、これは大名物以上でまったくのお買い得です。オリジナルの益子乾山もこれから値上がりをしていくな。]娘さんもうなずいている。[京都の茶道の重鎮も高麗茶碗を予約で5個注文されましたが、展示されている3個をみて驚いていました。]

[ワンちゃんも来てくれたんだ、それでは本題に入るけども、朝鮮の胎土に釉薬に技法も高麗陶器そのものだけど、普通ではありえないし技量も喜左衛門井戸以上、それにこの犬といい常人ではないと思うが本当のことを話してくれるかな。]
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会長[常識から外れていることでもことでも構わないぞ。][まず会長のお眼鏡どおりこの犬は普通ではありません。観世音菩薩の化身です。]

[異次元に祖父が初代国王で観世音菩薩の仏教王国を50年前から作っていまして、私が2代目の国王ですが、まず現次元への接続の責務を負っています。国の場所はどこになるのかはまだ公にできませんが、とにかく広大でロシア以上ですし地下資源も豊富です、人口は約6億人になります。接続は間もなくですが時期が来ましたら、どうぞよろしくご協力をお願いします。]会長と娘は顔を見合わせてうなずいている。

[日蓮法然それに達磨大師空海にその師匠の恵果、それにお釈迦様に龍樹菩薩に弥勒菩薩も復活をしています。チベット仏教の祖のパドマサンババはこの犬を観世音菩薩の化身とすぐに見破り座布団を譲りました。]会長[うわ~菩薩様の化身ですか、そりゃあすごいな私にできることはすべて協力いたします、なにとぞ申し出てください。]
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[それとワンちゃんのことですが、私どもの会社はそれなりに大きくなりましたので、何か社会に貢献しなければならないと思い、私も娘も犬が大好きなので介護犬やセラピー犬を養成したいと思っていましたら、ちょうどこちらの賢そうなワンちゃんに出会いましたので・・・菩薩様と知らずに申し訳なかったのですが・・]

[私どももちょうどそのようなことを考えていまして、超能力で即座に介護のプログラミングを習得させることができますし、いろいろな言語にも対応できるようになります。

したがって、日本人の担当者がハワイで訓練して犬とともに帰国しますと、命令は全部英語になりますので、ちょっと違和感がありますよね。私共のは日本人が日本語でできるようになります。そして、一番賢いとされるボーダーコリーでも覚えることができる言葉は1,000語ぐらいと言われていますが、私どもが訓練した犬は小学生高学年の能力で理解できるようになります。]

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[ですから数十万以上の言葉が覚えられると思いますので画期的なことだと思いますよ]娘[かなり面白いですね、犬はどんな種類がふさわしいのですか]

[レトリバーの純血種が最近多いとされていますが雑種犬でも能力は証明されています。このゴン太はセントラルアジアシェパードドッグと四国犬のMixですが、このようになかなかいいようですよ、ほかにDOGOARUZENTINOと四国犬のMixも飼っていますがこれも優秀です。DOGOそのものは狩猟犬ですが介護犬としての実績もあります。両種類とも200kgの猪をかみ殺すことができますが、とても従順です。セラピー犬として訓練をすれば充分に満足する結果を出せると思いますし、セラピー犬と介護犬の高度な能力を併せ持つことも可能だと思います。]

[お父さん、これは面白いとおもうわ。][まもなく私たちの国が接続できると思いますので期待をしてお待ちください。]父娘に見送られて会長宅を後にした。
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次は迎賓館へ益子琳派茶碗20個のお届けである。[志野さんは一緒に行ってくれるかな、なんか追加で面白い話もある予感がするので、ゴンちゃんはお留守番][どうもありがとうございます。お茶碗を20個お届けに上がりました。]

わざわざどうも、なんかすごいことになっていたみたいだね。京都のお茶の大師匠もぞっこんとか?首相のご母堂様と秘書とはお茶会でしょっちゅう一緒なので、いろいろと伺っています。京都にも迎賓館があるのでどうかななんて言っていました。京都なので骨董でいいから仁清・乾山・潁川・木米・仁阿弥・保全などいわゆる京焼なんかが揃えばベストですが、値段がすごいことになるでしょうね。]

[本物はなかなか出てきません。私はどんな骨董でも見つけてくることができますが、中国のものでしたら実物で勝負ですけども、日本のものはいわゆるイワレがないと信用をしてくれません。あと数年もすればイワレの付いた本物を出すことができるようになります。]
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[なんだかわかりませんが、期待をしています。官邸周りからいろいろなところに話がいっているようなのでまた話があると思いますよ。]その節はどうぞ、よろしくお願いします。]銀行渡りの小切手で1億1千万円を受領した。

[骨董もガンガン行きますか。]志野[すでに玉蘭市に千利休が復活しているので、その周囲に長次郎・京焼の面々・尾形光琳長谷川等伯や土佐派に狩野派のお歴々を集めれば宗教と芸術の中心都市になりますわ、早急に段取りをしたほうがいいと思います。][そうだね、志野さんに任せるわ。]

構想が膨らんで考えに浸っていると、船橋の陶芸店から連絡である。[官邸から連絡があり、首相がトランプの奥様に花瓶を送るので用意できるかとのこと予算は1,500万円ぐらいで、急に予定が決まったので一か月以内だそうです。]すぐに折り返し官邸に連絡をして、2週間以内に持参する旨を伝えた。[志野さんどんなもんかな]
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志野[確か奥様は東欧出身だと思います。王様の得意な鶴のデザインでよろしいと思います。][そうだよな、ただ元モデルだからセンスのいいものを作らないとな。]

[さて今日の晩飯は久々にクジラでもいきますか、ゴンちゃんクジラはどうですか?]ワンワンワンの3度返事はOKサイン。[すずさん、王宮のコックにクジラのセビチェと焼き肉用の骨付きを用意するように言ってください。]セビチェは百畳と言われる胃を茹でてスライスしたものにクジラベーコンにイカにタコを茹でたものにレモン汁をたっぷり加え後は野菜を適当に加え南米からしも加える。

[それと白ブドウから造ったピスコも用意するように船橋の自宅の冷蔵庫に入れておくように段取りをしてください。]ゴンちゃんは骨付きクジラと聞いてはしゃぎまくっている。[そうそう忘れていた、チリ・アルゼンチン近海のネタで人数分のすしを作るように言ってくれるかな。これがまたうまいんですよ。]
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[フジツボのような貝でピコロコこれがいけるのです。南極タラバもいいね]みんなの目にパァーッと力が宿った。やっぱり美味いもののちからは絶大である。

翌日、首相の自宅のご母堂様の所に伺った。[どうもありがとうございます。お茶碗をお届けに上がりました。][まぁ~どうもすいませんね、さあどうぞ][早速、官邸より大統領の奥様用に花瓶の注文をいただきました。ご配慮に感謝申し上げます。]

[あなたのものでしたら、きっと気に入っていただけますわ。お礼をするのはこちらですよ。あそうそう、京都のお茶の師匠もおみえになられたようですね。][はい、高麗茶碗を大井戸を含めて5点ほど予約をいただきました。][あの師匠に認められればあなたも一流です、お客様が増えるといいですね][今後ともどうぞ、よろしくお願いいたします。]船橋の陶芸店に戻った。

[さて、ゴンちゃんを含めて全員の分身をここに置いて王宮に引き上げです。もちろん予約の対応の一切を分身に任せます。]
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もともと王宮にもワンセットいるので表面上は全く変化がない。王様と志野とゴン太は門前町のおヨシの定食屋に入った。[うわぁ~久しぶりですね、王様にお姉さんにゴンちゃん][ほかの子供3人は元気かな?][元気ですよ、特にター坊はお姉さんのところでごちそうになるって、いつも言っていますよ。]

[結婚してからまだ一度も招待をしていなかったものね、4人でいつでもいらっしゃい、どんなものを食べたいのか2日前までに連絡くれると準備がしやすいので、みんなで相談してきめてくれるかな。ター坊はたぶん自分の食べたいものをいうだけだから、タエちゃんと相談して決めてくれる。]

[うわ~みんな喜ぶわ~]母親があいさつに来た。[いつもどうもありがとうございます。][今日はここのご飯を食べたくなってね。煮魚は何がありますか。][ブダイにウマズラになります。][両方2人前と犬用に塩なしでサンマも焼いてくれるかな。それに肉じゃがにお新香とアジのナメロウにビールをお願いします。]
137
[志野さんこんなもんでどうですか][まかせますわ]ゴン太はおヨシと楽しそうに遊んでいる。

いつもの4人組が料理のことで騒がしい、タエ[あなたたち、どんなものが食べたいのか言ってみなさい。]ター坊[やっぱりお寿司かな。桶に入ったお祝いのお寿司が一番おいしかった。]おヨシ[私はいつも定食の残りしか食べたことないから、洋食がいいな。][カレーがうまい絶対カレーだジョー]

タエ[あんたたちの考えている料理はそんなに高くないわ、一番高い料理知っている?]ター坊[ぼくはお寿司といったけど、もっとおいしい料理があるの?親分はお父さんといろんなところで、おいしいものを食べているので教えて頂戴。]

[あんたたち、一番高いのはコース料理なのよ。コースを頼むといろんな料理が次から次にでてくるの。だから王宮のコックさんは腕がいいので、おまかせでコース料理をお願いするのわかった?][うわぁ~おいしいのがたくさんでてきそうだな~。]一同、顔を見合わせた。
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早速、王宮の正門前に4人組がやってきた。すぐにDOGOMixの番犬2匹がやってきて尾を振っている。おヨシがゴンちゃんを呼んでというとすぐに、ウオーンと吠えてゴン太を呼んだ。ゴン太は素早くやってきて案内をしてくれた。

[あら、お揃いできたわね。食べたいもの決まったの。]と志野、[なんでもいいぞ、みんなの考えを言ってごらん。]王様も一緒に話を聞いている。すぐに係りの者がジュースとお菓子を運んできた。[まあ、食べながら話をしなさい。][私たちは嫌いなものはありませんので、ここのコックさんにお任せでお願いしたいのですが。]

ター坊は恐る恐る、[これってコース料理っていうんですか。]王様と志野は顔を見合わせて、[お任せだったらそうなると思うよ。コース料理なんてター坊が考えたの。][いえ、タエ親分がコースにした方がいっぱいおいしいものが出てくるっていうもので・・。]よっちゃんとおヨシもうなずいている。
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[ふ~む、何種類か料理が出てデザートまで出るよ。]うわ~やったという顔で子供たちは喜んでいる。ウォーンとゴン太もそのとおりだと言っている。ごちそうは3日後に決まり、にこにこしながら帰っていった。

新門辰五郎がやってきた。[王様、ごめんなすって。][お~辰五郎どうした、まあ座ってくれ。][へい、ありがとうございます。実はここ門前町はみんながほとんど和服を着て江戸様式ですが、子分と我々の仲間が言うのにはやっぱりヤットーの先生がいないと、なんか江戸の感じがしないというんですが。]

[剣道の先生ということかな、関口柔心が合気武道をやっていて無敵だと思うが?][それはわかっていますが、江戸にはサムライがいないと締まりません。][そういうものか、で誰がふさわしいのかな?][やっぱり剣道の一番の大家は上泉伊勢守信綱でしょう。それに弟子の鈴木意伯に甥の疋田文五郎を招聘して道場を開き、王様が後援するのがよろしいと思います。]
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[そうだな実際に合気武道が無敵だと思うが、上泉の方が気組みで数段に上だと思う、立ち合ったら関口の術は効かないだろう。]辰[私もそのように思います。それに剣道にかける情熱は素晴らしいものがありますし、人物もただものでないと思います。][それでは私の親書と手土産を持ってサスケにすずさんと3人で呼んできてください。]

まず、すずの昔の実家に行き挨拶をしてから柳生の庄に行くことにした。そこに上泉伊勢守他2名も滞在していることを確認している。甲賀の里、すずの実家の望月氏の館にやって来た。

得体のしれないのが来たと周りからゾロゾロと人が集まってきた。使用人が[どちらさん。][私はここの一族の娘ですずと申します。こちらは先祖代々の従者でサスケさん。さる重要な方の使いで辰五郎さんです。][なんだかわかんね~けど少しお待ちくださいよ。]すぐに中に入れとお呼びがかかった。

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[私は望月佐渡守である。そなた望月すず、我々の一党か。][はい、450年後のこの館の当主の娘です。][なになに未来から来たとな、何が何だかわからんな。][こちらのサスケさんも、この館に代々仕えている従者ですよ。][信州から仕えているサスケか。][ならばここにもサスケはいるぞ、誰か呼んで来い。]

すぐに昔のサスケがやって来た。[これが450年後のおまえの跡取りだ、なんか確認する方法があるか。]昔のサスケは現代のサスケをジロリとながめそのままの姿勢でいた。その域に達したものは気を測るだけで、実力がわかるものである。しばらく沈黙していたが、[この者は私と同じか、それ以上の実力があります。]

[ふ~む、すると本物かお前どこでその術を習ったんだ。][はい、親父から甲賀忍術をそれに合気武道というものを加えています。][なかなかのものだな、し て要件は?][昔の実家に挨拶後に柳生の里に滞在している、上泉伊勢守様に会いに行くところです。]
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[ほ~、有名な兵法者だな、なんでまたそのようなところに][はい、今仕えています殿様の要望で、未来からお呼びになったのです。][ふ~ん、なんだかわからんが泊っていきなさい。]

[これは些少ですが。]砂糖とウイスキーを差し出した。[ちかごろ堺に入ってきている南蛮酒だな、サスケ~おまえにもこっちの酒をやる持っていけ][はぁ~、ありがとうございます。]

一泊して旅立ちするときに昔のサスケが3人に弁当を持ってきた。[しっかりと姫をお守りするように][ありがとうございます。これは正露丸という腹痛によく効く薬です、どうぞ受け取ってください。][お前も達者でな。]

一山越えると柳生の里である。[昔のサスケさんはやっぱり修羅場を何度もくぐっているのか、腹が座っていて貫目があるというか重みがありますよ。]すず[私もそう思うわ、さて急ぎましょう。]ちょうど稽古が終わっているところに伺ったようだ。
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当主の宗厳と伊勢守主従は寛いでいた。[なになに甲賀の望月のものが使いに来たと?][おじゃまします。私は望月の娘で今の望月の末裔です。450年後の王様の要望でこちらの伊勢守様一行をお連れに上がりました。こちらは正使の新門辰五郎さんです。]

[新門辰五郎と申します。これが王様の書状です。][なになに分身をして来ればよいということか?][はい、そのとおりです。サスケさんちょっと分身を見せてくれるかな。]サスケはすかさず分身をして2人になった。[これは虚と実ではありません、実と実、2人ともに本物です。したがって、片方はいまのとおりに柳生館に滞在して、片方は分身をして一緒に行きます。柳生様との交情はかわりません。

主従と宗厳もうなずいている。宗厳は辰五郎に尋ねた。[我々小さな豪族はその時の勢力者について生き延びていかなければならない。過去から来たのなら
ば、これからの流れが分かるだろ教えてくれないか。]
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辰[へい、今、京は三好様が勢力を持っていますが続きません。織田信長に松平元康が勢力を伸ばしてきます。六角承偵様も信長にやられます。したがって柳生様は筒井順慶と三好様の家老松永弾正の間を、うまく渡っていかなければなりません。

ここで重要なのは松永様は信長に殺され、信長は家臣の明智光秀に殺されます。そして光秀は羽柴秀吉に殺されます。秀吉の子供は松平元康改め徳川家康に滅ぼされます。柳生様の子供たちは優秀で長男の長男が家康の子供に仕えて剣の正統を受け継ぎます。2男の宗矩様は将軍家に仕え1万石の大名になります。]

[そのような流れか、なるほどな激しいものだ、それにしても我が柳生家は安泰で安心をした。いや~、千金の情報だぞ。][それでは荷物をまとめますので、明日にでも一緒に行きましょう][今日は出会いと旅立ちの祝宴を張る。辺鄙なところで何もないが、楽しんでくつろいでくれ。]
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[親分、王宮で食べた肉はうまかったですね~。]とター坊はまだ夢心地である。今日はター坊によっちゃんとタエのいつもの3人組で、シマ内の見回りである。おヨシは定食屋の手伝いで来れないが、代わりにゴン太が一緒についている。

[なにか新しい見世物は出てないですかね~。]顔パスでただ見できるのでそこらへんは熱心だ。[そうだ、お父さんが連れてきたヤットーの先生が道場を開いたので見に行こうか?]ワンワンワン、ゴン太がすかさずに同意した。

参道の裏の奥に上泉伊勢守主従の道場がある。[こんにちは~新門辰五郎の娘ですが見学させてください。]とゴン太の足を雑巾で拭きながら、奥に向かって行った。早速若い門下生が[どうぞ、お入りを]疋田文五郎は稽古をつけていて、上泉伊勢守と鈴木意伯が正面に座っていた。[はじめまして、新門辰五郎の娘タエと申します。この犬は王様の愛犬でゴン太と申します。]
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[やあ、よくきたね。]弟子にまんじゅうとジュースを持ってくるようにいった。[お父さんにはいろいろお世話になっているよ。その犬は王様の愛犬ですか~。]じっと見るようにしてうなずいた。[素晴らし犬ですね。]

[そうです200kgの大猪をかみ殺してしまうし、人間の言うこともすべて理解ができる賢い犬ですよ。]ター坊とよっちゃんはすぐにまんじゅうをほおばっている。[門前町のシマはすべて辰五郎さんが仕切っているようだね][はい、それとこの国のテキヤはすべて父が仕切っていますので、子分がいろんなところにいます。]

[ほ~そりゃあたいしたもんだ、へんな与太者は入ってこないかな?。][はい、私たちはまだ子供なのでたまになめられますが、このゴン太と王宮に50kgの番犬が2匹います。その犬達を借りて連れていますので、大体は大丈夫です。犬が代わってどやしつけてくれます。]よっちゃんにター坊はまんじゅうを食べながらうなずいている。
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[生活に不便がございました、申し出てください。王様か父に伝えて対応します。][また遊びに来なさい。]

新門辰五郎が王様と話している。[上泉先生に特殊部隊での指導を頼んだらいかがでしょうか?]特殊部隊は王様直属で300人がいる。サスケが責任者で関口柔心とともに指導をしている。早速、サスケを呼んで尋ねた。

[特殊部隊の錬成具合はどうかな][全員合気武道の師範以上になっており、1人で1個師団と戦えます。][1個師団は1万人だけどもすごいな。][上泉先生を教授に入れたらどうか。][急な接近戦になった時には、とてもいいですね。構えていたら1個師団以上でも対応できますが、準備が整っていなくて急なときにはたいへん助かります。]

[まあ2人とも達人だけども相対すればおのずと器量が分かり、おのずと上泉先生が上に来ると思うがどうかな。][そうですね上泉先生が武術の総責任者でよろしいと思いますよ。]
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今日は上泉主従の特殊部隊、初指導の日である。武道場に主だった面々がそろっている。武術師範の関口柔心が[こちらは有名な新陰流創始者上泉伊勢守先生と弟子の各先生である。

まず鈴木意伯先生とだれか立ち合ってみよ。組み手でも、一個師団を倒す気組みで勝負してもいいぞ、もちろん竹刀で打ちかかってもいい。][そこの2段の師範代理、勝負してみろ]筋骨たくましい22歳ぐらいの青年が勢いよく進み出てきた。たぶん安直に接近戦では簡単に負けてしまうが、距離があれば気組みで倒せると思っているのであろう。

両者は中ほどで7mぐらいの距離でにらみ合っている。意伯は自然体で竹刀を片手で持ち、そのまま下げたままである。合気武道の構えで気組みをしているが、全然相手に変化がないので焦っている様子だ。といって空手や柔道に合気道で勝負する前に遣られてしまうのはわかりきっているので攻め手が全くないようである。[勝負あり。]一方的に終了である。


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全くどうしようもないのはみんなが納得して、うなずいている。サスケは[これからみんなに小太刀を習ってもらう。特殊部隊は銃を持たないので小刀を持つようになるが、長さはこれから検討をしていく。なお刀匠は有名な岡崎正宗と弟子の粟田口義光に郷義弘を召喚してある。普通では絶対に手に入らないものである。]

いつもの子供3人組がタエを頭分にター坊とよっちゃんが従っている。お供はDOGOMixの2匹である。今日はター坊とよっちゃんもタエとおなじ、股引に腹掛けとめ組の印半纏着て鯔背な格好である。[あんたたち、組の半纏を着てるんだからシャンとしなさいよ。]とタエ[はい、親分。]

胸を張って誇らしい気持ちで見回りをしている…なんだか向こうの方が騒がしいが、テキヤともめているようだ。売り物の丸い大きなせんべいを、金を払わずに取り上げているようだが、150㎏はありそうなガタイのいいのが3人いる。
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[あんたたち、そこで何やってんのここは新門辰五郎のシマ内だ、かってはやらせないよ。]はやくもDOGO2匹が唸り声をあげて戦闘態勢に入っている。大猪をかみ殺してしまう獰猛な犬だ、普通だったら相手はこの迫力にたじろいでしまうがいっこうにひるまない。

どうやら巡業に来ている江戸相撲の下っ端のようである。ガキはひっこんでいろとせせら笑っている。2匹の猛犬は低い体勢から勢いよく飛びかかっていったが、張り手をかまされてそれぞれが吹っ飛んでしまった。タエの頭を小突こうと手を頭にやった瞬間、グェーっと3人が続けて呻いて喉を抱えてうずくまってしまった。

誠の隊旗を掲げてだんだら染の装束・・これはもしかしたら新選組の面々。隊士の斎藤一が得意の3段付きの一撃、扇子1本で片づけてしまったのだ。態勢を立て直した番犬がもう一度飛びかかろうとしたが、タエがそれを静止した。副長の土方歳三が[まだやるか、やるなら片耳もらうぞ。]

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刀を突きつけて一喝した。[へい、恐れ入りやした。金を払って退散します。]喉を抱えながら、すごすごと行ってしまった。[ひゃ~おじさん達強いね。]ター坊とよっちゃんは感心したようだ。[私の父は新門辰五郎ですがよろしかったら、お茶でも飲んでいっていただけますか。]

[せっかくだが上泉先生のところに行く予定で、わるいけど案内をしてくれるかな。][それはお安い御用で、どうぞこちらです。][こんにちは新門のタエです。お客様をお連れいたしました。]

上泉伊勢守主従3人は揃っていた。ちょうど稽古の休憩時間だったようだ。上泉[これはこれは新選組のお歴々ですね。島津義弘様より連絡をいただいています。さぁ、まずお座りになってください。][そのうち露死阿と戦いになるといわれ最後のプーチンチン邸に突撃するのが私たちの役目だと聞かされまして、一切を上泉先生より指導を受けるようにいわれました。]
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上泉[なかなかの猛者ぞろいですな。私たちは剣術家ですので、まず手を合わせてから話をしましょうか。][それでは若手ですが、隊内でも上位の腕前で先ほどもこの娘さんのトラブルを解決いたしました。7番隊隊長で突きが得意です。][それではこちらが甥の疋田文五郎です。両者中央に出なさい。]

斎藤一一刀流の流れをくむ流派の豪の者である。すかさず秘伝技の夢想剣に仏捨刀を繰り出したが受け流され、最後は得意の三段突き繰り出したが見切られてしまい、[参りました。]と言って下がってしまった。

次は一番隊隊長の沖田総司よりも練習では上を言っているという、神道無念流永倉新八である。[両者前に出なさい。]蹲踞をして素早く分かれた。いつもは積極的に連続技を仕掛けるのだが、唸ったまま動けない。しばらくにらみ合っていたが、[参りました。]明らかに格の違いである。実際に真剣での斬りあいになった場合は局長の近藤勇と副長の土方歳三が抜群に強い。

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天然理心流は実戦を想定した剣法で道場のものとはまた違うのである。[それでは最後に末席の若いの、立ち合ってみなさい。]服部猛夫である。二刀を使うと猛者ぞろいの隊内でも勝てるものがいないといわれている。近藤と土方は目を見合わせてにやりと笑っている。

[それでは文五郎とかわって意伯が立ち合いなさい。]ちょっと首を斜めにして片手下段に竹刀を持っていたが、相手のすさまじい二刀の連続技を紙一重で見切っていたが、そのうち絵に描いたように乾いた音を立てて貫銅が決まった。意伯ぐらいの境地になると一刀も二刀も関係ないのである。相手の攻撃がすべて手に取るようにわかり、紙一重でかわしスキが出たところをきれいに打ち貫く、ただそれだけなのである。服部が下がって一礼するとともに一同も揃って一礼した。

3人組がソワソワして落ち着かない。というのは王宮の番犬が子供を産みそうなのである。
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いつも見回り用にゴン太か番犬を借りに来るのだが、自分のを欲しいと思っている。番犬はいつものように吠えて、ゴン太を呼んだ。志野もゴン太にせかされたのか、一緒にやってきた。

[あなたたち犬を見に来たの?タエちゃんは欲しかったのよね。][はい、できればオス・メスの2匹欲しいです。][それじゃあオスはここの一匹、メスはどこかの狩猟場か寺犬と交換して2匹にするわね、兄弟では夫婦になれないから。どんな毛色のがいいの?]

[はい、赤ゴマっていうんですか白と赤が混じっているのです。四国犬に多くいるタイプですけどDOGOMixで50kgのゴマはかっこいいです。それと奥さんにするのも同じような毛色がいいです。][そう、もうすぐ生まれると思うけど、ゴン太が知らせに行くわね。][は~い待っています。][親分良かったですね。獰猛でなめられないのがいいです][ぼくは100kgぐらいに大きくなるのがいいと思うジョー]
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[あんたたち何言ってるの、ゴンちゃんみたいのがいいでしょ。][それじゃあ、ここで生まれた一匹はゴンちゃんにに選んでもらおう。][そうだジョー、ゴンちゃんに決めてもらうのがいいジョー。]

三日後に12匹生まれた。[うゎ~い、可愛いのばっかりだ。][ゴンちゃん、私に一番合うのはどの子なの、教えて頂戴。]この中で一番大きくて赤ゴマの毛色の活発な犬のところに来て前足でトントンと体に触った。[これはいいじょ~。]3人の考えはすぐに一致した。[名前は大きいから大ちゃんにするわね。][うゎ~いダイちゃんだ。]

志野が大様と一緒にやってきた。[いいのが見つかって良かったな、3ヵ月はここでお母さんと一緒にいなければいけないことになっているので、その間にいい彼女を見つけておくよ。][いつでも遊びに来ていいわよ、番犬小屋は入口のそばだからいつでも来れるわね。]とそこに定食屋の娘のおヨシがやってきた。
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おヨシ[いいわね、うちは商売で忙しいからネコぐらいしか飼えないわ、どこかにかわいいのいないかな。][おちゃわん屋のネコがおもろいジョー。]タエ[前に志野お姉さんがアルバイトしていたところのおニャン子ね。トラ毛の上にエンジ色の僧衣着たような可愛かったわ。]

[まあ、あのようなネコだったらネコ寺にいるから今度もらってきてあげるわね。]ネコ寺のいわれは野良猫がお寺に住み着いて和尚さんの勤行を毎日聴いているうちに、自分も一緒に和尚さんと一緒にお経をあげるうちに超能力が付いたといわれている。サバやトラの地毛にエンジ色の僧衣を着たようになっている。30匹ぐらいいるといわれているが、おちゃわん屋のネコはここの出身なのである。

[タエ親分、見回りに行かないんですか。][ター坊、なんか面白いの見つけたの?いま、ややこ踊りというのがすごい人気で一度見てみたいな。]常設の歌舞伎場とともに、旅芸人などが使用する演芸場もあるのである。
157
そこに6~8歳ぐらいの女の子8人が大人のしぐさをまねて踊るのが大人気になっている。化粧も大人のようにするので怪しい雰囲気が漂っているが、これが受けているのである。[じゃあ、今日はゴンちゃんも一緒に行こう。]ワンワンワン、ゴン太も子供達との見回りは大好きである。

[あ、いらっしゃい新門の~、どうぞそのまま入っておくんなせ~。][いつもすいませんね~。]中はいっぱいの観客で、前座の大道芸が終わっていよいよややこ踊りの番になった。みんな幼いが芸達者で幼いお色気が人気である。[親分、これ面白いですね。明日も来ませんか?]

[明日、ター坊とよっちゃんは上泉先生のところでヤットーの稽古でしょう、男のくせによわっぴーままではだめよ。ややこのおケツばっかり見て喜んでいるようなのは根性を入れ替えないといけないわ。毎日、お尻が腫れるまで打ちのめされないと使い物にならないわね、職人町の子供何人かはすでに入門してる、あなたたちも行ってきなさい。]
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[職人町のやつらは頭が弱くて体力自慢の奴らばかりで、僕らは頭で勝負ですから必要ないです。]ター坊の頭に拳骨が飛んできた。[おヨシのところに子ネコが来てるジョー、見に行こう。]

志野がネコ寺からもらってきて、すでに定食屋の看板ネコになっているという。入口の電話台のそばの椅子に、腹を出して寝転がっていた。やっぱりトラ毛だけれどネコ寺と同じように、エンジの僧衣を着たような模様になっている。三人がそれぞれ撫でても知らないように寝ている。ずいぶんとおおらかなようだ。

[こりゃあ、おもしろそうなネコだジョー。][そうなのよ、お客さんが触っても全然関係なく寝ているの。ジュースでも飲んでいって。][飲もう、飲もう~、喉が渇いたジョー。][ダイちゃんの彼女は王室狩猟場からもってくるそうよ、同じ赤ゴマでよかったわね。]

王宮に島津義弘に甥の豊久、参謀長の竹中半兵衛、首相の真田昌幸らが揃っている。サスケとすず、それに王様も同席している。
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竹中半兵衛[今日は対露死阿戦のおおまかな打ち合わせです。石田三成財務大臣の主導でUSA・EUROそれにロンドン・シンガポール・香港で銀行が回収して中央銀行に送る古札を分身した偽札を差し替えて、いままでにストックした本物の分が1,500兆円貯まっているので目標の2,000兆円まであと少しになっています。]

国王[そこで、三軍の核になる主導者を決めておいたほうがいいのではないかと集まってもらった。まず、陸軍の露死阿戦責任者は誰がいいかな。][島津義弘[私が薩摩だからと申すわけではありませんが、やっぱり西郷隆盛が適任かと思いますがどうでしょう。]島津豊久[舎弟の従道、従弟の大山巌など、それに日露戦で活躍した情報の明石元次郎・秋山好古児玉源太郎を復活させたらどうでしょうか。]

竹中半兵衛[海軍は伊予水軍の村上武吉に日露戦の秋山真之、空軍は台南航空隊の斎藤大佐に小園中佐それに撃墜王坂井三郎や岩本徹三の歴戦の勇士をと思ったのですが、まだあまりにもまもなく、関係者も迄おられるのでどうかと思われる。]
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国王[それもそうだ、それに空軍は今回あまり出番がないぞ。]半兵衛[今回の戦いは超能力をフルに活用し、瞬時で軍隊に警察は施設共々200年前にしてしまう、それに一切の銃火器を排除してしまうので戦いにならない。進軍に何も障害がなくなるが、いろいろ手製の武器で反撃をしてくる可能性もある。特にクレムリンには」中世の武器庫もあるので注意が必要だし侮ることはできない、その時に腕力の強い幕末の勇士や新選組が必要になってきます。]

義弘[問題はその後です、うまくまとめられなければどうしようもない。その点、西郷は人望がありますので心配はしていませんが、同じ幕末の英雄の勝海舟も入れますかな。]国王、[それはいいですね。]一同もうなずいた。半兵衛[最後はたぶんモスクワになると思うので、サスケさんとすずさんの特殊部隊と新選組の活躍になると思いますよ。]


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竹[それに誠の旗をモスクワに立てて、思う存分に暴れられるのは最高の気分でしょうね。]

タエ達3人組が王宮の番犬小屋を覗きに来ている。タエの犬ダイは腕白もので、いつも他の犬に噛むようにして遊んでいる。母犬はそばでじっと見ていて介入しないが、あまりに度が過ぎると分ける。もう2ヵ月になっている。

タエ[ダイちゃん一番かわいいな、この2匹の白犬は世界一の標高8,888mの如来山の南の白雲市に復活しているお釈迦様がおられる仏教センターに狛犬としていくのよ。][白い2匹はかしこそうだジョー。]

めずらしくタエのお父さんの辰五郎がやってきた。[いい犬じゃあないか。][はい、この大きいのがタエ親分のです。][今日は何の用事なの。][この門前町をもっと発展させるにはどうしたらいいか、そんなような打ち合わせだ。][私たちも参加していい?毎日見回りをしているからお父さんより町中のことは詳しいよ。][子供がか、まあ迷惑をかけないんだったらいいよ。]
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3人組も打ち合わせに参加することになった。[やあ、親方どうもみんなもよく来たな。][子供なのに打ち合わせに参加させろっていうもんで、すいません。][な~に、案外といいアイデアを持っているかもしれんぞ。、でなんか面白い考えを思いついたのかな。]

[へい、よく考えたのですが、せっかく江戸の雰囲気を造ってみんなが着物を着て、それに街中も江戸のようにしています。そこをもっと掘り下げたらいいように思います。][具体的にはどのようなことかな。][へい、浮世絵作者の葛飾北斎安藤広重写楽などと彫師や擦り師などを呼んで、大々的にアピールしたらどうでしょうか。]

[それも面白いな、北斎は何といっても偉大で外国にも名前が響いているからな。][ボクも言ってもいいですか?]ター坊がめずらしく真剣な顔つきになっている。ター坊[ここは大本山の前で人通りも多いです。その人たちを喜ばせるような催しを、もっと多くしたらいいと思います。]
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ター坊[超能力で江戸時代に人気があった見世物などはすぐにわかるわけですから、それを呼んだらいいと思います。][見世物をもっと多くか?それもいいかもしれんな。親方、タエちゃんに江戸から呼び込める超能力を与えるので、協力してやってくれるかな。]

[子供でいいんですか?][なに、タエちゃんはしっかり者だから大丈夫だ、それに頼もしくて頼りになる子分もいるしな・・・ハッハッハ。][ぼくも頑張るジョー。]

そこに志野がやってきた。[まあ、子供達も偉いですね。私は王様にサスケさんにすずさんも陶芸の専門家ですので、江戸時代の有名作家で京焼の仁清・乾山・潁川・仁阿弥・木米・保全などを呼べば面白いと思います。本山の裏山がかなり広いので、充分に窯を築くことができると思います。][それはいいな、志野さんとサスケにすずさんとで進めてください。]

[今日は料理長が特別にケーキとクッキーを作ってくれました。クッキーは持ち帰れますからね。]
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[わぁ~い、おいしそうだジョー。]ター坊は見世物が多くなると、タダでしょっちゅう見れるのでほくそえんでいる。

今日はター坊とよっちゃんは新門の印半纏に股引に腹掛けで目が吊り上がっている。というのは職人町の同い年の2人組から決闘状を突きつけられたからである。最初はビビっていたがタエに尻を叩かれ、行くことになった。[あんたたち、新門の印半纏を着てるんだから負けたら承知しないよ。]

相手は2人とも上泉道場で剣道を習っている乱暴者である。いっしょに5ヵ月になったばかりのダイと彼女のウメが付いていくことになった。タエは2匹の子犬に作戦を授け、頃合いをみはらかって足に噛みつくことになっている。そこをすかさず飛び込んで鼻に徹底的にパンチを見舞うことになっているのだ。

タエの家で喧嘩の準備をしていると、若頭の大前田栄五郎がやってきた。[お~なかなか気合の入ったいい目つきしているな、デイリか。]
165
多くの喧嘩を経験してきたので、雰囲気でわかるのである。[い~かよく聞けよ、子供の喧嘩は噛みついて離さなければそれで勝ちだ。よっちゃんはまだ小さくて力がないのだから、鼻にでも噛みついたら勝てるぞ。]

3人は目が吊り上がって気合の入った顔で出ていった。2匹の犬もいつもの遊びまわっている時の感じではなく、少し腰を沈み加減にして歩いている。や~い、よわっぴー鼻たれ小僧とちいせえワンコロ、それに小娘まで来たんか。][私は入らないけど犬は一緒だ。][はは~ん、こんなちいせえイヌッツコロ蹴とばせば一発でおしまいだ。どっからでもかかって来いよ。]

4人がにらみ合っていたが、いきなり2匹の犬が唸り声をあげて飛びかかっていったが、しばらくして2匹とも蹴とばされてしまった。しかし小さくても狩猟犬である。2mほど蹴とばされ背中から落ちてしまったが、鳴き声を上げない。まだ戦う意思満々である。
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ター坊もよっちゃんも力が弱いので投げ飛ばされ腰に手をやっていたがっている。[やっぱり弱っぴーやつだ、生意気にシマの見回りなどとぬかしやがって~。]

と言ったとき、投げ飛ばされていた2人は掴んでいた泥を、相手の顔面に向けて投げつけたその瞬間、2匹の犬は勢い良く2人の足に噛みついた。小さな犬でもアゴの力は相当強い、[イタタタ・・・。]イヌを振りほどこうとしたとき、ター坊は相手の鼻にパンチをお見舞いした。4・5発殴ったら血が噴き出してきた。よっちゃんは目に土が入ってこすっているスキを見つけて、猛然と鼻に噛みついた。こちらもすぐに血にまみれてしまった。

[はい勝負あり、離れなさい。]相手はすごすごと足を引きずり、顔に手をやりながら退散していった。タエの作戦でいったんわざと簡単に投げ飛ばされて、土を掴んで顔面にあてるのが一番のポイントだったのである。
167
それにしても5か月の犬も、いったん蹴飛ばされたのに良く立ち直った。やっぱり200kgの猪に向かっていく種類だけのことはある。[エイエイオー、エイエイオー、エイエイオー、ワンワンワン、ワンワンワン。]町のはずれの空き地では勝ちどきが上がっていた。

[よ~し、たこ焼きかお好み焼き食べに行こう、なんにする。][ぼくはおこのがいいジョー。][ター坊はなんにする。][ぼくはおこのの5種類入りがいいな。][よし、じゃあ行こう。]ワンワンワン。

清水次郎長が王宮に新茶とブランデーを持参してやってきた。世界一の如来山の近くでオーナーは国王であるが辰五郎がまかされ、その関係で総支配人のような立場で茶園・葡萄園・ワインとブランデー工場にレストランをやっている。

[新茶ができましたので、お届けに上がりました。][お~すまないね、まあ上がりなさいな。]覆いなしで宇治茶を超える抹茶を生産している。[ブランデーも火入れなしの超能力蒸留をしていますので、独特の風味が気に入られています。]
168
[それはよかった、何か困ったことや要望があるかな。][はい、実は猪が増えて畑を荒らされて困っています。それで辰五郎親分に聞いたのですが、まだ番犬の子供が3匹残っているということですので、ぜひ譲っていただければと思います。]

[それは構わないよ、その犬の兄弟は娘のタエにもらわれていって、子供の喧嘩の助太刀をして活躍したらしいぞ。もともと猪の狩猟犬だからちょうどいいんじゃあないか。][へ~、デイリの助太刀ですか、そりゃあいいやちょうど私らの犬にはぴったりのようで、ありがとうございます。]

辰五郎の家に葛飾北斎に娘のお栄、安藤広重東洲斎写楽の4人がそろっている。[ようこそおいでいただきました。江戸でお会いしました新門辰五郎でございます。その世界で有名な方々をお招きできましたことを、たいへん光栄に思っています。]北斎[とりあえず腹が減ったから、なんかうまいものを食わせてくれないか。]
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[へい、どんなものがよろしいですか、そばか寿司か・・・寿司でしたら江戸でも評判の華屋与兵衛寿司がここでもやっています。][それならそれにしておくれ、皆さん方もそれでよろしいですか。]

[タエ、与平寿司に行って特上を10人前頼んで来い。][は~い][しばらくお待ちを。来るまでにおおまかな話をいたします。住居は職人長屋に用意してありますので、あとで若い衆に案内をさせていただきます。生活と仕事に必要な金子は充分にご用意しますので、題材は好きなものをお書きになって結構です。また旅に出たければお申し出ください。いかようにも対応いたします。写楽さんは芝居がたいそうお好きだと聞いていますが、どこでもシマ内でしたら無料で見れる手形をご用意いたします。]

写楽、[そりゃあいいや、毎日ただで見れるな。][それとこの国の王様はたいへん庶民的で、私みたいな半端者でも気軽に御用を命じてくれます。今度王宮に招待させますので、一緒に食事でも致しましょう。]
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北斎[面白い殿様だな、おれも時の将軍様に招かれて何か絵を描けと言われたので、鶏の足に絵具をつけて紙の上を歩かせ、紅葉のもみじが川に流れていますとやったら笑っていたな、はっはっはっ。]

[それとお栄様には私の娘が江戸で面白い見世物とかいろいろ教えてほしいと言っていました。邪魔くさいと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。][私は子供が好きなので、どうぞいつでもお越しになってくださいな。][これと子供の子分2人と犬2匹がいつもセットになっています。][い~ですよ、賑やかなのはかまいません。]

茶道の小堀遠州が王宮で濃茶を飲んでいる。もちろん王様が焼いた益子琳派のお茶碗を使用している。[お茶も器もいいですね。][お茶は私の茶園独自の品種で器は琳派の様式を参考にし、益子の浜田庄司釉薬方法で私が作陶したものです。][へぇ~王様が自分で作ったんですか、見事ですよ。]

 

 

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そこに志野が大井戸茶碗を持ってきた。高台を見、全体を見まわたして唸ってしまった。[こりゃぁ~天下の大名物ですね、喜左衛門井戸を超えていますよいったいこのいわれは。][何のことはありませんよ、私が作ったものです。][ひぇ~、すさまじいものですね。これほどの陶芸家は歴史上に誰もいませんよ。]

[小堀流というのは日本で正統がありますので、初代小堀遠州流にしていただけますか。][へい、承知しました。そのようにさせていただきます。]

[持参の茶道具をお持ちかと思いますが、今までに失われた名物の復活も可能です。例えば松永弾正の平蜘蛛の茶釜とか茶道具でなくても牧谿の画とか、何か望みがありましたら申し出てください。それからもちろん高麗や李朝のものも揃えられますよ。またまもなく仁清・乾山・潁川・仁阿弥・木米・保全などの京焼の面々も復活してきます。][これは私がテーマとしています、綺麗寂に合うものが多くて楽しみです。]
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[あ~そうそう、千利休が玉蘭市で復活しています。秀吉政権の内部にかかわりすぎたことと、金儲けに執着しすぎて尿瓶を茶壷として売ったことがばれて、切腹させられてしまったと言っていた。復活してからは地道に茶道一筋でやっていますよ。]

[なるほど、私は利休の高弟の古田織部の弟子でして、根本は利休と同じですが織部師匠と同じように表現方法が違っているだけです。]

[こんにちは~お栄さん、新門のタエです。][あらまあらっしゃい、仕事中で散らかっていますけど、どうぞ中に入ってください。][お栄さんも絵を描くんですか、かなりいい感じですが。][まあ、父ほどではありませんが、名前は結構に売れているんですよ。今日は皆さんお揃いで、何か聞きたいことでもあるんですか。][はい、江戸で人気がある見世物とか催しとかを教えてほしいのですが。][はいはい、まあそこに座ってくださいな。ちょうどカステラがありますが、皆さん食べますか。]


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[ぼくは食べたいです。][おいしそうだじょー]ワンワンワン・・[あらワンちゃんも食べたいって言っていますね。ちょっと待っていてください。][ダイにウメ、お座りしていなさい。]

[うゎ~い、おいしいジョー][いろいろありますが江戸からこちらに連れてくるには人気をとれるかどうかも必要ですが、その人達の人柄も重要です。猿回しなんかどうですか、それでしたら私の知人であてはまる人達がいますよ。猿もよくしつけられていて、悪さはいたしません。][でも犬猿の仲とか言って、私にはご存じのとおり2匹の犬がいつも一緒です。大丈夫でしょうか。]

[まあそれは普通でしたら相性はいいと思いませんが、こちらのワンちゃんは賢そうですし、その人のサル達も性格はとても人懐っこくていいですよ、大丈夫ではないですか。][ダイにウメ、お猿さんと仲良くできる?]ワンワンワン、[ぼくはお猿さんもすきだジョー。][江戸に行かれるときはご一緒しましょう。]
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子供3人組が王様に呼ばれている。[肉まんでも食べながらちょっと話を聞いてくれ、ここのゴン太のお嫁さんを見つけに菩薩山のカイラス寺にいってもらうのだけど、そこには寺犬として25匹いてお嫁さん候補は5匹いるそうだ8~15か月でタイプはいろいろ、そのなかから選んできてくれるかな。][ぼく行くジョー。]

[ゴンちゃん、どんなお嫁さんが欲しいの・・?グラマー・幼いの・おとなしいのがいいのかな。][まあ、ゴン太に好きなのを選ばせればいいから。]

[うゎ~、おもしろそう。おヨシも連れていこう。]とター坊。[そうね、女性は恋人選びが大好きだから。]ここは世界最高8,888mの如来山の隣にある、菩薩山5,888m中腹にあるカイラス寺である。子供達4人とゴン太が来ている。寺犬が7,8匹がやってきたが、ゴン太は王様と前回来ているので顔パスである。
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この寺の住職である老師の所に向かっていくと、執務室の入り口で寺僧に会った。[国王の使いで来ました。][伺っております。こちらにどうぞ。]

老師はお茶を飲んでゆっくりしていた。[新門さんのところのタエさんだね。よく来た、ゴン太も大きくなったな。お宅の身内の次郎長さんがお茶を持ってくるので、みんなのことはよく知っているよ。今回はゴン太のお嫁さん探しだね。]

[はいそうなんです。その前に教えてほしいのですが、玉蘭市にチベット仏教開祖のパドマサンババが復活しています。王様が訪問されたときにゴン太を一目見て座布団を譲ったと聞いています。ゴン太は普通の犬よりも賢いのはわかりますが、それ以上のすごい犬のようにも感じられます。実際はどうなんですか。]

[はっはははは、サンババが座布団を譲ったか、さすがに目が高いな。な~にタエちゃんが思っているように、ふつうよりもちょっと賢い犬と思っていればいいよ。もし困ったことがあったら相談してみなさい。]
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[案外と助けてくれるかもしれないよ。][わかりました。ありがとうございます。][みんなの大好きな、お饅頭だよ。]すぐに手が出て、パクパクやっている。[これおいしいジョー][ここのは抹茶ですね。][はいはい、次郎長さんの抹茶を使ってここで作っているんだよ。]

おヨシも[抹茶がいい感じでおいしい。と、そこに5匹の犬が連れられてきた。大人びたものから、まだ幼さが残っているものまでいろいろだ。[ゴンちゃんにはしっかりものがよさそうね。]とおヨシ[ぼくはやっぱり器量よしがいいと思うな。][ゴンちゃん自分で選びなさい。]とタエ。ゴン太はソワソワと落ち着かず、行ったり来たりしているだけである。

[和尚様どうしましょう。][まあ、少し待っていなさい。すぐにきまるから。]とそのとき一番若くて幼い8ヵ月の白犬がゴンタのところに来てピタリと寄り添った。[決まったジョー。]お嫁さんは白犬のユリに決まったが、ゴン太も満更でもないようにうきうきと喜んでいる。
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[この犬もゴン太と同じように普通でないかもしれんが。王様に私が自信をもっておすすめすると言ってくれるかな。][はいわかりました。そのように伝えます。今日はどうもありがとうございました。]

菩薩山カイラス寺はバングラデシュの南にあるが、王宮の車で超能力運転手の瞬間移動で数秒で行き来してしまう。子供たち一行はすぐに王様のところに報告に行った。[和尚さんがこのユリのことを自信を持っておすすめするということと、この犬もゴン太のように普通ではないというようなことを言っていました。]

[ふ~む、この犬も普通じゃあないか、こりゃあすごいことになりそうだ。][え~、どういうことですか。][いやぁ~なんでもない、今日はどうもありがとう。特製クッキーとジュースを食べていきなさい。クッキーはいっぱいあるんで持って帰ってもいいよ。][こりゃ~いいジョー。僕持って帰る。]係りの人が袋を持ってきたので、みんなたくさん詰めている。
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[ユリちゃんか、こっちにおいで。]ゴン太と2匹でやってきた。王様は頭をなでながら満足の様子である。これは吉祥天の化身だと思うが…まあ、そのうち聞いてみればいいと思った。

王宮の会議室に王様をはじめ、総司令官の島津義弘、甥の副指令の島津豊久に参謀長の竹中半兵衛、それに王宮スタッフのサスケにすず、今回から西郷隆盛桐野利秋勝海舟山岡鉄舟などの幕末の英雄が加わっている。

半兵衛[ご苦労様です。それでは対ロシア戦の作戦会議ということで始めます。まず、海軍と空軍の出番ほとんどないと思います。なぜなら超能力で瞬時に軍隊および警察を300年前の状態にしてしまいます。そのうえ銃火器の一切を排除してしまいます。当然に核や飛行機それに軍艦に戦車もありません。したがって簡単に制圧できます。ロシア方面総司令官に西郷大将、ロシア自治区首相に勝海舟殿でお願いしたいのですがいかがですか、御両所とも幕末にとても多大な貢献をしています。]
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西郷、[私のほうは何とかなりますが、勝さんのほうが大変だと思います。]勝、[な~に超能力を使って、国は自治区になってしまったけど自由を謳歌できると思って大感謝するように持っていけばいいさ、普通だったらあちらこちらで暴動が起きるけども、そのようにはならないでしょう。そのうえ元警察官も洗脳して忠誠を誓わせれば、それほど労力を使わなくても済むと思いますよ。もちろんポイントごとに軍隊を置いて、警察署にも何人か明日香人を置いておけば、それで済むんじゃないんでしょうか。]

[勝さんのそばには山岡さんがいますが、上杉家の家老で有名な直江山城守兼次やそのほかの有力な面々を揃えたらいかがでしょうか][そうですね、庄内藩で最後まで頑張っていた河井継之助なんか真っ正直で熱意が会っていいと思っています。]

半兵衛、[それとまだ構想の段階ですが、ロシアが片付いたら北朝鮮内モンゴルチベットウイグルをいただいちまおうと思っています。]
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もちろんロシアを傘下にその為に日本や米国をこの地域に入れようと思っています。]西郷、[私はもともと征韓論者ですから、昔の仲間を集めてやってみたいですね。]海舟、[まあ、その話はロシア戦の後にしましょう。ところでロシア戦最終予定地のプーチンチン廷に切り込みをかける新選組の歴々も復活しているが、人斬り半次郎と言われた桐野さんは仲良くできますか?]

いやぁ~懐かしいですね。昔は昔です。剣に生きるものはこだわらないと思います。義弘[剣聖といわれた、上泉伊勢守主従が道場を開いています。新選組の猛者数名が試合に挑みましたが、全く歯が立たなかったようです。何なら覗いててきたらいかがですか。]

おもしろそうですね。ただ新選組の隊士も私も実戦で鍛えた荒っぽい剣で、道場での緻密で繊細な刀法にはかないません。]大本山の山門裏の蕎麦屋に子供3人と犬2匹、それに応援でゴン太とユリも来ている。

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店の3歳の娘が行方不明で警察官と警察犬のシェパード2匹も捜索中である。[雨が降ってきているので見つけるのは厳しいけど、やるだけやってみよう。1時間ぐらいで戻ってきて、ター坊はゴン太とユリ、シェパードに負けないようにね。][雨が降っているからだめだジョー。]警察とシェパードはそうとう綿密にやっている。店の夫婦はオロオロして心配そうだ。ダイとウメは鼻をヒクヒクさせながら一生懸命に匂いを追っているが、雨で全くダメなようである。ター坊とよっちゃんにゴン太とユリの組もすごすごと帰ってきた。][今日はだめだジョー。]でも子供の安否が気遣われる。[私たちは子供だから後は警察に任そう、みんな引き上げ~。][え~、心配だジョー。][こういう時は引き上げが肝心なの、明日うまくいくかもしれないでしょ。おばさん今日は帰りますが明日また来ます。子供は生命力がありますので、諦めないでください。][どうもありがとうございます。]

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翌日8時に子供3人と4匹がやってきた。警察と警察犬は徹夜で捜索をしたのかクタクタのようで、店にたむろをしている。店の夫婦も目が真っ赤で全く元気がない。[さあみんな、店の周りを探していくよ、3歳だから遠くに行っていないので近場を丁寧にまわるように。私は遠くからまわるので、ター坊達は近くからいいね。]ワンワンワン。犬も気合が入っているようだ。近所の家の庭まで入ったり、聞き込みもしたが手がかりがない。ター坊とよっちゃんがおヨシの店で休憩をしている。[お蕎麦屋さんの娘がいなくなっちゃったのね。]看板猫がやってきたので、よっちゃんが遊んでいる。[そうだジョー。3歳だから近くにいるジョー]ネコの毛はエンジの僧衣の模様をしている。[あ~あ~そうだ、あそこの娘はこの猫が大好きでしょっちゅう遊びに来ているの、ネコ寺は近いからそこかもね。][そうだそうだ、山門の中だから行っていなかった。行ってみるよ。][そうだジョー。]

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ワンワンワン、ゴン太がOKサインを出している。おヨシも一緒についてきた。ネコ寺に近づくとゴン太とユリの態度が変わった。お堂の周りをグルグル回っていたが、急に2匹とも縁の下に入っていった。しばらくするとワンワンワンとゴン太とユリの声、[あれいるのかな。]ター坊とよっちゃんはもぐり込んでいった。真ん中あたりでたくさんのネコ達に囲まれて、女の子が元気に遊んでいた。[いたジョー。]娘を連れて縁の下から出てきた。[あっおねえちゃん。][元気でよかった、おうちへかえろうね。]蕎麦屋の近くまで来ると、ダイとウメがすぐに飛んできた。ワンワンワン合図を送っているとタエが走り出てきた。[よかった~みんなお手柄よ。]夫婦もしっかりと子供を抱いている。警察はあっけにとられたが無事で安堵するとともに、子供と駄犬に負けた悔しさがにじみ出ていた。[さ~さ~、おそばはなんでもサービスしますよ、ワンちゃんには豚肉と鶏肉を茹でます。]

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[ぼくは天ぷらそばでエビを3匹載せにしてくれますか。]とター坊。他の子供もそれに倣った。王室の会社を管理している部署から、首都のきゃら駅南面の福丸デパートの売り上げが、伸び悩んでいるいるとの知らせが入ってきた。志野も骨董の販売を手伝っていた、思い入れのある所である。[どうかな、ああす一緒に行ってみるか、どうも売り上げが止まっちゃっているようだ][久しぶりですが、私も行きます。]普通の格好でゴン太とユリを連れて行った。トランプ大統領並みの車で目立つので入口の50m前で降りて、護衛にも距離を置くように申しつけた。一般客のように入っていくと、すぐに警護のものが出てきて[お客様すみませんが、店内には盲導犬以外の出入りが禁止になっています。][ご苦労様、首輪を見てください。]王宮警察の文字入り首輪をはめている犬はどこでも出入りが自由である。[あっ、これは失礼をいたしました。]すぐに合図を案内に送った。



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1階を歩いていると社長以下がゾロゾロとやってきた。[これはこれは、いらっしゃいませ。社長の田中と申します。][店長の渡と申します。][ゆっくり家内と見学をした後で事務所に伺います。それから屋上のホールも見ますんで、だんどりをしてくれるかな。皆さん元に戻られて結構です。][志野さんどうしたものかね。][そうですね、インパクトの強い全体的な目玉入れたほうがいいですね。たとえば超能力を活かしてその場でできるドレスや洋服にバッグやクツを作れる店が入っていると、評判がすごいと思います。][そのためには、優れたデザイナーや職人を作らないとな。グループ会社は多いので関係会社はすべてそろうね、その中から能力が高くて人柄がよいのを選び出して、超能力を与えればいいかな。][それから王宮の裏山の大本山には訓練を受けて、占いや人生相談に応じられる超能力を持ったお坊さんがたくさんいます。便利な場所と手軽な料金だったら人気になります。]

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[55階建てでスペースはたっぷりですので入れたらどうですか。元国王代理の老師に相談すれば手配をしてくれると思いますよ。][それはいいね、その方面では世界一だからな。]いろいろと各階を見ながら屋上のコンサートホールに来てしまった。中では週末のコンサートに備えて、ちょうどオーケストラとピアノ奏者が音合わせをしていた。指揮者がすぐに飛んできて挨拶をした。[ラフマニノフピアノ協奏曲の第2番かな。]王様は志野に耳打ちをした。[え~ほんとにやるんですか~ま~せっかくですからやっちゃいますか。]指揮者は一瞬驚いたが王様の座興だろうと思って団員に協力をするように言った。なんと志野がピアノを弾き、王様がタクトを振るというのである。団員も面白がってやってみることになった。志野と王様が席についておもむろに始まったが、本職のピアノのソリストと指揮者よりはるかというか桁違いにうまい、それに団員の能力もいつのまにかものすごく上がっている。

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指揮者にピアノソリストもうっとりとしている。15分程の区切りのいいところでストップをかけた。[いや~これはなんですか、世界のトップレベルの演奏ですよ。]団員もあっけにとられている。[どう、おもしろかったかな。驚くかもしれないけどベートーベンを復活させて、交響曲第10番を演奏する。それと私も曲を作るとともに、指揮もする。面白くなるから期待しててな。結局この交響楽団のオーナーも王室関係で最終的に王様であるから、どうにでもなってしまうのである。事務室に行き社長以下に今後ちょくちょくかかわってくる旨を伝えた。次の訪問先は音楽大学である。ピアノとヴァイオリンのソリストを見つけるためである。あらかじめ学校推薦の2名とこちらが選んだ2名の合計4名を呼んである。志野にはまだ知らせていないが、超能力のあるゴン太とユリにも一緒に審査をさせることになっている。]この学校のオーナーはもちろん王室関係である。

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[いらっしゃいませ、お待ちしておりました。][お手数ですが、すぐに会わせていただけますか。][こちらの推薦がピアノとヴァイオリン1名+1名で皇室推薦も同じ割合です。こちらにどうぞ。][集まっていただいてありがとうございます。早速ですがピアノからお願いします。]すぐに学校推薦から始められた。そして1分後にワンそれにワン、ゴン太とユリの声である。[はいわかりました、次のピアノの方どうぞ。]ワン、ワン、[それではヴァイオリンの方どうぞ。]2名ともワンとワンである。[今日はどうもありがとうございました。結果は先生にお伝えいたします。]素早く大学を後にした。全然ダメで犬たちも失格にしている。高校でも全くダメで最後に大学付属中学校に行った。事前調査では学校推薦はダメだが王室推薦の3名は有望と出ている [今日はどうもありがとう、結果はわかりませんが参加賞として王宮のコックが作ったクッキーの詰め合わせを差し上げます。先生方にも同じです。]



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[どうぞ気軽に演奏してくださいね。まず学校推薦の2名どうぞ。]やっぱりワンとワンである。[それでは王宮推薦の3名どうぞ、軽く楽しむ感じでいいですよ。]ピアノから始まった。すぐに王様と志野がうなずきあった。ワンワンワンが2連発、犬たちも合格マークである。ヴァイオリンの娘も合格マークで、最後に着ているものは清潔だがヨレヨレでヴァイオリンも年代物を使っていて、まだ1年生の娘の演奏である。すぐにものが違うという感じが分かった。ワンワンワンワン、4連発を2回、[そのヴァイオリンはずいぶん古いものですが誰が使っていたのかな?][はい、お母さんのお母さん、おばあちゃんのものです。][審査は終わりました。結果は先生にお知らせいたします。参加賞のクッキーを持って行ってくださいよ。][それでは先生、担当者を明日にでもこさせますんでよろしくお願いします。]次はドッグセンターに向かった。

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ここ、きゃら市の郊外にあるドッグセンターは王室の経営で狩猟犬や牧羊犬・護畜犬それに介助やヒーリング犬の品種改良をしているところである。[こんにちはどれが一番の人気かな。][どうもいらっしゃいませ。久しぶりですね。やっぱり狩猟犬は王宮で飼われている番犬のDOGOMixですかね、牧羊犬はこちらにいる種類とクロアチアンシェパードドックの小形ですばしっこいタイプの組み合わせが多いですね。オオカミがいないのでクロアチアンだけでも用は足りますが番犬にもなるALABYMixも人気ですよ。][ゴンちゃんにユリ、よかったね。][介助犬っていうのは明日香王国の場合、ほとんど必要がないのでまだわからないですね。というのは超能力医療で介助はあんまり必要ないのです。ほとんどが治ってしまうのです。そのかわり現次元に接続できたら、他の国で人気になるでしょうね。なんといっても言葉を理解できるのが強みです。]

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[一番頭がいいといわれているボーダーコリーで1,000語が理解できるとされているので、3,000語程度が理解できれば面白いね。その上に小学校低学年と高学年を分けるととても興味深くなると思うな。狩猟犬は噛みつき事故が多いので子供と老人にとくにかまないようにし、他の人間にも大けがをさせる前にやめることをしつけなければね。][そうですよ、そんな感じがいいです。][また来ます。じゃあよろしく。]審査の最後にヴァイオリンで合格した。中学1年生の娘と母親に祖母が王宮に来ている。[よくいらっしゃいました、家内の志野といつも一緒にいる2匹です。子供さんは我々の審査で合格しましたので、全面的にバックアップいたします。失礼ですがお祖母様も演奏をされていたのですか?][はい、明日香交響楽団で演奏をしていました。私と娘の主人は早くに亡くなりましたので、孫には苦労を掛けています。]

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[これからは心配いりませんよ、学費はすべて無料です。学校に来ていく服に学用品代もこちらで負担します。すぐにソリストとして活躍できるように引き上げます。もちろんドレスに他の衣装もすべて揃えますよ。ですからまもなくギャラも受け取ることができるようになります。][え~っ、少し引いただけで素質が分かるのですか?]ワンワンワン、ゴン太がまたOKサインを出している。[はっはっは、この犬も太鼓判と言っていますよ。ここに私が作ったヴァイオリンがあります。彼女、ちょっと弾いて見てくれるかな何でも好きなものをやってみて。]弦を調整しておもむろに弾き始めた。祖母[すごい楽器です。普通じゃありませんよ、これはソリストのものです。それもストラディバリウスの黄金期のものを超えているかもしれません。][そうおっしゃっていただくと面はゆいのですが、まさにそのとおりだと思います。これをレンタルというか自由に使ってください。]



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[弾きつぶしちゃっても構いません。しまっておかないで、毎日使ってください。もし何らかのことで破損しても心配することはありません、いささか超能力を持っていますので元に戻すことができます。学校にもたまにに伺いますのでよろしく、これは持って行ってください。職人長屋の北斎とお栄の部屋の隣に猿回しの一行が入居している。夫婦とつがいの猿と子供の4匹である。今日はいつもの3人組におヨシ、辰五郎にゴン太にユリそれにダイとウメも揃っている。辰五郎は娘の責任で連れてきた一行を気にしているのである。お栄[まあ、皆さんお揃いでこちらは源蔵さんに杉さんあとは4歳と1歳のお猿さんです。]猿が4匹横一列に並んでペコリとお辞儀をした。辰五郎[こりゃあいいやどこでやっても人気者になるな。タエが江戸から誰かを連れてくることを王様は知っているので、いろいろと協力してくれると思う。]

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[門前町のシマ内だったらどこでもいいし、希望なら芸能プロダクションも紹介するよ。まあ、シマ内でやってくれればこの地域に活気が出るし、人も呼べる。]おヨシ[ネコ寺は動物好きが集まって、お賽銭は多いしおみくじもよく売れるの、そこに人気者のお猿さんが加わればますます人気になると思うわ。パフォーマンスをうまく分業すれば相乗効果でお互いにメリットが大きいわね。]北斎[そりゃあいいや、ヨシ坊頭がさえているね。][まあ、まだ来たばかりですので当座の金子はこちらで用意しますんでゆっくりしてください。]いつの間に子ザルがゴン太の背中に乗ってはしゃいでいる。どうやら犬猿の仲の心配は無いようである。辰五郎[あそこの猫は毎日和尚さんと一緒に勤行をしているうちに、少しの霊力が付いているので猿をいきなり連れて行っても、うまくいくと思うよ。裏山の大日山観世音寺は元国王代理の老師が責任者ですので、考えがまとまりましたら私に知らせてください。]

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[こんにちは、あんみつをお届けに上がりました。][そこいらに置いて、あとはかってにやるから、まあ、皆さん召し上がってください。][うわぁ~い、おいしそうだジョー。][ほんとうに王様、ベートーベンが復活するのですか?][2,3日したら来るよ。住居は職人長屋というわけにいかないので、洋館を準備してある。私が明日香交響楽団で暮れの28日に演奏の指揮をするが、曲目はベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲と第9番。今の指揮者には小品集をしょっぱなにやってもらいます。中学生の娘はもう曲合わせをしていて、みんながべた褒めしているようだ。][やはり才能があるんですね。私は当日の衣装が間に合うように手伝いますわ。][ありがとう、ベートーヴェンは耳が治って正常なので楽団の練習を見てもらうことにした。娘と楽器には目を見張ると思うが指揮者と楽団員にはショックを受けがっかりするけども、私がをしたら楽団員の能力が数倍になるのでまたまたびっくりするでしょうね。]

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[ヴァイオリン協奏曲と第9は本人が聞いた中で最高のものになるはずだ。][まあ、楽しみですね。]辰五郎の家でいつもの3人組におヨシそれに辰五郎と犬2匹が額を寄せ合っている。[もう12月(師走)に入っちゃった。正月は初詣でもともと忙しいんだけどクリスマスはここが江戸風だからなのか全く人気がない、そこで人寄せのいいアイデアがあったら子供会から町内会に挙げてみようと思うの。なんかあるかな?][ぼくは料理の大会なんかいいと思うな。][子供料理大会だジョー。][自分が食べることだけ考えないで、町を盛り上げる大会でクリスマスがポイントだからね。私にいい考えがあるの、王様の犬をはじめにここの犬や近場の犬のオーナーに協力をしてもらって100匹ぐらい集めるの。その犬に紙で作った角を取り付けてトナカイに見立てその行進の後ろに軽トラ2台にプレゼント用のお菓子を乗せるの、親サルとおじさんにおばさんの猿回しは荷台の上に乗ります。]



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[子ザルはサンタクロースの衣装を着せてゴン太とユリの背中の上に乗っかるようにして、

先頭は門前小学校の鼓笛隊でクリスマスソングを流し続ける。][こりゃいいや~。]と辰五郎、[ボクもいいと思うジョー。]ワンワンワン、ダイとウメも賛成している。[問題は経費をどこが出すかだな、町内会は正月が近いんでいい顔をしないだろ。でも町内会と言ったらみんな雇われ社長でオーナーは王様だ。王様がやるといえばやるさ。][じゃあ私、これを説明していいアイデアがないか聞いてくるわ。ター坊とよっちゃん行くわよ。おヨシも来る?]王宮にいつもの子供達が来ている。王様に志野も加わって聞いている。タエが説明を終えると[タエちゃんよく考えついたな面白そうだが、これを成功させて毎年の行事にしよう。お金の出どころだけど福丸デパートに協力させようと思う。3時30分から5時までデパートの周りをまわるとともに、駅側の入り口前の広場で犬と鼓笛隊の演奏を続ける。]

198

[この時はお菓子と軽トラは必要ないな。ポイントは犬に紙の角をつけてトナカイに見立て、小学生の鼓笛隊がクリスマスソングを演奏することだな。それでよかったらすぐにデパートと話をしてくるよ。あとはお父さんに学校と軽トラの手配を頼むんだな。門前駅5時過ぎに一隊をそろえて山門入り口の広場まで1㎞半ぐらいをパレード。そんなところかな。][それですみませんが、内諾をいただいてから父に伝えて話を進めようと思いますが、いかがでしょうか。][いいよ、今から行ってくるので今日中に連絡できる。][ありがとうございます。]ゴン太はワンワンワンワン4回返事の合格である。辰五郎とタエの父娘は前日に王様から連絡を受けて詳細の打ち合わせのために福丸デパートに行ってきた。基本的には賛助金が出るようになったのであとは学校に行って、鼓笛隊と工作でトナカイの角ができないか頼んでみようと思っている。

199

一番の問題は100匹の参加してくれる犬をオーナーにお願いして集められるかである。[ター坊とよっちゃんは犬を飼っているところに行って頼んできてくれる。][説明するのに長くなっちゃうんで、チラシが必要だジョー。獰猛な犬だったら怖いジョー。][チラシはすぐ作るわ、獰猛でもなんでも集めるのよ。]福丸デパートのコンサートホールで本番に備えた練習をしている。王様と志野に2匹の犬そしてベートーヴェンベートーヴェンは昔の貴族のようなスタイルではなくもちろん現代風であるから、一般の人には当然に誰だかわからない。小品集の演目終わった後なので、予想どおりに暗い雰囲気になっている。[ちょっとこれはひどすぎますね。最低のレベルです。][まあまあ、この後の協奏曲と第9は私が指揮をしますので期待をしてください。]まだ半信半疑な顔をしている。[さあ始めますよ。彼女も用意をしてください。]

200

王様が台に上がりすぐに始まった。2・3分もしたら表情がすぐに変わってうっとりとしてうなずいている。彼女のソリストとしての技量に感心し目を見張っている。当然に使用された楽器についても驚いている。[これは素晴らしい演奏です。急に楽団員のレベルが上がりました。こんなことってあるのですか?]続いて第9も最高の出来で終了した。[ブラボーです、王様、最高ですよ。]やっと20匹のメドがついたが目標にはまだまだである。[ター坊、職人町の子供達を集めてきて。][ボクはあそこは苦手だな、それよりも回覧板でお願いしたほうがいいんじゃないかな。近くの町内会いっぱいに回せば少しはあると思うよ。]トナカイの紙の角は学校の協力ですでに50個できている。[それじゃあ、ダイとウメにツノを着けて見よう。ダイとウメ来なさい。]2匹は尾を振りながらやってきた。紐を結んでツノを着けてみた。[なかなかいい感じだジョー。][2匹とも歩いてみなさい。][合格だな]

201
[大丈夫だジョー。]いきなり王様がやってきた。[どうだうまく進んでいるかな。][ゴンちゃんこっちに来なさい。]ツノをゴン太にも着けてみた[いいじゃないか、この上に子ザルのサンタが乗るのかな。][リーダー犬ですからそうなります。]

[犬は100匹揃ったのかな。][それがまだ20匹です。でもこれから回覧板でお願いしようと思っています。][犬が集まらなくても心配はいらないよ。ドッグセンターにいっぱいいるから、そこも私の会社だから何とかなるよ。][あ~よかった、でももう少し自分達で頑張ってみます。よっちゃん、お菓子の詰め合わせのサンプルできた?][まだだけど明日もお菓子屋さんに行ってくるジョー。]

そこに辰五郎がやってきた。[これはこれは王様いらっしゃいませ。][たいへんそうだけどなんとかなりそうだな。相談事があったらいつでも来なさい。][へい、お気遣いをいただきましてありがとうございます。]
202
結局回覧板が効いたのか、地域で盛り上げようとする雰囲気になり100匹オーバーの105匹になって、ドッグセンターは必要なくなってしまった。軽トラも商店街からボランティアで2台が出ることになった。

あとはよっちゃんのお菓子の詰め合わせセットである。[親分、お菓子のセットができました。門前小学校は40人×4×6=960個が必要それに小さい子の分を入れると1,300袋は必要だわね。][ひぇ~そんなにいらないジョー。][そんなことでケチケチしちゃあ駄目よ、あとはサンタの衣装を子供4人・大人2人・サル大2・小2をクリーニング屋のおばさんが作ってくれるので安上がりにできる。これでお父さんの許可を取ったらだいたいがOKかなそれと警察の許可かな。]

王宮にヴァイオリン一家の3人が来ている。祖母[なにかからなにまでありがとうございます。娘も学校に来ていく服が増えて明るくなっています。]
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[実はまだ非公開ですが、ベートーヴェンが復活していまして先日に楽団のリハーサルに来ていました。娘さんの才能に驚かれていましたよ。謙虚に努力を惜しまず精進をしていけば一流どころになれると思います。

この犬はゴン太と申しまして超能力があります。娘さんの審査ですぐにワンワンワンワンと4回続けて吠えました。普通は3回で合格ですがそれ以上のスペシャルだという判定です。技能と心がけが認められたのだと思います。]

[まあ、私ども3人が思うことはこのワンちゃんは特別な存在だということです。何か仏様が付いているようですがいかがでしょう?][さぁ~どうですか、前の国王代理の老師はこの裏山の大本山観世音寺の住職をしていますが観世音教の副門主で私が法王で門主です。ですから観世音菩薩と関係があるかもしれません。][まあ、これはこれは、どんなに貧しくとも私どもは毎朝観世音菩薩の真言を心を込めて唱えております。なんか偶然の一致とも思えませんね。]
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深々と礼をして帰っていった。辰五郎の家にいつもの子供たちに猿回しの一行が加わっている。サンタクロースの衣装ができたので試着である。おヨシとタエは素早く着替え鏡を見ながらにこにこしている。猿回しの夫婦は照れ笑いを浮かべている。

少し大きいのがター坊とよっちゃん、[これ少し大きいな、ブカブカだジョー。][何言ってんのそのくらい腕を折って裾をまくればいいでしょ、あと2,3回は着なければいけないのよ。][彼女が見たら恥ずかしいジョー。][ダイにウメ、噛みついてやりなさい。]いたずらで吠えてきた、ワンワンワン。

猿の4匹はおもしろがってキャッキャッしている。当日、ゴン太とユリに子ザルが乗り、一台目の荷台にター坊とよっちゃんが乗り菓子配りをし、2台目に猿2匹と猿回しのおばさんにおヨシが乗る。タエは犬の一団の前に2匹のリーダー犬であるゴン太とユリのそばで、猿回しのおじさんと一緒にいることに決まっている。
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ダイとウメは王宮警察の首輪をしているのでリードなしでタエの列に加わる。福丸デパートの方で犬のトナカイ100匹と猿サンタクロース鼓笛隊行進を宣伝していると思うけど、こちら側も宣伝をしなければならない。

[そうだ、北斎先生にポスターをお願いしよう。おヨシちゃんは観光協会、ター坊とよっちゃんは市の観光課に行って、イベントを知らせてくるの。][え~お役所は怖くて嫌いだジョー。][ごちゃごちゃ言わないで早くして。]

今日は28日のコンサートについてのテレビ局や新聞社などのマスコミ取材である。王様が指揮をすることとベートーヴェンが復活して指導をしていることに加えて第10シンフォニーの演奏の準備をしていることと、注目の新人ヴァイオリンソリストのことなど目玉がいっぱいあるので、大がかりな取材になるようだ。ソリストの娘が取材を受けている。家が貧しく極貧の生活をしていたが、音楽の道をあきらめずにいたら王様の目に留まり続けられたこと。
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王様手作りの逸品のヴァイオリンを使用できることになり、とても心強いパートナーでスムーズに演奏でき喜んでいることを述べた。続いてベートーヴェンに王様が取材を受けたが、とにかく協奏曲を聴かせてくれということになり準備をすることになった。

ソリストの娘はだいぶ慣れてきて自信も出てきたようだ。演奏が始まった。レベルアップをした楽団員に見事な指揮ぶりの王様と絶妙なソリストに取材陣も圧倒されている。演奏が終わると拍手の嵐である。

[これはすごいですね。テレビ放映で話を進めてみます。]お菓子1,300袋が段ボール箱で届いた。[これ、もうもらっていいかな。みんなあげちゃったら自分のものがなくなっちゃうでしょう。]ター坊は早くも確保にかかった。[そうだジョー、自分のものは大切だジョー。][今渡したらクリスマスまでに食べちゃうでしょう、クリスマスの日に渡すわ。][心配だジョー。]
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[そんなことより北斎先生のポスターができたので早く貼ってきて、たくさんあるから早くいきなさい。]3人の子供達は分担してポスター貼りに出動した。

職人町の以前に果し合いで負けた乱暴者がこんどはドーベルマンを連れてタエのところにやってきた。ダイと決闘だという。ガタイはドーベルマンの方が多少大きいような感じもするが大差はない。ター坊とよっちゃんはドーベルマンが獰猛なのを知っており、今度はやめたほうがいいと言っている。

まともにやったら厳しいことをタエもわかっている。3人で知恵を出しても、いい考えが浮かばない。[そうだ王様ならダイの親を飼っていて狩猟にもいっている。いい考えがあるかもしれないわ。]3人組は犬2匹を連れて王宮にやってきた。[ほう、また決闘か相手が同じ年齢で体格も同程度か・・。][すみません、何かいい作戦がありますでしょうか?]栗羊羹とジュースをもって志野が入ってきた。[どうぞ食べてください。]
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志野も番犬のDOGOMixが200kgの猪を嚙み殺すのを知っている。[ドーベルマンはパワーも持久力もあるけれど、狩猟犬でないのがポイントですかね。][そうだなそこいらへんだ。最初は押し込まれていても狩猟犬の本能で粘り強く戦う、だから長期戦になるけど最後は勝つということだから、心配ないよ。だから負けていてもギブアップしないでダイを信じることだ。]

ダイがうなずいて聞いている。[ダイちゃん大丈夫なの。]ワンワンワン。ウメもうなずいている。[王様、大丈夫なようですね。][羊羹おいしいジョー。]いつもの空き地にドーベルマン2匹とこちらは3人と2匹であるが対マンであるから1対1の戦いである。

[や~いそんな弱っちい犬、ドーベルマンがかみ殺しちゃうぞ。]相棒もニヤニヤ笑っている。ター坊とよっちゃんは青ざめて震えている。[ふん、そんな狩猟犬にも成れない馬鹿イヌなんか簡単にやっけてやるわ、この犬は200kgの猪も噛み殺すのよ逃げるなら早くしな。]
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相手2人は顔を見合わせている。一瞬ヤバイなという気持ちが顔を横切った[え~いごちゃごちゃ言うな、行くぞ。]2匹は正面からぶつかり合ったがなかなか両方とも先手が取れない。

激しいぶつかり合いが続いていたが、一瞬のスキをつかれてダイが耳を噛まれてしまった。それでも粘り強くスキをうかがっている。出血がひどくなり、ター坊とよっちゃんはもうやめようと言っている。

[や~い、やっぱり弱っぴ~な、耳がとれちゃうぞ。]タエはグッと奥歯をかみしめてダイの反撃を待った。ウメも悲壮な表情でにらみつけている。耳を噛まれながら左右に振られて苦しそうである。出血はますますひどくなり顔半分は真っ赤である。

タエもこれまでかと思ったとき一瞬のチャンスで離れ、喉元に噛みつくことができた。ここは急所である。判断が遅れれば死んでしまう。[どうするの、殺す気。][わ、わかったよ負けたから離せ。][ダイちゃん離れなさい。]乱暴者はすごすごと帰っていった。
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[親分耳を手当てしないとヤバイです。][そうだジョー。][普通だったらペット病院で縫ってもらうけど王様も気にかけていると思うから超能力で治してもらおう。]

[ほ~はでにやったな、よし治してやろう。]手をかざして、グッと声を発して[治ったぞ、ダイよく頑張ったな。]ワンワンワン、ダイもウメも得意げで満足そうである。

福丸デパートの広報から連絡がありクリスマスイベントでの犬のトナカイ行進が人気になっており、かなりの人出が予想されるので大型バスを鼓笛隊用に2台・犬隊用に3台を用意するとのことだ。超能力を使って簡単に移動をしてしまおうと思ったが、万が一を考えたらその方がいい。

地元の商店街も人気になることを当て込んで、クリスマスセールに力を入れているようだ。パレードは2班に分かれており、2班目の軽トラ2台とター坊とよっちゃんにおヨシと親ざる2匹と猿回しのおばさんは門前駅前で待機である。

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さていよいよ当日である、[あんたたち用意に抜かりはないよね。][大丈夫だジョー。]お天気は快晴である。タエは1班であるので4匹の犬と猿回しのおじさんと2匹の子猿とともに乗り込んだ。子猿はゴン太とユリと一緒なので他の犬からのちょっかいが無しである。3台のバスは予定の犬と引率者を乗せて福丸デパートに着いた。

すでに鼓笛隊の面々は到着していて準備ができているようだ。駅側の福丸デパート北口広場に集まり、犬は紙のトナカイのツノを着けている。ゴン太など4匹も漬け終わったが早くも子ザルがゴン太とユリの背中に乗って遊んでいる。

[皆さんいよいよ始まります。予定の列に並んでください。]タエは自分も列に入ったが、鼓笛隊もOKのようだ。先導は鼓笛隊である。[それでは出発です~はじめ~~。]音楽が鳴り、福丸デパートを左回り行進である。敷地はかなり広いのでゆっくり行けばかなりの時間を費やす。
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サンタ姿の2匹の小猿を乗せてゴン太にユリ、それにダイとウメが犬隊の先導をしているが報道関係も多数出ていて賑やかである。やっぱりクリスマスにはジングルベルの音楽があっている。それに100匹以上の紙のツノを着けた犬のトナカイである。子供連れの家族や女性たちに大受けのようだ。

露天商も人出が多く、てんてこまいで威勢のいい掛け声が飛び交っている。犬のオーナーもみんなに注目されて、自慢げに歩いている。これは年末の恒例行事になりそうで企画者に主催者が注目されることになりそうで、取り仕切る新門一家としても鼻高々である。鼓笛隊の親たちも晴れ姿に喜んでいる。

いい感じで進んでいるようだ、とその時、鎖が外れた大きな秋田犬が飛び出してきて犬隊に吠え出した。すかさずダイとウメが応戦するが紙のツノを着けているので締まりがない。このままでは危険なので、責任者のタエはどうしたものかと困っていた。


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周囲も人だかりで注目されている。このシマ内を仕切っている飯岡助五郎が子分を連れてやってきたが、獰猛な秋田犬で手が出せない。これはお手上げ状態かなと思ったが急にバタッと秋田犬が倒れた。

王様と警護のサスケとすずが来ていて、サスケが合気武道の気を送り倒したのである。サスケは武道の達人である。[タエ、心配ないぞ続けなさい。][はい、王様ありがとうございます。]飯岡助五郎がやってきた。[王様、みっともないところをお見せしまして、申し訳もございません。][いいや、いろんなことがあるもんだ。犬は警察に引き渡し関節が外れているだけで、入れれば元に戻ると伝えなさい。][へい、承知しました。]

王様の見事な対応に拍手が起こった。ジングルベルの音楽に引き寄せられて、観衆がますます増えてきた福丸デパートの社長以下役員一同も充分に満足のようである。[これはこれは王様いらしていたのですか。]
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[どうだクリスマスセールは好調かな?][はい、おかげさまでお客様の来店が多く順調です。28日のコンサートもチケットが完売でたいへん助かっています。][犬のトナカイは好評なので毎年やったらどうかな。][はい、他の役員もそのように思っております。]

福丸デパートの行進は大盛況で終了し、いよいよ門前駅前から第2班と合流してスタートである。[寒いから早くやるジョー。][あんたたち、お菓子はどんどんと配りなさい。残して自分で持って帰るなんて思っていたら承知しないよ。][ボクお腹がすいちゃったんで少し食べていいかな。][ボクもだジョー。][サンタの衣装を着て食べていたら、みっともないでしょう。]頭をポコポコと殴られた。

[はい、それではスタートします。鼓笛隊は始めてください。][ピッピッピー。]ジングルベルの音楽がなりだした。1,300袋のお菓子を配るのは大変である。2匹の親ざるは面白がって配っているが、子供たちに人気である。
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ター坊とよっちゃんも大忙しである。今回の隊列はお菓子を配るために行進の途中でも、たびたび停止しなくてはならないのでなかなか苦労をしているようである、15m進んで止まる感じである。行進中に配るのは危険が伴うのでやめている。

近所の子供たちがみんな出てきているのか大賑わいである。門前町駅から江戸歴史地区になるので街並みを江戸風にし住民も着物を着ている。ここらへんの一番大きな店は四越呉服店だがなかなか主人が商売熱心で、今日も1日限定の福袋が人気を呼んでいる。[はい止めて~、お菓子を配ってください。]年末は酔っ払いが多いので注意をしていたが、ター坊のところでトラブルがあったようだ。

[こら小僧、俺にもよこせ。]ガタイのいい労務者風の5人連れが騒いでいる。[ダメだジョー、これは子供用だジョー。][うるせ~こわっぱ。]と頭をボコンと一発殴られた。5人組は3袋ずつ手にして持っていこうとしたが、新門の若い衆2人が飛んできた。
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[困りますよ、元に戻してください。]といったとたん5人組に蹴とばされ殴られている。何しろ大柄で体力自慢の奴らである。かわいそうなぐらいにボコボコにされている。

タエも心配してやってきた。[ちょっとおじさん達何やってんの、ここは新門のシマ内だたいへんなことになるよ。][なんだ小娘が、お母ちゃんのオッパイでもしゃぶってろ。]とげんこつを振り上げた瞬間[よさねえか。

]2人連れである。労務者は5人組なので数量的に絶対優位と思いなめきっていたが、2人組は5人組に戦いを挑み逆にコテンパンにのしてしまった。強いのなんのケンカのプロである。新門の若い衆が紐で縛り上げている、おそらく事務所でヤキを入れるのであろう。よっちゃんはうずくまっていたが、どうやら持ち直したようだ。

[あっ、国定のおじさんに朝太郎さん。][へぇ、タエおじょうさんしばらくぶりです。][忠治か、ありがとうよ。後で親分の家に来てくんな、おれが取りなしてやるわかったな。]


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[へぃありがとうございます。]若頭の大前田英五郎は国定忠治の肩をポンと一つ叩いて行ってしまった。忠治と朝太郎は暴力沙汰でたびたび問題を起こし出入りを禁じられていたのである。

一行は進みだして大通りを渡り、いよいよ参道に入ってきた。本日のクライマックスである。お菓子はだいぶ減ってきたがまだある。一行を待っていた子供達もたくさんいるので、今まで以上の人だかりである。

うわさを聞きつけてきゃら市の市長がやってきてしきりに頷ずいて、[辰五郎親方の娘さんよくやっているな、たいしたもんだぞ。][へい、ありがとうございます。][部下と担当部署にも相談しないといけないが、きゃら市としても後援をして毎年の恒例行事にしたいがどうだろうか。]

[へい、ありがたい話ですが、なにぶんほとんどは娘がやっていますんで何とも言えませんが、毎年の行事にするというのは賛成だと思います。]
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[まあ、終わってゆっくりしたら、娘さんと話し合いの場を設定してくれるかな。][へぃ、よくわかりました。]職人町の子供たちが大勢でター坊の軽トラにやってきた。ドーベルマンも2匹連れている。[なんだ、なんだジョー。]と身構えるター坊とよっちゃん。

[お前らのこの前の犬、調べたらDOGOと四国犬のMixだけどDOGOというのは対マンでピューマに勝っちゃうそうだな、それにゴルドバ犬という死ぬまで戦う犬の血が入っている。それに賢く猪猟に最適な四国犬の血がMixしていれば手ごわいわけだ。それとDOGOそのものは平均45kgだけれどMixはパワーアップして50kgになり、王宮のDOGOMixの番犬は200kgの猪をかみ殺したようだな。ドーベルマンとの戦いはいい試合だった。それを伝えにきただけさ、みんなにお菓子をやってくれ。]

いよいよラストの山門広場まで100mになった。ター坊とよっちゃんは、[お菓子はもうすぐなくなるよ、早くとりに来て。]
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と叫んでいる。鼓笛隊ももうすぐ終了なので力強くなってきた。沿道の建物の2階から紙吹雪が舞っている。ついに山門広場に到着した。鼓笛隊はそこで反対向きになり5分間演奏することになっている。

その間にタエがマイクで[犬トナカイの参加の皆様、おかげで大成功です。来年もまたご参加をどうぞよろしくお願いします。良いお年をお迎えください。どうもありがとうございました。]と述べると、やんやの拍手喝采である。

[鼓笛隊の皆さん、自分の分を持って行って~、ちゃんと用意してあるジョー。][さぁ~みんな帰るよ、ケーキが用意してあるからね~。猿回しのおじさんには日当を用意してありますし、お猿さんにもバナナとリンゴが用意されています。それと2人分のケーキも切りますんで持って行ってください。][タエちゃんありがとうね、とにかくサンタの衣装を脱がなくちゃあ。]猿4匹の衣装も全部脱がした。
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辰五郎の前で国定忠治と朝太郎、それに若頭の大前田英五郎もかしこまっている。

[忠治に朝太郎、タエの助太刀をありがとな英五郎のとりなしなので今回は許すが、もう少し抑えることもしなけりゃあいけねえ、それで2人の仕事だが大事な依頼を王様から受けているのを任せようと思う。王様の警備会社に幹部候補生として入って1・2年修行して仕事を覚えろ。新門の仕事としてこれから警備もやることにした。きちっと仕事を覚えれば全面的に会社の主導的立場になる。おまえらがダメならそれでお終いだ、どうだできるか。]

[へぃ、警備なら自信があります。朝太郎と2人、命を懸けて頑張ります。決して親分の顔をつぶすようなことは致しません。][よし決まった。詳しいことは後で英五郎から聞くように。]子供4人と犬4匹がケーキを食べている。[あっおヨシちゃん、私たちのお菓子を取っておくのを忘れた。][そ~ね、人にあげるのに忙しくて自分のことを忘れていたわ。]