天啓の雲

草競馬の馬券師から年収900兆円の世界一の長者へ。痛快無比勝ち組の物語 古寂湧水 こじゃく ゆうすい

主人公が陶芸家で仏教派閥の門主という設定ですがロスチャイル〇やロックフェラ〇を叩きのめし世界一の長者まで上り詰めました。またアフガンやシリアを転宗させて解決をするなどノーベル賞や英国最高のガーター勲章や仏国のレジオンドヌール勲章を受勲しました。茶道の千利休小堀遠州も出てきて楽しませてくれます。まあ、利休は秀吉に尿瓶をルソン壺の茶壷として売ったのが発覚して殺されたことになっていますけれどね。見どころはK国に盗まれた仏像の奪還に露死阿の大統領公邸に桐野利秋村田新八の薩摩軍に新選組それに新門辰五郎清水次郎長国定忠治の任侠連合軍が突入するところですかね。四菱重工や四菱商事にユニシロの企業買収もやっていますが、勝ち組の物語ですのでどうぞお楽しみください。でも、なんといっても最高のウリは作者の発想力ですかね。はっはっはっ。

★ほぼ毎日更新をしています★

お香屋をやっていて五年程たつが、仕入価格が三倍に値上がりになり、販売ができなくなり終了をしてしまった。次に何をやろうか思案中に、小さくて狭い一戸建ての自宅にかなり大きくても幼さが残る二歳程度の犬が迷い込んできた。

とてもパワフルで外見は怖そうだが呼んだら尾を振って近くにやって来た。私も犬好きなので、インターネットで世界の犬の種類をいろいろと見ているが、これは護畜犬のアラバイと四国犬のミックスのようである。

でも大きい、すでに60㎏はありそうな感じである。

金もないのに、こんな大飯喰らいのバカでかいのを飼えるのかな。と思ったがでも面白そうで、なんか将来にツキがあるように感じられたので試しに、ちょうど年末の有馬記念に当たったら飼ってもいいかなと思った。

当たっても外れても、連勝複式いわゆる枠連の一点勝負である。

犬を近くに呼んで、「いいか当たったらお前を飼ってやる。ハズレたらここから出て行くんだんだ。

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今は汁かけ飯しかあげられないが、ドッグフードになるかもしれんのだ。気合を入れて来そうな馬を教えろ」人気順に読み上げても全く反応がない「いいか飯だぞ、飯がかかっているんだぞ。」

5番人気キタキタテイオー武豊騎乗と8番人気オムライス安藤勝己騎乗で37倍枠連5-6で・・・ウォンウォンと尾をさかんに振ってきた。

「おまえこれ人気薄だぞいいのか」と目を見たら、強い意志で鋭い目つきをした。

「よし1点勝負で2万円買うぞ、勝ったら74万円ゲットでどうやら年を越せる。それにしてもこの犬、俺の言葉が全部わかっているようで不思議な感じだ。よっしゃ明日の日曜日に錦糸町の場外に行ってくるけど、当たったらドッグフードを買ってくるからな。」

次の日の昼頃に寒空の中、船橋駅から錦糸町駅に降り立った。相変わらず懲りない面々が、1年最後の運試しに来ている。

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1点勝負の馬券を買い、近くの喫茶店でテレビ観戦である。周囲は競馬新聞と赤ペンを持ち、自説をブツブツ独り言をはいているものが多い。

やっとメインの有馬記念の場面になった。パドックでは人気馬3頭が仕上がりが順調で、ほれぼれするような馬体と気合をみせていた。狙い目のキタキタテイオーとオムライスはどこか影が薄い感じで、安藤勝己騎乗のオムライスは逃げ馬なのに胴体が太く短足でまるでカバのような感じで、パドックを見ているファンも失笑しているのが多い。

「こんな馬最初にペケで消し」という声もしている。私は犬の強い意志を感じて買ってしまったが、不安になってしまった。

ファンファーレが鳴って各馬いっせいにスタートをした。安藤勝己のオムライスは好ダッシュを見せまさかの大逃げをかまし、1週目の向こう正面で2位とは20馬身差である。「あれ~」っという表情が多い。「あのカバ馬狂ったのか」なんていう言葉も聞こえる。

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「どっちみち、タレちゃうだろう」向こう正面で10馬身差に追い上げられ、3コーナーから

コーナーにかけて1馬身差に並ばれてきた。武のキタキタテイオーもいい感じで追い上げてくる。

「やばいな埋没かな」と思ったがその時に安藤勝己の水車ムチの連打につぐ連打、最後はブーツの踵についている星形のギザギザの拍車を使って、横腹をグリグリとひっかくと馬はたまらずに「痛て~」といって鼻先をグイッと前に出したところがゴールであり見事な鼻差勝ちである。

武のキタキタテイオーが2着になり、予想通りの37倍の配当であり74万円ゲットである。私は思わず店で万歳を三唱してしまった。

ほとんどのお客さんはハズレ馬券を空中に放り投げ頭を抱えている。私だけニタニタ笑いをかみ殺して静かに店を後にした。

両替をし現金を手にして船橋駅近くのイトーヨーカドーで犬の首輪と洋犬と和犬用のドッグフード2種類を購入した。MIX犬なので混ぜたほうがいいかなと思ったからである。

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有馬記念が終わると、正月5日の金杯まで中央競馬はお休みである。

船橋駅からバスで30分、御滝不動の近くの小さな一戸建ての借家で、ゴン太と呼び始めたセントラルアジアシェパードドッグ(通称アラバイ)と四国犬のミックス、2歳くらいで約60kgのどでかいのと暮らし始めたが餌だけやって放し飼いであるが全然問題はなかった。

糞はたぶん近くの公園でしてくると思うのだが、それに普通だったら野良犬で通報されて収容されてしまうのだがどういうわけか、それは全くなかった。

不思議な力が備わっているのかもしれない。近所の子供たちが面白がって近づいてくるが、尾を振ってとても愛想が良い。老人にも人懐っこくてかわいがられている。

Mixだが身体はほとんどアラバイの成犬に似ている(現地の本物は垂れている耳と尾っぽを切って、オオカミや闘犬で戦いしやすくしている)がこのMix犬は四国犬と同じように耳が垂れていなくて巻尾になっている。

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顔の輪郭は四国犬特有の少し長い感じになっていて、愛嬌のある親しみやすい印象である。体色は赤ゴマで胸から腹は白毛に覆われている。でもこんな特徴のある犬だから警察に届けが出ていないのか当然に気になったが、天から与えられたものと割り切って普通に飼うことにした。

この犬の半分の血であるアラバイの原産地はトルクメニスタンカフカフ地方の砂漠地帯で放牧が盛んなところである。ー20度~+40度になる砂漠地方特有の寒暖差の厳しい地方である。オオカミから羊などを護る護畜犬で、首に大きなトゲを付けた鉄の首輪を付けオオカミの対応をしている。

暮れの有馬記念で大勝ちをして、余韻冷めやらぬまま新年を迎えたがとても5日の日刊賞金杯まで待てない。ちょうど船橋競馬が3日から始まっていたのでスポーツ新聞を買ってきて、ゴン太に勝負レースを3つ選んでもらい一点買いを5,000円づつ3点である。

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全部当たれば大穴もあるので、50万円を超えることになる。よしゃ~あ勝負である。久しぶりに船橋競馬場駅に降り立ち、闘志がわいてきた。100円の入場券を買い、すぐに勝負レースがあるのでパドックに行った。

中央競馬と比べると、いかにも狭く小汚く馬も貧弱である。ゴン太の予想はみんな穴馬ばかりだから、クズ馬ばかりである。こんなもんほんとに来るのかな~と思ったが、まあ決めたことだから半信半疑でも最初の狙い目通り枠連1点勝負8Rに5,000円を投入した。

ファンファーレが鳴った。購入の馬は2頭とも中断から後方に待機していたが、3コーナーから徐々に追い上げ4コーナーではそれぞれ3馬身と4馬身差に迫っていった。

いつもはここらへんまでで一応は見せ場を作って消えていく運命なのだが今回は違った。鞍上は腕達者の桑島孝春と石崎隆行である。信じられないがクズ馬2頭の叩きあいの結果1,2着で決定したので25万円のゲットになった。

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続く9Rはこれも穴で20万円、10Rは万馬券で50万円で合計が95万円になった。うわぁ~これは大変なことになってしまった。ゴン太は普通の犬でないのがはっきりしたのだが、天からの使いかなそんな感じがしてきた。帰りに200gのステーキ用牛肉を6枚買ったが自分用には1枚で、犬用にはなんと5枚を買ってしまった。

ゴン太様さまである。自宅で茹でたのを嬉しそうにほおばり、”これからも任せてよ。”というような頼もしい表情をしている。

夢でないのかな、ほんとうなら暗い人生が逆転できる。何事もゴン太の気持ちを第一に考え、あまり浮かれすぎないようにしようと思った。

次の日の船橋競馬も50万円をゲット、5日の中央競馬金杯は50万円のゲットである。一気に金銭的に楽になってしまった。でもいくら小金を貯めても馬券師では社会的な信用がない。他の見せかけでいいから職業を持たないといけないと思い、ゴン太の顔をじ~っと見つめながら考えた。

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[船橋駅から近いところで現代と骨董陶器の小さな店舗を持ったらどうか]ということをゴン太に聞いてみた。ワンワンワンワン、力強いOKサインである。資金は競馬の掛け金を増やしたので、余裕の2,000万円をプールしている。これなら裏通りの小さな店舗だったら借りられるかも知れないと思った。

タクシーで犬を連れて不動産屋周りをしたが、なかなか適当なところがなく諦めていたらいきなりゴン太が止まるように吠えたてたので、車を降りたら先導して不動産屋の張り紙の前でまた吠えた。

ケルトンだが10坪で500万円である。

まあ、本業は競馬で見てくれだけの営業だからこんなもんでいいかと思ったので不動産屋と交渉を始めてとりあえず3日の間この物件を押さえてもらうことにした。

出身が陶芸で有名な益子なので、そこら辺のつながりを生かして陶器を仕入れあとは青空マーケットで直観勝負の骨董がらくた買いである。

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こんな構想で犬の表情を見た。益子陶器の仕入れには反対も賛成もしない態度だったが、青空マーケットのことを言ったら鳴いて尾を振ったので、目利きはゴン太に任せようと思った。

益子で5人の作家から仕入れて並べたが、ほとんど売れない。公園の青空マーケットに犬と一緒に行ってみた。大きさに驚かれていたが出品者のおばちゃんたちに頭をなでられていたが、ガラクタと思われる陶器の前で立ち止まった。

古伊万里風の壺であるが値段は3万円と記されている。どっちみ模造品だと思い躊躇をしていたが、ズボンを噛んで引いたのでこれは勝負だと思い3万円をスパット払った。

おばちゃんはえへへと御愛想笑いでかえしてきた。せっかく出張ってきたのに収穫この一点だけ、商売になるのかなと犬の顔を覗き込んだら、ワンワンワンワンの4度吠えのOKサインである。店に戻り値付けをして展示をしなければならない。

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ゴンちゃんに5万円ぐらいかと聞いたら首を横に振った。近頃、ダメなことは首を横に振りOKの時には上下に振ることを覚えた。

犬がお座りをして手で8の字を描き追加で0を2つ入れた。なんかわからんけれど8万円かと言ったら、相変わらずに首を横に振っている。すかさず80万円という夢の数字を出してみたが同様に横振りである。やけくその800万円でどうだと言ったんではなく叫んでみたら、ワンワンワン3連発のOKサインである。激しく首を上下に動かし嬉しそうに尾を振っている。

3万円が800万円になっちゃうの・・・この犬狂ったのかと薄ら笑いを浮かべ馬鹿にした態度を取ったら、いきなり腕を噛まれた。もちろん本気でなかったが、かなり痛かった。

ほんとに800万円か再度聞いたら、ワンワンワンの3連発OKサインである。高台の裏を見たら李参平の銘である。本当かなと思ったが思い切って800万円の値段をつけて表の張り紙に新入荷のお知らせを張り出した。

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普段は見るだけの陶器好き骨董好きが冷やかしで大勢がのぞきに来た。一様にこれ本物かと猜疑心の声をかけていく。李参平の本物が出たということで、うわさを聞き付けた青山の有名な骨董店の主人が来店した。

表情は厳しい感じだったが急ににっこりと眼鏡の奥が柔和になり、[いいものですね]と感嘆の声、[よく見つけなさった、なかなか出るものじゃありません私が買います]と手付金200万円を置いて行った。

うわ~ゴンちゃんは神犬なのか、おそれいった。ドッグフードも最高級のものにしなければな。もうご飯に味噌汁をかけた汁かけ飯なんてできんな。ゴン太様さまになってきた。10坪の狭い店だけども冷やかしオーケーのオープンな雰囲気で、それなりに人気が出てきた。

だけども本業はあくまで競馬なので店が留守がちになる。犬が店番をしているがもちろん売れない。だれか気の利いたひとがいないか・・・ガラス戸に張り紙を出してみた。

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一週間ほど音沙汰がなかったが、いきなりホットパンツでロングヘアーの娘が中を覗き込んできた。ゴンちゃんはなぜか大歓迎で、せわしく尾を振っている。

16歳ぐらいだろうか、私も陶芸とは関係があるんですよと言いながらゴン太の頭をなでまわしている。甲賀の中学を卒業して、通信の高校に在学中ということなので暇はいつでもあるということである。土、日は必ず仕事であとは好きなようにしてかまわないという条件の、時間給のアルバイトである。それでも面白そうに展示品を見ながら、私の実家のものも並べていいですかといきなり言い出した。

なんでも甲賀の旧家で父親が陶芸家の大地主で伊賀と同じ陶土が出るので伊賀焼として作品を作っていて、それなりに有名だということだ。伊賀焼信楽焼をしのぐ茶陶の人気NO1で、よく似ているが見る人にはきちっと違いが分かるようである。ビードロ釉がグリーンで澄んでいるのが伊賀ということである。

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さて、ゴン太の歓迎の仕方が尋常ではないようである。オスの年頃犬だから若い娘が好きだけでないようである。

なんか約束の人のような必然的に出会ったようである。

すずというこの娘はとてもスポーティーで、甲賀忍者宗家としての基本は習っているとのことである。実家の作品は好きなように並べて、値段は犬と相談してくれと言ったらとても面白がっていた。

相変わらず競馬でかなり稼いでいるが、最近、自分をもっとグレードアップしろという、どういうわけか何とも言えない気持ちが強くなってきた。

普通のサラリーマンの息子で三流大学を卒業で不動産屋に勤務の後チベット香の専門店を立ち上げたが、中国人の原料買い占めにあいあえなく商売は終了をしてしまった。

今までで思いで深いことと言ったら、北インドダラムサラダライラマ法王の公邸を訪問したことである。

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その時には全く分からなかったのだが、このことが人生の分かれ目になったというか、必然的にここを訪れたようである。

なぜならダライラマは観世音菩薩の化身とされているがそれは超能力のない形だけのものである。観世音菩薩は私の人生に大きな影響を与えるのだが、まだこの時には全くわかってなかったのである。ダライラマ法王は行住坐臥弟子に見取り修業をさせている稀有の人である。

それとは別の形で私に命題を与えて観世音菩薩の意志を伝えるべくすでにレールが引かれていることが後からわかってきた。

まず自分をグレードアップしろとの命題だが、それなら好きな道でトップを張れば有名になれるし、世間にも認められる。それにはどのようにしたらいいのか、ゴン太の顔をじっと見つめた。

作陶はしていないが陶器は好きなので、加藤藤九郎に浜田庄司の陶器作りと尾形光琳のそれぞれの3倍のセンスをくださいとゴン太にお願いをしてみた。

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ちょっと首をひねって考えていたがワンワンワンのOKサインである。

本当に人間国宝以上になってしまっていいのかなと思ったが、この際やっちゃえと決意をした。是も世を楽しませる法楽の一種である。お香を焚いて神気を統一し、自分の好きな図柄と焼き方を考え観世音菩薩の真言オム マニ ペ メ フ ムを唱えてみた。

しばらくしてから、なんとなんと、尾形光琳の絵付けで益子焼の技法でできた大皿が出てきた。これは何というんだろう、異次元焼きとでも呼ぼうか、益子の人たちが怒こってしまうような浜田庄司を超えた出来上がりである。

自分で作って自分の作品に惚れてしまったが、いったい値決めはどのようにしたらいいのか・・・。追加でもすごいのができてきた、唐九郎を超えた油揚げ手の黄瀬戸の一輪挿し、決めては黄瀬戸の色でほんとの油揚げのような食べてしまいたいような色をしている。

第2話

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鼠志野は春先の海中の磯の岩のような深い味わいで、いずれも今までにないようなものだ。尾形光琳を超えた意匠と深みを増した益子の技法、こりゃあ間違いなく歴史上で一番の作陶家になってしまった。

すごいの一言で、あとはどうやって世間に知らしめるかだが、サン・リンポチェというのがペンネームで35歳、益子出身でチベット仏教に関心あり、あとは不詳。これだけの経歴と作品の写真5点を添えて超能力ではじき出したマスコミや、趣味の愛好家3000か所に展示会の案内文を出してみた。

船橋駅前の自店舗で14日間の展示会である。100作品を揃え価格はあえて出さずに、一点ずつの入札にしてみた。これで実力がはっきりするはず、さてどうなることやら。

乾山の絵付け主体の焼き物は低下度で焼成しているため、陶芸愛好者の中には絵柄はとても良いがいかがなものかという意見も多い。益子で一般的に使われている釉薬浜田庄司が先例を作っている為に1300度の高温で問題がない。

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その技法で光琳の卓越した意匠のものを合わせれば、そりゃいいものができます。それと自信の油揚げ手の黄瀬戸に、春の海底の風景を伝える鼠志野。

プロのバイヤーやまた思いがけないハプニングが起こりそうな様子で、ゴン太も楽しみでしょうがないというような顔をしている。

開催日前一週間でまずサン・リンポチェの詳細を聞いてくるバイヤーがかなり多く、マスコミもなぞの天才が現れたと興奮状態で連絡をしてくる。

リンポチェが実は私なんですというのはあくまで伏せておいて、今回は作品の説明と反応の把握に努めようと思っている。さてどうなることやら。

展示会を明日に控えた本日は展示の総仕上げであるとともに、マスコミが大勢来る予定とともに、現代陶芸家の2代巨匠の加藤唐九郎浜田庄司のレベルをはるかに凌駕する謎の作家が現れたということで、テレビのワイドショーに頼まれた評論家も来るようである。まあ、出たとこ勝負である。

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すずがニコニコしながら話しかけてきた。なんでも甲賀の里よりサスケという使用人が手伝いに来るということだ。父親の作陶手伝いをしていて、本人も相当に腕があり現代陶芸や骨董の目利きもそうとうなものらしい。

ゴン太は展示を終わった店内を見渡して、満足げな顔をしている。マスコミの内覧会は一様に衝撃の様子である。サン・リンポチェのプロフィールを詳しく聞いてくるが、紙面で公表していることがすべてでありそのほかのことは不詳ということで、一切の追加公表を行わなかった。

開店準備とマスコミの対応が終わって一息入れていると、小柄だが敏捷そうな30歳ぐらいの男性が入ってきた。鈴の父親に命じられて来ることになっていたが、さて何をやってもらおうか。武道はすずと同様に、甲賀忍術と観世音菩薩の秘命のために合気武道の師範を授かっている。ということは超能力も使えるということで大変に頼もしい。好きにさせて見ることにした。

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ついに展示会の開始時間になった。シャッターを開けると、およそ20人ぐらいが待っていた。ゴン太は受付のすずのところにちょこんとおとなしく座りながら、来店客を迎えている。

さすがにプロの専門家は一目見るなり驚いて、こりゃあすごいな久々の天才が現れたとささやきあっている。作品の前に購入希望金額が書き込めるようになっているが、お昼前には100点すべてに記入されているのを確認できた。また、クリスティーズサザビーズにebayオークションなどの海外オークション番組の担当者も視察に来ている。

現存の故浜田庄司の20cmの小壺で300万円、最近人間国宝になったばっかりの作家のもので150万円である。

さて私の同程度の小壺にはいくらの価額が・・・180万円になっていた。まだ何の公式の評価もない経歴不詳の作家ではまあ、この程度が最高かなという気がするが、まだ初日なので期待が持てる感触をつかめた。

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いろいろなメディアがこれらの作品を紹介していくので、一般客も見学に来る。富裕層の上客がどんな反応を示すかで入札価格が変わってくる。

2日目を迎えた。しょっぱなから押し出しが良く、貫禄がある2人連れが来店して来た。サスケは旧知のようでニコニコしている。鹿児島で薩摩茶の栽培や売買をしている会社の社長と常務だという。茶商と茶陶作家とのつながりというより、先祖の島津義弘が300人の小勢力で出陣し敗戦が決定的な中、敵陣営の真正面を堂々と横切って退いていったのは有名だがその時に身代わりとなり討ち死にした甥の豊久。薩摩に帰り着いたのはわずかに48名であったと記録されている。

その時に陰ながら食料の補充や道案内をしたのが甲賀の望月一党であり、すずやサスケの先祖である。なんでもその当時の義弘と望月の党首が友人関係で気軽な付き合いをしていたので、協力をしたとのことである。

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今日来たのは義弘と豊久の末裔の本家ではなく、親戚づきあいはしているが傍流であるということである。しかしなんと先祖返りにより叔父と甥が復活をしたのである。

島津義弘といえば、なんといっても朝鮮の役での四川の戦いである。島津本軍7000人だけで明・朝鮮連合軍20万人を薩摩軍得意の釣り野伏り戦法に引き込み、釘や鉄片が装填してある5門の大砲の前に大軍をおびき出して一挙に壊滅させたという軍神と呼ばれる伝説的な武将である。

朝鮮では子供が泣き止まないと、シマズが来るぞと言っておとなしくさせたそうである。義弘と豊久は当然に今では名前が変わっているが、先祖返りをしたのでこの名前で進めていきます。二人とも観世音菩薩より命題を受けて、ここに来たということである。

その後に真田昌幸石田三成が加わって、総勢7名の一個小隊が出来上がった。

観世音菩薩から王が私で総大将が義弘、副将が豊久。首相が真田で能使の三成が財務であると言われた。

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王の私の直轄がすずとサスケという何が何だか分からなくなってきたが、異次元で私の祖父達が国を造り現在は祖父の仲間が国王代理として治めていて、間もなく私に代わるということだ。

陶芸展で名前を広めてくださいということなのかな、異次元から現次元に移動をしてくるので準備をしなさいよということなのか・・・それとも温暖化にプラスチックごみなどの環境問題に立ち上がって、私たちスタッフを集めたのかとも思ったがそれだけでなくどうやら世界のことを考え、中心になってやっていきなさい。という考えを一番強く思った。

顔合わせが済んだのでとりあえずサスケ以外は帰ってもらい、展示会に専念をすることにした。一行が帰った後、マスコミの宣伝が効いていて、てんやわんや状態になってしまった。口うるさげなお茶を習っている主婦の仲間はいいものだけども価格が高い、抹茶茶碗は手ごろな値段のものでいいものを数種類は欲しいとのこと。

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このときゴン太がどういうわけか愛想よく尾を振って、主婦仲間のところに寄って行き首を上下に振って、任せてくださいなんて顔つきをしている。

私はあわててゴンちゃんの様子を見たが相変わらず自信ありげな表情をしている。[展示会の後にまた寄っていただけますか、手ごろな価格で良いものがそろっている可能性もあります。]

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サン・リンポチェの経歴は不明であるが、チベットでは博学で尊敬されている高僧という意味だそうだが、ペンネームなのでお香屋をやっていた関係で現地ではお香のことをサンと呼ばれており、その詳しいものがリンポチェであり単純にそれだけである。以前商売をやっていた時に関係者から、あんたはたいそうな名前を付けているよと指摘された時もあるがそんなことは知ったこっちゃあないのである。有名なコンクールの審査員とか賞をたくさん受賞をしている有名な作家とかが、面白がって見て回っているが一様に驚きの表情で説明を詳しく求めてくるが、ほとんどをプロ陶芸家のサスケに任せているが要領よくさばいている。順調に推移して1週間目にさえない身なりの30歳ぐらいのおっさんが、いい茶碗がそろっているんだけど手持ちが5000円しかない。失敗品とか傷物でいいから一椀が欲しいと申し出てきた。

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顔を見合わせて首をひねっていたが、ゴン太がおっさんのところに寄って愛想よくワンワンワンと鳴いた。これは何か重大な意味があると直感をして、犬があなたを気に入っています、ちょっと待ってくださいと別室から未展示の茶碗を持ってきた。益子乾山風のものである。これは無料プレゼントです、また遊びに来てください。と言ったら名刺を差し出した。航空研究所研究員平賀源内ということであったが、嬉しそうにスキップをする感じで帰っていった。”ゴンちゃんなんかあるのね~と言ったら”、ニヤリと笑ったようである。

さて、主婦連に用意する手頃な価格のお茶碗はどのようにするのか・・・サスケいわく楽茶碗は練習用に写しが多く焼かれているが長次郎・光悦を超えるものを作り、写しではなく分身をしたものに高台の裏にはサンリンポチェの署名とともに庵の印が入ることになる。これは分身の印で印のほかは本歌と100パーセント同じものである。

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分身は超能力で簡単に作れるし、ほかの種類もいろいろ用意をしておけば喜んでもらえると思う。これはこれで大きな商いになる可能性がある。もちろんオークションのものは一点ものなので値が崩れるということはない。すずはうなずき、ゴン太もこっくりと首を上下にしてうなずいた。茶碗は150万円だからいくらにしようか、共箱署名入りで75,000円だったら喜ばれるな。さて個別オークションは小壺が200万円で止まったままである。浜田庄司の同じ大きさのものが300万円なので、経歴不詳の新人の作家のものなのでこんなもので上出来だと思っていた。全100作品に指値が入ったので完売状態である。あと3日間もう惰性でいいやと思っていたら、全身から強烈なオーラを発散している上品なオバチャンが黒塗り運転手付きの車で登場した。なんと獰猛な大型犬のチベタンマスチーフとともに店内に入ってきた。

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お客様、お連れの犬はどうも・・と言おうとしたら、ゴン太は吠えるどころか尾っぽを振って歓迎の合図を送っている。マスチーフもうなずいて落ち着いているようだ。私は四菱の岩田本家の責任者です、経営から離れていますけども顔は効きますよ。これからお世話になると思いますがよろしく。と手土産持参で一番の大作で高額品に最高値を入れてにこやかに帰っていった。ふ~むこれは天命か・・。チベタンマスチーフはチベット高原が原産でバブル時代には5億円の世界最高値がついた。現地の寺院にはもう少し小型の種類が寺犬として飼われている。展示会を開催中、マスコミとバイヤーは注目を集めていることのネタ探しと、儲かりそうなにおいに鵜の目鷹の目である。まあ、経歴と住所が不詳で公式の写真もなく受賞歴もない新人作家でもずば抜けた実力があるので注目されている。さて、千客万来で大賑わいだが本日で最終日である。

[え~そうなの期待しているわ~ワンちゃんよろしくね]なんていいながら帰っていった。ゴンちゃん大丈夫なの、一声”ワン”と力強く吠えた。サスケとすずがにやにや笑いながら寄ってきて、大丈夫ですよと言っている。まあ、あとで詳しく考えるか。

今、抹茶茶碗は黄瀬戸と志野が一客180万円しているが見る人が見れば楽に1000万円は超えてくると思われるし、琳派の益子風茶碗もそれなりである。一般の主婦には全く手が出ない、ゴンちゃんとサスケは何を考えているのか。

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早めの15時で終了だが11時頃にどういうわけか、すずの父親でサスケの主人の望月氏が先日来店した真田昌幸を伴って来店した。もともと両氏は信州出身で同族である。戦国期前に望月氏甲賀に移動したということでサスケの先祖も同じだということだ。一緒に何かできそうでとても面白く、真田一族をあげて協力するということだ。サスケは観世音菩薩から超能力を授かり甲賀忍法と合わせて独自の合気武道を完成している。サスケが師範でありすずが師範代理である。ちょうど地まわりのヤクザ者7人が景気のいい匂いを嗅ぎつけて、[俺たちに挨拶はねえのかい]とすごんでみせた。店で暴れられるとヤバイので店の外に出てもらった。7人が出たのをみはらかってサスケとすずにゴン太までが態度を一変させた。しかし勝負はあっけなくすぐに決着した。サスケが[フッ]っと短い気を発すると一瞬で7人が膝から崩れ落ちた。手と足にあごの関節を外してしまったのである。

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騒ぎに駆け付けた見物客があまりのすさまじさにあっけにとらわれて、ポカンとしている。店頭で転がっていても一般の人に邪魔なので警察に処理をしてもらった。展示会の売り上げはざっと2億円ほどになったが資金的に余裕が出たので、今後の展開も楽になる。財務大臣石田三成に資金の運用を教えてもらおうと呼んでみた。石田[しばらく考えてからおもむろに、こんなちまちまとやっていてもどうにもならない。私達は最終的に世界の平和と安全それに環境を守らなければならない。まず初めにロシアをやっつけるが軍資金は米国の銀行の古札が中央銀行に回収される前にすり替える。超能力でやるから全く同じものなので見分けがつかない。EU通貨にポンドこれも同じようにやり、5年で2000兆円をストックする。莫大な量になるので異次元倉庫に保管します。それに金とプラチナは自然界から簡単に集められるので、それぞれ8000kgに2000kgを集めて保管します。]

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[これでロシアと戦争できます。その前に観世音菩薩が異次元に太平洋、インド洋、大西洋にまたがる広大な領地の明日香王国を造っているので、それを現次元に融合させていかなければなりませんが、超能力で世論を肯定的にしておけば問題はありません。あとは粛々と行くだけです。私を含めて各自仕事があるため、自分の身をもう一人作る分身をして観世音菩薩が定めたスタッフがそれぞれに集まってきた。それにもう一人追加で一人、航空研究所の技官の平賀源内である。展示会で所持金が5,000円しかなかったので、抹茶茶碗を無料でプレゼントした相手である。ゴン太は首を縦に振ってうなずいているが、これから強い味方になりそうだ。異次元の広大な王国に、全員がサスケの時空超能力で一瞬に到着した。王宮入り口に国王代理の老僧が出迎えた。10万坪の広い敷地だが驕りたかぶった雰囲気は何にもない。

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なにからなにまで観世音菩薩の指示で国づくりをしてすでに50年が経つということで、初代国王の祖父が死去して受け継いで8年になるいうことである。すでにほとんどの準備が終わっているので交代だといった。裏山に密教、大日観世音教の総本山がありそこの住職になるということである。私が国王に法王それに観世音教の代表を兼ねるということであるが、この老師と南インド大陸の菩薩山5,555mの中腹にある菩薩山カイラス寺の住職が祖父の仲間なので副法王で観世音教の副代表である。裏山にある観世音寺の敷地はとても広く山が3つ連てらなっている感じである。首都のど真ん中で貴重なオアシスとしての価値も提供をしている。王宮の周囲は観世音寺門前町になっていて、服装は江戸時代そのもので差し詰め日光江戸村の大型版といったところか。特徴は室町期から江戸末期までの大道芸に歌舞伎や見世物小屋などもあり、とにかく活気がすごい。



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江戸雑貨も時空を超えてそのまま仕入れてくるので、面白味満載である。王宮正面入り口前はバードサンクチュアリー公園になっていて、専門の係員がいろいろな鳥を呼び寄せ、木々にはリスやモモンガいるそうだ。とにかく鳥が人懐っこい。自然界の動物がここに来るととてもフレンドリーになるようだ。ここに飼われている2匹のネコの腹や背中に小鳥がのっのかってきてもそのままにしている。スタッフは王宮内の宿舎に住んでもらったが、1人5LDKの部屋に温泉大浴場に食堂付きで快適なようだ。全員が王宮司令部付きになっているが分身をして適材適所に配属された。遅くても5年以内に異次元から現次元に融合して行かなくてはならない。ゴン太を連れて王宮前のバードサンクチュアリに行ってみた。普通、外部からの犬などの動物は同伴が禁止されているが、首輪に王宮警察の名前が入っているので関係者と見て特別に許可された。

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娘の志野さんもいらして大歓迎、[うわぁ~いい犬ですね]私よりゴン太に関心があるみたいだ。ゴン太も娘とこの環境が気に入ったようで、はしゃいでいる。医学部の2年生で暇なときには実家のこ仕事を手伝っているとのことだ。ゴン太は私のズボンを嚙んで引っ張り、特別な人だよというサインを送ってきた。すなわち将来を見据えてこの場所に住まわせたということか、すべてゴン太の本元である観世音菩薩の段取りのようである。[私はそこに住んでいる主人です。]と言ったら、一瞬びっくりして[でもとても世界の圧倒的な不動産王で数十万の会社オーナーには見えないですね。]ここ明日香王国の土地とビルに一戸建ての不産に会社はすべて王様のもので、とんでもない大金持ちなのでである。そりゃあそうだつい最近まで小さな借家住まいで、競馬に狂っていた男である。[私は現次元で陶芸家として有名なんですよ。]と胸を張った。

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加藤唐九郎浜田庄司を越えた実力で、つい最近展示会で大評判だったことを話した。[うわぁ~両親も私も陶芸は大好きなんです。ガス窯ですがここで使っている食器は全部私達が焼いたものです。私の名前が志野というくらいだからライフワークなんですよ。][王宮に私が作陶したものをたくさん持ち込んであるのので、両親とともに遊びに来てください。夕食に招待しますよ。だいぶ犬も好きなようですが、この犬の他に2種類4匹がいます。外来者にはとても厳しい目を向けますが、あなたは全く問題ないと思いますよ。正面入り口でしたらあなたが来ることを察知して、いつでもこのゴン太が迎えに出てきます。]両親と一緒に

ぜひ陶器を見に来たいということなので、後で関係者を寄越すことにした。ゴン太の他にアルゼンチンの狩猟犬のDOGOARGENTINOと四国犬のMix2匹が正面入り口に番犬として活

躍している。

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それと敷地内に滝があるが水回りの番犬としても2匹のつがいが水回りの番犬としているがチェスナット・ベイ・リトリバーとニューファンドランド犬のMixである。こちらはとても人懐こいが、門番の方の2匹はピューマと対戦しても勝ってしまうほど獰猛な狩猟犬である。ここで番犬の半分の血筋であるDOGOARGENTINOについて述べてみよう。アルゼンチンのゴルドバで闘犬として使用されていたゴルドバ犬が闘犬の禁止によって絶滅が余儀なくされていたが、死ぬまで戦うスピリッツを生かして猟犬として他の数種類とかけ合わせて作出されて、噛み留めのイノシシ猟に最適化されている。したがってポインターのように吠えて銃を持った主人に知らせるのが役目ではなく、4匹から6匹ぐらいで直接ミサイルのようになって首筋にかぶりつき噛んで猟をするのである。終わった時には全身が血だらけで、全力を尽くすのでへたり込んでいるときもある。



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また最近ではパワーと忠義心が認められ、介助犬としても使用されている。日本犬のイノシシ猟のエースである四国犬との相乗効果が期待されているMix犬である。さて、軍神の島津義弘と甥の豊久コンビであるが義弘は明日香王国軍5万人の頂点に立ち総大将、首相になっている真田昌幸は大将で豊久は中将に決まった。天才技師の平賀源内には現次元の平均より30%アップになるように超能力を組み込んだ兵装になるように指示をした。石田三成にはUSAにEUそれにイギリスのポンドの古札の差し替えトリックで2,000兆円の軍資金の調達を急ぐようにこちらも指示した。更に平賀源内に超能力を使って飛行機に電車、車や船舶などの乗り物に世界が驚くような画期的なものができないかと聞いたところ、どういうわけかゴン太がワンワンワンと吠えてきた。それに合わせて源内は顔を横に傾けながら、水を燃料にするエンジンを作ればいいんですと。こともなげに言い放った。

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水燃料エンジンができれば車・飛行機・船に電車まで一新できて、新産業革命のような状態になる。こりゃあノーベル賞数個分ぐらいの価値がある。それと超能力者が普通に瞬間移動をしているが、それを電車のようにすれば飛行場を減らすことができるし、日本の主要駅に入れるようにしたらものすごい人数のお客さんが来れるようになる。それに中国・東南アジア・USA・EU・南米・アフリカなど世界各地を網羅すればどんな所でも2・3時間以内に到着できるようになる。まさしく夢の超特急エアトレインである。ちなみに明日香王国の首都きゃら市からアルゼンチンの南端パタゴニア近くの自国領の町まで、最速特急で途中20ヵ所に停車でも約60分で行けてしまう。EU諸国やUSAからの旅行者が押し寄せるのは目に見えている。オーストラリア西岸近辺の自国領からアフリカ東岸まで伸びている、元インド洋にある自国領土にも周辺国から多数が来国されると思われる。

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なぜなら興味を引くいくつかの要素があるからである。バングラディシュの南方方面にある山岳地帯には世界一のエベレスト8,848mを超える8,888mの如来山がそびえている。それともう一つの超目玉がある。それはお釈迦様に龍樹菩薩それに弥勒菩薩が復活されて大きな仏教センターを作ったので、周辺国から大勢の参拝客を見込める。仏教関連ではもう一つ大目玉を造り出した。空海が開いた高野山は北緯34度13分にあるが、唐の長安に在る青龍寺密教の正嫡を受けたが、ここと空海が生まれた善通寺も同じ北緯34度13分である。この同じ北緯の線上に中国と日本の歴史的に偉大な聖人を復活させて、仏教都市を作り出した。ここには達磨大師空海の師の恵果・空海日蓮法然最澄栄西道元親鸞・一休それにチベット仏教の祖パドマサンババも小さいが一寺を設けている。中国や日本の仏教界の大立者である。

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日本をはじめ中国や台湾などからも信者が多数が来られると思われるので、受け入れ態勢もそれなりに準備をしている。仏教関係の産業も多く、人口は7万人程度を予定している。ここも王宮周りと同じく江戸景観地区に指定され、着物文化が根付いている。二越呉服店もここに支店を出し拡張に余念がない。和装雑貨の店もほとんどがこちらに支店を設けている。お茶の大家である千利休も復活をしていろいろとやりだしたようだが、とにかく頑張ってほしい。ここの玉蘭市の店もほとんどが王宮関係のオーナーで専門部署が経営を行っている。最終的には王様のところに利益が入ってくるようになっているのである。さて、ゴン太が評判の優良犬なので他からも同じようなものを回してくれとの要望が多数来ている。まずお釈迦様のおられる仏教センターで暑さに強く60kgの大型の白いのを希望している。仏教の最重要地なので超優秀なのでなければならない。



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大型なのは寒い国のもので熱帯に向かないしどんなもんかゴンちゃんに聞いてみた。私と同じで白いのでいいじゃないというような感じである。取り合えず菩薩山カイラス寺の副法王である住職の和尚さんに、ゴン太と同じで白いのがあったらお釈迦さんのおられる仏教センターに回してくれと頼んだ。カイラス寺は末寺を入れると200寺以上の大寺院なので、寺犬としてそれぞれがゴン太と同じ種類のものを飼っている。参拝客が事故にあわないように常に見回りをしている賢い犬達である。あとは世界最高8,888mの高さを誇る如来山のごみの取り締まりと救助犬としてふさわしい犬・・・これはコーカシアンシェパードドックにしようかと思っている。とにかく高地なので寒さに強く、雪の中でも普通に寝れなければならない。ロシアのコーカサス地方原産のコーカシアンシェパードドックはロシア軍で軍用犬として使われている。

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強靭な体力と獰猛さを兼ね備えてそれに賢い。長毛で顔は黒っぽく全体は褐色をしている。これを超能力で改良して、カラーは雪山で目立つオレンジ色主体にして性格も穏やかにして知能も向上させればストライク犬になる。エベレストでもごみの問題は深刻なので、登山者にルールを破った場合は監視している犬がケツに噛みつく場合があり、その場合は一切の責任を取らない旨を申し渡せば震えあがるはずだ。それから低所登山でも遭難をすることが最近多く報道をされているが、寺犬はお寺でタラタラしているだけでなく、決められた所定の範囲を毎日巡回をしてしている。道案内だけだったら中型犬でもいいが、とっさの場合に咥えて引き上げたり凍え死にそうなときには暖めることことができる大型犬が最適だと思われる。王宮の正門前のバードサンクチャリーの娘である志野がどういうわけかネコ同伴でやってきた。

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DOGO ARGENTINOのMix犬の番犬が一瞬鋭い目つきをしたが、すぐに2匹とも尾を振ってすり寄ってきた。どうぞ歓迎しますという感じである。カンが鋭い犬なのですぐにどういう人かを見抜いたようだ。そこにゴン太が嬉しがって飛びついてきた。ネコは自分の上に野鳥が乗っても平気にしている性格なので、ゆったりしながらも会えて喜んでいるようだ。王宮内には自分が焼いたもののほか、膨大な骨とう品も陳列されている。中国や高麗・李朝のものに興味があるようだ。これはすごい量ですね、と目を見張っている。宋時代の砧青磁の前に来て、これは青磁の最優秀品ですよ。元朝末期の染付についても、こののびのびとした図柄と格調それに釉薬との兼ね合いもすべてに申し分ないです。ふ~っとため息をついている。ゴン太が寄ってきて頭で足をトントンと押してきた。ここで押さないとダメだよ、ってな感じだ。

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[宋時代に銘品が多いが明の色絵もいいな。][この時代に行ってたくさん買ってきたいですね。][それは簡単だけどもわざわざ買わなくても、分身させれば100パーセント同じだし面倒でなくて一番いいよ、超能力パソコンの画面で各時代の官製窯のものや民窯のものも色々出てくるので、それを分身でいただいてしまえばいいわけ。簡単で無制限に集められる。また、紛失された名物茶器がたくさんあるがそれも復活できる。時代をさかのぼって、紛失してしまう直前に分身して一方を持ってくればいいだけ。名物だったらものすごい高価なものになる。あなたは今、医学部の2年だけど、分身をして片方はそのまま学校に行って、もう一方は骨董集めなどを手伝ってくれたらうれしいな。ものすごく意義のあることだよ。]と言ったら、ゴン太がワンワンワンのOKサインを送ってきた。志野の愛ネコもミャーミャーと同意のようだ。



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その後にスタッフルームに連れて行ってみんなに紹介した。分身はそれぞれ激務をこなしているが、ここは本身で雰囲気が和気あいあいとしている。大将に首相や財務大臣などそうそうたるメンバーが揃っているのに志野はびっくりした。まーよろしくと、一同。気楽にね~とサスケにすず。一見して面白い雰囲気が感じられ、ものすごいメンバーというのが直観で感じられた。両親の許可を取り、分身をしてこちらに通ってみようと思った。明日香王国の首都はきゃら市であるが王宮まで30㎞程である。きゃら駅の北面はオフィス街で南面は商業地区になっている。敷地に建物それに入っている会社の、最終オーナーのほとんどが王様の名義である。その駅の両サイドを囲むように高層ホテルが建ち、その南に敷地もおそらく世界一の福丸デパートがある。52F~54Fが美術・骨董・陶芸品売り場である。55Fはレストランに子供遊園地、屋上にこのデパート自慢で2階建てのコンサートホールがある。

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ベートーベン・モーツァルトチャイコフスキーなどビッグネームを復活させて、新譜を演奏させる。ベートーベンはシンフォニーの9番で終わっているので10番の初演をこのホールで公演すると世界中が大騒ぎですごいことになる。金土日、3日続けて同じ演目でも満員になる。コンサートが注目されればデパートにもお客さんが入ってくる。最近、デパートがどこも不況のようだけども、やり方次第でなんとでもなる。絵画でも人気の印象派ルノワール・モネ・セザンヌゴッホなどの有名どころを復活させて、展示即売会でもやったら大変なことになり面白すぎる。サスケとすずは陶芸の専門家なので52F~54Fを分身して見てもらっているが、志野も加えようと思う。本身は王宮スタッフで2人分を分身して医大生とデパートの売り場手伝いになる。親の許可を取ったようで、毎日ネコのタマ連れてやってくる。

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志野はスタッフルームで高度な秘密情報が飛び交う雰囲気に緊張をしていたが、いまではわくわく感いっぱいでとても充実しているようだ。財務大臣石田三成は超能力を使って、USA・EUそれに英国でそれぞれの中央銀行が回収する古札を分身したものと差し替えて、1,000兆円を作り上げた。予定ではあと1,000兆円が必要である。対ロシア戦の作戦案ではまず石油にガス、それにダイアモンドや亜鉛などの地下資源の生産をストップさせれば財政は火の車になる。そこでロシア全土を抵当に入れて高額な金を貸し付ける。核がなく5万の兵力ではいざとなったらとぼけちゃえばいい。と大国精神でなめてくるのでやりやすい。まず明日香王国全土は現次元に接続した時点でバリアーで覆ってしまって敵からの攻撃に対処をする。地下1,000m・水中20,000mそれに上空50,000mまで対処しているのでどんな攻撃にも防御できる。

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島津義弘総大将より参謀長として竹中半兵衛重治を招致したい旨の申し出があったので、スタッフに加えようと思っている。竹中半兵衛は美濃稲葉山城主の斎藤龍興より辱めを受けたので、部下10人とともに計略を用いて落としてしまった、智謀神の如しと言われた武将である。ゴン太と番犬2匹は最近、イノシシ猟のお呼びがないので不満の表情をチラチラ出してきた。たまには猪の肉を食いたいのであろう。王室専用の猟場が各地にあるが、今は11月なので北の近場で可能である。200kgの大猪を噛み留めして仕留める、いわゆるキャッチドッグ猟である。ポインターのように吠えたてて主人を呼んで仕留めるのではなく、猪に直接噛みついて仕留めるとても荒っぽい猟である。胸周りに皮で作った傷防止のプロテクターを着けて、ジャンプ一番ミサイルのようになって喉元に飛びついていき、鋭い牙でなんどもすくいあげられ転がされてもめげづに向かっていく、体力と気力の勝負である。

 

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王様のスタッフは戦国武将が多いので狩猟は大人気である。王宮に本身は残して分身してスタッフ全員と解体と調理のコックを数名を連れていくことにした。ゴン太と番犬2匹に来週行くから準備をするように言ったら、一瞬鋭い目つきをしたが嬉しそうである。犬の本身はスタッフ同様に残し分身の倍掛け6匹で行くことにした。調理担当は先行させ狩猟メンバーはトラック2台に分乗した。狩場には中級の河川があり5㎢の湖もある。普通だったら猪を探し出すのは難しいが、そこは超能力者がいる集団である。簡単に200㎏超えを見つけ出した。まず先方の島津義弘がDOGO ARGENTINOと四国犬のMixの番犬4匹を放った。もちろんケガを防止するために胸と前脚の上部に皮で作ったプロテクターを付けている。犬は勢いよく突進していったが、猪は歴戦の猛者のようでなめ切った態度で無視して餌をあさっている。ゴン太が正面から向かっていき、残りは両サイドに分かれた。

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DOGOの血筋は死ぬまで戦うゴルドバ犬の本能が強い、すかさず四匹はあまり吠えずに喉元目指して噛みついていった。体制を入れ替え一匹のDOGOを牙で下からすくい上げて空中に放り投げられて、2mぐらい舞い上がり背中から叩きつけられた。他の三匹もひるまずに向かっていったが、簡単にあしらわれてまだ嚙みつけられないでいる。振り払われてもめげずに何度も何度も突進していって、一瞬のスキをついて遂にかぶりつくことに成功したが絶対に放さないぞという闘志が伝わってくる。200kgの猪になるとこのくらいは屁のカッパのようにまだ落ち着いている。カブリついている犬は全身が血だらけで真っ赤になっているが他の三匹はすでに牙にかけられ近くでのびている。さすがに猪も犬も動きが鈍ってきたようだ。次方の登場で、ゴン太二匹が勢い良く飛び出していった。無傷な反対側の首筋めがけて大陸弾道弾のように7mぐらい空中を飛んで首筋に噛みついた。

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今まで頑張っていたDOGOは起き上がってきた二匹と交代した。50kgと60kg四匹が首筋にぶら下がっているのである。スタッフ一同はここが勝負所と思い手に汗を握っている。喰いついている四匹は全匹血だらけで首を激しく振っている。さすがの200kgを超える猛者も進退が極まったようで著しく弱ってきた。島津義弘がサスケに合図を送ってきた。[ほならいきますよ~]気をグッと入れて首をねじってしまった。それで即死である。傷ついた犬たちは医学生の志野の手当てで以前の状態に戻った。明日香伝統医療は傷を治すのではなく超能力で元の状態に瞬時に戻せるのである。したがって今回は薬も全く必要がない。獲物の猪の傷部分は味が変わってしまって食用に不向きなので、切り取って全部が犬の餌になる。まあ200kgあるので全員で食べても充分すぎる量だ。ゴンタと番犬は早く食べたくて、ソワソワして落ち着かない。

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犬用には生ではなく茹でてから与えている。次の狩猟のためにしっかりと猪の味を覚えておいてもらわなくてはならない。戦国武将の島津の2人や真田昌幸石田三成竹中半兵衛は久々に血がたぎるような思いをしたのか、興奮の態である。DOGOARGENTINOと四国犬のMixの番犬が跳ね返され、振り払われてヨレヨレになりながらも闘志を失わず向かっていく姿勢に感銘を受けたようである。薩摩隼人のような、立派で良か犬ですたい。DOGOの番犬2匹とゴン太の頭をしきりに撫でている。明日は野鳥でも取って、近所の土産にでもするかな。美味くて人気なのは鶴に白鳥それに雁が続いているが、雁はガンとも言いガンモドキのガンである。鴨は意外にも4番人気である。ガンの家禽がガチョウでくちばしを下げて向かってくると危ない。番犬代わりに飼っている家もあると聞く。翌日、雁の一群30羽が飛んでいたので気を送り一網打尽にした。

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ゴン太は護畜犬と四国犬のMixなので、泳ぎはDOGOMixの方が得意で湖から強く噛まないで傷まないようにして回収してきた。王宮に帰ってきて獲物の猪肉と雁を分けて持たせたが、隣接している門前町の裏通りのなじみにしている定食屋に2匹を包んでゴン太と一緒に行ってみた。7歳ぐらいの娘が一生懸命に手伝っている。こちらに気が付いてやってきた。ゴン太が大好きで何か話をしている。ここは大道芸人や職人などが多く、いつも混んでいる。貧乏人達にとっては安くてうまいとてもありがたい店のようだ。父親である店主にお土産だけどどうぞと2匹をやったら、とても驚いていた。こりゃ~美味そうだと奥さんとうなずきあっている。ガンモドキじゃあなくてほんとうのガンなんて話していたら、周りの職人たちがジロジロとみている。犬の首輪に目立つように王宮警察と書き入れてあり、リードはつけていない。

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少し離れて目立たないように警護員2人が見張っている。店主夫婦は王宮関係者ということに気が付いているようだが、対応は一般客と同じにしていてくれる。疲れなくてとても落ち着く。お茶を一杯ごちそうになり店を出ようとしたら、娘がゴン太と一緒にいたくてぐずりだしてしまったので、母親の許可を取り近くを散歩してみることにした。間もなく門前町のここには若頭に大前田英五郎、小頭に清水の次郎長、黒駒の勝蔵それに飯岡の助五郎などの歴々が子分を引き連れて各場所の采配をしている。門前町のほとんどの店や会社のオーナーは王室関係であるがまじめに20年以上勤めているところに45パーセントの経営権を与えているがこの町の土地と建物のほとんど全部が王室関係の所有である。裏山の総本山観世音寺も名義は王室である。法王は王様が兼ねているが副法王はここの住職の元国王代理とカイラス寺の住職が兼ねている。

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辰五郎の事務所は口入れ屋もやっているので、いろいろな人達が出入りをしている。目ざとく王様を見つけた若い衆がどうぞお入いりをと寄ってきた。中に入ると辰五郎が最敬礼で出迎えた。[どうだ辰五郎、景気はよさそうだな。][へいおかげさまで、福丸デパートの路上販売で警察と多少のトラブルがありましたが解決いたしました。今はかなりの売り上げで儲かっています。]と威勢の良い言葉が返ってきた。明日香王国の土地は全部が王様の名義であり、道路や歩道も貸してあるだけで名義は王様のものである。道路の用地を貸すにあたって覚書を結んであり、こちらの采配ですべての路上販売の場所を決めるとともに、歩道も通行の邪魔にならないようにこちらで采配できるようになっている。したがって歩道上の建物も常識内で建てられる。警察にあ~だこ~だと言われる筋合いは全くないのである。福丸デパートの前の広い歩道には規則正しく、いろいろな出店が並んでいる。

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こちらも辰五郎の采配である。裏通りには多くの食べ物の屋台が並んでいるが、社会の底辺で苦労した人も多い。辰五郎は母子家庭や年配者がやっている屋台には特に注意をして、儲かっていなければ場所代に屋台代を猶予するように、それと儲かるようにいっしょに知恵を絞るように言ってある。この方面を担当しているのは銚子港をシマにしていた飯岡助五郎である。助五郎は利根川を舞台に笹川の繁蔵と抗争を繰り返し、人気は繁蔵のほうがはるかにあったが実際には地元の評判が大変良かったといわれている。辰五郎と話をしていると、娘のタエが新門の印半纏に豆絞りの手拭いを巻いていなせなかっこうをしてこれから門前町のシマ内を見回りに行くと言う、連れてきた定食屋の娘おヨシと同い年でたいへん仲が良い、見回りに一緒に連れていくのでゴン太を貸してくれと言ってきた。真剣で有無を言わさない表情だ。ゴン太はいいよってな感じで尾を振っている。

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分身をしてゴン太を付けることにした。終わったら勝手に帰ってくるから送り届けなくていいよ。これにテキヤの6歳と5歳の子供が子分として加わる。犬はDOGOのMix犬の力丸とゴン太の2匹である。おヨシはうれしがって、ゴンタの頭をなでてニコニコしている。もうそこらへんの顔になっているので、見世物小屋でも芝居小屋でも顔パスである。仕切っている親分の娘ということで、そこら中から挨拶をしてくる。参道を見回っていると、半グレのチンピラが3人カップ酒を飲みながらタラタラ歩いてきた。そして目の前で飲み終わったカップを放り投げた。たちまち正義感の強いタエは柳眉を逆立て[何をやってんの、すぐに拾いなさい。][この小娘のガキん子が~。]っとにやにやしている。たちまち2匹の犬が進み出て、態勢を低くして低く唸り声をあげだした。[首輪を見なさい、この犬は警察犬だよカスには噛みついていいことになってるの、200kgの猪をかみ殺してしまう猟犬と勝負する!]

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50kgと60kgの牙をむきだして、唸り声をあげて今にも飛びかかろうとしている。迫力にチンピラはタジタジである。反対向きになりすごすごと帰っていった。沿道の観衆はさすが新門の娘だと拍手喝采で、テキヤのあんちゃんは綿アメを4本持ってきた。ター坊とよっちゃんはエイエイオーと勝ちどきをあげている。4人と2匹で見回りをしていると、店先で椅子の上で寝ている面白い猫に出会った。トラネコなのだろうが、その上にエンジと黄色の僧衣を着たように色が染められている。トラネコ模様の手と足はそのままでその上に羽織っているようである。[うわ~い面白いや、なんだこのネコ]とター坊。よっちゃんは仰向けに寝ている腹を撫でている。[これ染めたんじゃあなくて天然かな]おヨシも覗き込んで不思議がっている。ゴン太が顔をぺろぺろと舐めたのでキョトンとしている。[かわいいね私も欲しいな]とタエ。面白そうに見ていたら、[あ、おねえさん、なんでここにいるの]とおヨシ。

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この店と福丸デパートの美術骨董売り場で陶器の担当をしている志野の分身に出会った。本身は王宮で王様の秘書のようなことをしているので、タエもおヨシもよく知っている。[ジュースとクッキーを出すから、休んでいきなさい。][うわ~い、いいな。]とター坊、子供たちを中に入れて話していると、なついているゴン太がすり寄ってきた。[あなたたち王宮に遊びに来なさい、釣りをして焼いて食べれてとてもおいしいわよ、王様は子供が大好きなので大丈夫、日曜の朝八時正門前に集合わかった?][うわぁ~面白そう]一同は大賛成である。[じゃあここで解散、ゴンちゃんは勝手に帰っていくのでお別れね。]ワンワンワンと尾を振って帰っていった。[おね~さんさようなら]日曜日が待ちどうしくてしょうがないようだ。王様はとても気に入って、せっかくだから志野の両親も呼んで来いという。日曜日はお客様で忙しいので分身をして、本身がこちらに来るようにした。

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日曜の朝、子供4人と志野の両親が定刻どおりにやってきた。番犬2匹とゴン太が出迎え志野もやってきた。王宮は約10万坪とかなり広い、敷地内に20m程の小山がありそこから10mの滝が落ちている。水量は天気に合わせた超能力管理で天然の清流の水がそのまま流れてくるということだ。ただし魚の餌となる川虫などは凝縮されてくるそうである。この見事な滝は松と楓を配してメインの桜の色が引き立つようになっている。東屋もありとてもしゃれている感じで、水周りの石立もすばらしく使用されている庭石も銘石揃いと見うけられた。ここを監視している番犬はニューファンドランド犬とチェスターベイリトリバーのMixである。ニューファンドランド犬は水難救助犬としてはとても素晴らしいが、いかんせん長毛で暑さに弱い。そこで体形はそのままに体毛をチェスターベイの渦巻にして、毛色もこげ茶色にした。

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性格は大変に穏やかで人懐っこいので、すぐに子供たちとうちとけてじゃれあっている。滝から流れてくる川は水深が50㎝で、釣りのポイントは川幅が広くなっている。ヤマメが主体でビワマスイワナがすこし混ざっている。ビワマスは琵琶湖だけに生息しているがたいへんに美味で刺身にもできる。王宮の係り員がすでに釣り具とエサを準備してあるのですぐに始められる。調理人が3人控えていて、釣果があればすぐに対応をしてくれる。犬達もご相伴があると思いウキウキしている。はやくもター坊とよっちゃんにあたりが出た。子供たちはいままでにあんまり釣りをしたことがないようで、夢中になっている。志野の両親と子供たちはたくさん釣り上げ、調理人がすばやく料理をしている。焼き魚にビワマスの刺身、それと具だくさんのバラ寿司にマンゴーやライチなど5種類の果物が盛ってある。塩抜きで焼いた魚をたらふく食べて犬達も満足そうにしているし、両親も目を細めて納得顔である。

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[ここに住んでいると、毎日ごちそうが出るの。]と5歳のよっちゃん。ター坊も関心があるようだ。理由はしょっちゅう来れると、しょっちゅうご馳走に在りつけるんじゃあないかという子供らしい発想だ。[王様とお姉ちゃんが結婚するといいね、よく遊びに来れるし犬もたくさんいて面白いから。]ター坊は口と裏腹に、ごちそうのことで頭がいっぱいのようである。[お父さん結婚してもいいよね]とよっちゃん。タエとおヨシはうなずきあって、これから私たちが積極的に進めようと思った。子供たちは志野の段取りで、おいしいお菓子をたくさんお土産にもらった。みんなニコニコ顔で[またきてもいいかな~おかしありがとう]よっちゃんにター坊、それに他の2人も嬉しがって帰っていった。両親も、王様によろしくと犬の頭をなでながら充実をした顔で帰っていった。子供達4人は正門を出てからすぐに相談を始めた。なんと言っても毎日ごちそうを食べれる誘惑の力は強い。

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タエ親分何とかしてよとよっちゃん、[お父さんに中に入ってもらって、何とかならないかしら]おヨシも[両親にいい考えがないか]聞いてみるとのこと。口いっぱいにお菓子をほおばって、夢心地でそれぞれが帰っていった。定食屋に戻ったおヨシはお父さんに[バードサンクチャリーのお姉さんは王宮で王様の秘書みたいな仕事をしているんだけど、私の友達のほとんどが王様とお似合いだと言ってるの、なんかおもしろいアイデアないかな~。]母親もそれを聞いていて[私もお似合いだと思うな、お父さんいい考えない。][なくもないぞ、ここを借りる時にお世話になった元国王代理の老師が、そのうちにここから王様の嫁が出ると予想して正門前をあてがったと言っていた。きっと賛成をしてくれると思うよ、新門の親方と話してみるわ。]おヨシの顔がぱぁ~つと明るくなった。さっそく、さきほど別れた仲間のところに連絡をしに行った。

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タエとター坊によっちゃんは自宅前の道路で遊んでいたので話したら、まずタエが相槌を打った。他の二人も必死の形相でタエの顔を見ている、タエは[まかしてって、私がお父さんにきちっと話をしてみる。]と頼もしく言い放った。あとからおヨシの父親もやってきてすぐに話がまとまって、これからお寺の老師に会いに行くといった。タエは2人の話を聞いていて[ここは子供の出る幕じゃあないけど、私とおヨシちゃんは志野お姉さんのことはよく知っているので、私達からも話をさせてください]と力強く言った。2人は顔を見合わせて[いいよ、2人ともついておいで。]裏山の観世音寺の住職で副法王をしている老師のところに4人が行くと、寺務所でくつろいでいたが懐かしい2人に会ったので快く向かい入れた。[それぞれの娘さんたちですか、いい娘さんに育っていますね。]と目を細めた。おヨシ父[その節はいろいろお世話になりましたが、ご無沙汰をしていまして申し訳ございません。]



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[いいんですよ国王をよろしくね、で、今日の要件は何か面白いことでもありましたか?][じつは国王のお嫁さんのことで、揃ってお伺いしました。]と辰五郎[どこかにいい娘さんがいましたか?][老師の予想どおりというか、王宮正門前のバードサンクチャリーの娘さんが相性がぴったりの感じです。今、王様の秘書のような仕事をしていますが、この娘達もお似合いだと騒いでいますのでお伺いした次第です。]老師[子供達は正直で直観もするどいものがありますが、そのとおりでしたら嬉しいですね。今度直接、王宮に行って確かめてみます。すぐにこちらから打ち合わせの相談があると思いますが、その節はよろしく。]と丁重な話であった。帰りにまんじゅうを5つずつ包んでくれて、子供たちにも持たせてくれた。辰五郎の事務所の前でター坊とよっちゃんは心配顔で帰りを待っていた。[あんたたち待っていてくれたの]とまんじゅうを一つづつ渡した。

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[うゎ~いさすが親分、うまそうだな。]ともう大喜びである。DOGOのMix犬の力丸も子供たちの笑顔に合わせて、嬉しそうにしている。[ター坊達は期待して待ってていいよ。][うわ~ぃごちそうの山になるな]と心配顔がニコニコか顔になり、喜んで帰っていった。2,3日して、老師がいきなり王宮にやってきた。志野がすぐにお茶と茶菓子を持っていくと、[まあ、ここにお座り、私をご存じかな][はい、老師様です。][う~む、あなたの周りの方達がいい娘さんだというので様子を見に来たんじゃ。あなたの両親はよく知っているけど、こんなしっかりした娘さんが生まれるとは大変うれしく思っている。突然に不躾で失礼じゃが、国王との相性がよさそうだとの声が多数から聞かされている。あなたはどのように思っていますか。][まだ仕事上のことだけで個人的なお付き合いはないのですが、たいへんスムーズでストレスのない毎日を送っています。ですが私は一般庶民で普通の家庭の娘です。]

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[な~に国王も現次元の日本で一般サラリーマンの子供として育ち、三流大学出で競馬ばかりやっていたしょうもない男だった。それがどういうわけか観世音菩薩様に見込まれて、このようになってしまった。まあ現次元の日本では陶芸家で大変有名になり、現在トップの実力になっているがな][私もそれに両親も陶芸が好きなので、したしみやすいですね。私はむしろありがたいくらいで老師様から両親に言ってくだされば、すべてうまくいくと思います。][そうか、そうか、じゃあ進めるぞ。]と嬉しそうに帰っていった。ゴン太は聞き耳を立てて尾を振って、とてもうれしそうにしている。[まさか私が観世音菩薩とは思いも寄らないでしょう。]なんて思っているのかもしれない。それから数日たって老師はバードサンクチュアリーの志野の両親の所にやってきた。事前に志野が話してあるので事は大変いい感じだった。[宮内省の係官が話をしに来ますので、お願いしますよ。]

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宮内[民間同士の結婚でしたらお嫁入り道具とかいろいろ費用がかかりますが、こちらは王族ですので一切の費用はこちらで負担をします。結納品代わりにそれなりの金額を用意しますので、全く心配なさらず待っていてください。]ともう確定の雰囲気で帰っていった。国王はもちろん老師に任せると言ってあるので、ほとんど決まりのようである。すぐにこの情報はタエとおヨシにも入ってきたのでター坊とよっちゃんははしゃぎまくって大騒ぎをしている。国内向けにはそれなりの体裁を整えなければならないが、ここはまだ異次元の世界で対外的には何もないので事は簡単である。王宮から車で15分のところにある正殿の大広間でそれなりの威厳のある格好をして、要人に食事の提供をしなければならないがこの時間を最短にして、あとは気の知れた身内で祝おうと考えている。辰五郎とおヨシの父親に仕切らせて段取りは進んでいる。



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なんでも祭りの山車や神輿が総出で町内を回ってから、王宮の正門前に集合するそうである。王様は辰五郎に[金はかかっていいから景気よくやってくれ。それと子供たちにも充分にお菓子などがいくように頼む、あとは宮廷の担当者と話をしてくれと積極的である。島津のコンビや竹中半兵衛などのスタッフは現次元に接続する準備で多忙だが、式の当日と次の日は国民の休日にしたので充分に楽しめると喜んでいる。お菓子の詰め合わせを子供たちに配ることにしたが、辰五郎はいつもの子供4人組を呼んで話を聞いた。タエとおヨシは子供仲間の年長者として常識的なことを言っているが、ター坊とよっちゃんは自分の食べたいものをたくさん言って譲らない。あまりこういう機会はないので、真剣そのものである。その時どういうわけかゴン太がター坊とよっちゃんの前にやってきて何か言いたそうである。おヨシは犬が好きでゴンタと仲良しなので気持ちを察して話し出した。

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[ター坊とよっちゃん、ここでがんばらなくてもお姉さんがお嫁に行ったらいつでも遊びに行けて、ごちそうが食べられるのよ]と言ったらゴン太もワンワンワンと同意をしている。親分のタエもうなずいているのでなんとか了承して収まった。門前町の各家庭に伝統の紅白の落雁菓子も配ることにし、門前町商店街にも目玉のセール品を出すように伝えた。観世音寺では新年に舞う特別の祝賀の舞を披露するということだ。きゃら駅近くの福丸デパートでは王様が100パーセントのオーナーなので大セールを準備をしている。周囲のテキヤ連中も当て込んで張り切っているようだ。采配の飯岡助五郎親分もにんまりとしている。結婚式は王宮行事として、つつがなく終了したが本当のお楽しみはこれからだ。早くも各町内の神輿が押し寄せ、王宮正門前でもみ合っていたが今はバードサンクチャリー横の広い芝生の上で休憩をしている。

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次はいよいよ山車の出番だ。普通の祭りは年番で順番が決められているが、今回は特別ということで仕切っている辰五郎の町内が一番にやってきた。お揃いの法被と揃いの色で鉢巻をしめている。子供は大人の休憩のときに少し載せてもらうだけなので、ほとんど綱を引いているだけだ。

山車が停車してそれぞれの地区の人形を屋上に立てているが、3mぐらいはありそうだ。正門に向けて横一列に並んだ。なかなかに壮観である。囃子はそれぞれがバラバラだが、踊りを始めたところは一様にピットコヒャラリッピとやっている。通称、ピットコである。

山車の前で子供たち7,8人がお面をつけて、おもいおもいの振り付けで踊っている。子供たちの独壇場である。おヨシにタエやよっちゃんそれにター坊、みんな一生懸命だ。ター坊は踊りが大好きで普段はボケ~っとしているのに、水を得た魚状態で生き生きとしている。大人たちは振る舞い酒の菰被りを美味そうに飲んでいる。
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観衆も大勢が集まったところで、いよいよ国王新夫婦のお出ましである。手短に挨拶を述べた後、辰五郎の木遣りで締めた。[国王陛下万歳、万歳]いっせいに湧きあがった歓声に、国王新夫婦は深々とお辞儀をして戻っていった。

王宮の担当者が大人には日本酒とおつまみの詰め合わせセット、子供にはお菓子のの詰め合わせセットと飲み物を全員に配った。各町内会の世話役には年祭りの2倍の、それぞれに二十万円が渡された。辰五郎が年祭りと同じご祝儀10万円と言ったところ、特別なものなので倍でよろしいということになったのだ。みんな納得をして、満足の態である。

子供4人も大きなお菓子の詰め合わせ袋を大事に抱えている。結婚式のイベントは大成功に終わったようである。お寺の参道も大賑わいでター坊によっちゃんの両親たちもテキヤで忙しそうで、福丸デパートもセールが大成功の情報が入っている。
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結婚式が終わったら旅行であるが、ここは異次元の世界なので国内の新しく整備した2か所の仏教聖地を訪れることにした。弘法大師は唐の長安青龍寺で恵果大師より密教の正嫡の認可を受けたが、その青龍寺と同じ緯度線上にあるのが弘法大師の生誕地にある善通寺である。その中間に同じ緯度線上になんと高野山もある。偶然なのか故意なのかはわからないがそのようになっている。

その強烈な緯度線上に同じく明日香王国の宗教都市である玉蘭市を造った。ここには達磨大師をはじめ、弘法大師にその師である恵果大師、日蓮法然親鸞道元最澄栄西などそうそうたる大物の仏教家が揃っている。それにチベット仏教創始者のパドマサンババが小さいながらも一山を構えている。

ここはとても重要な場所なので、有能な管理者を送り込んでいる。ここも観世音寺門前町と同じく江戸景観地区に指定されているので、住人はほとんどが和服の装いである。
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仏教美術も盛んで仏師の運慶に快慶、それに宗教画のお歴々も充実している。庭師で有名な夢想疎石は仕事の依頼が多いが、絞ってボツボツぐらいのペースでやっているようだ。茶道の千利休も復活をして、その道を追求していると聞いている。

玉蘭市の後はお釈迦様が復活している、白雲市に決めてある。さてお供はサスケにすずそれにゴン太にもちろん妻の志野、ガードマンと運転手各2人に執事である。6ドア9人乗りで2台であるが、本身は王宮に残し分身が来ている。この王宮車であるが、技術の天才平賀源内が水を燃料とするエンジンを作り実用化したものである。

超能力の瞬間移動ですぐに玉蘭市に到着した。まずなんといってもチベット仏教の祖である、パドマサンババに会うことにした。国王として上座に座ってもいいのだが、宗教家としては私も法王であるがなんといっても重みというか貫目がかなり違うので上座を譲った。
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サンババは一目で頭脳明晰がわかるというか、ちょっと他にはいないようなタイプだが見た目と違って、とてもさばけた人で親しみやすそうだ。ゴン太も一緒に上がってきて控えているが、上座の座布団からいきなり降りてゴンタを呼んで座らせるようにした。王様はあっやばいと思い手でまあまあと合図を送ったらにやりと笑って、わかったようだ。サスケとすずは首をひねって[へ~ゴン太が急にえらくなっちゃったの。]と不思議そうに王様の顔を覗き込んだ。

[私たちチベット人は観世音菩薩の真言、オン マニ ペ メ フムを毎日唱えています。その菩薩様が認めた国王ですので、私を含めて全員が協力すると思います。私たちにできることがありましたらどうぞ申し出てください。]とありがたい言葉を賜った。

このサンババ師は吐蕃王国初代の時に、国教を決めるべく禅門と口問で争ったが勝利した利け者である。また妻を5人娶るなどかなり面白い人物でもある。
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このサンババの宗派はニンマ派としてチベット仏教四大派閥て現在も続いている。ちなみにダライラマ法王は最大派閥のゲルク派である。

志野はゴン太がただものでないとうすうす感じていたが、今日のこのことでその思いを強くした。まだまだ他にも行きたいのだが他日にし、復活した千利休の所に行くことにした。参道を歩いていると露店がきちっと並べられ活気に満ちているとともに、大道芸人もうまい具合に溶け込んで調和のとれたいい雰囲気を醸し出している。

仏教聖都というと堅苦しいと感じるが適度に遊びの部分もあり、華やかさもある。この町は現次元に接続されると間違いなく大勢の人たちが押し寄せるので宿泊場所の準備をしなければならない。能吏の石田三成がいろいろと関係しているので大丈夫かなと思っていると、前方より親分風の鯔背な格好で4・5人子分を引き連れているのがやってきた。警護員が素早く身構えたが、愛想よくこちらにあいさつに来た。
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[新門の親分からうかがっていますが、黒駒の勝蔵と申します。どうぞ、お見知りおきをお願いします。][ごくろうさん、いい感じで仕切っていなさるな励みなさい。][ありがとさんで。]

少し歩いていくと”茶道教授初代千利休”との看板。大先生が驕らずに地道に周囲とうまくやっている感じだ。ちょうど娘が出てきたので在宅か尋ねると、空き時間でくつろいでいるとのこと。

[いらっしゃいませ、伺っております。国王夫妻様ですね、どうぞお座りになってください。][茶道教授は繁盛していますか?][いかんせん使用する道具が少なく不自由はありますが、自分で作ったり、見立てたりまあ何とかなっております。]

[ここにいるスタッフは私を含めて陶器関係の仕事をしていますんで、新作や骨董を含めていろいろ揃えることが可能です。どのようなものをご希望ですか。][ご心配下さりありがとうございます。何か所かの窯元さんもいらっしゃいますので、徐々にですが揃えられるようになりました。]
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[長次郎というわけにいきませんが、今の環境を景色として芸風にも取り入れて、柔軟にやっていきたいと思います。][すみませんが、お伺いしたいことがあるのですがよろしいでしょうか、答えたくなければおっしゃられなくて結構です。]

[どうぞおっしゃってください。多分、切腹の理由だと思いますが?もうはるか昔の歴史上のことですので・・・実はちょっとお金を稼ぐことに夢中になりすぎまして、トラブってしまったのです。納谷助左衛門のルソン壺を関白殿下に茶壷として薦めて買ってもらったのですが、それが焼かれていた中国南部地方では小便壺、いわゆる尿瓶として利用されていたのがばれてしまいまして、私は切腹で助左衛門が海外逃亡となりました。それだけのことですよ。これからはあまりお金に欲を出さずにお茶の道を追求するつもりです。]

[玉蘭市はこれから仏教大家のお歴々が揃っているので大勢の信者が来ることが予想されます。]
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[せっかく来てくださる方々のイメージをより強力にするためにの方策も重要です。仏教都市と言ったらやっぱり杉の大木に囲まれてそれなりな雰囲気も重要です。ここには幸いに苔寺などを作庭した夢窓疎石がいらっしゃる。]

町のはずれに弟子一人と中型の地犬が一匹、詫びた住まいで暮らしていた。[お待ちしておりました。どうぞお座りください。]ゆったりとした物腰で[自分の気に入った仕事だけを、ささやかにやっています。山歩き半分に仕事を半分でしょうか、修験者のような生活をしています。][実は折り入って頼みたい仕事がありましてお伺いをしました。][雰囲気的に面白そうな感じですね]庭の飼い犬もいままでたら~っとして寝ころんでいたのが急に起きだして尾を振っている。

[京の都の近辺で沢山の庭を作庭されたと思いますが、その経験を生かしてこの玉蘭の町を庭に見立てて造庭をしてもらいたい。]おどろいたような顔をして、目をパチクリさせている。
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本心を探るように首をちょっと斜めにして[すみませんが、どのようなことでしょうか?]

[まずこの町は大きくなることを見越して、メインとなる場所近辺はひじょうにゆったりとした空間になっています。参道も広くとってあり、空地も多くあります。そこに沿道を含めて1,000~3,000年の杉や銀杏の大木をふんだんに植えて、また、庭石の良いものや植木のすばらしいもので泉水を造って、歴史のある古都のようにしてほしいのです。なんなら金閣銀閣寺の有名な銘石も分身をして持ってこれますし、銘木も同じです。気に入ったものがなければここにいるサスケやすずに申しつけてくだされば、ご期待に副えるようなものをお持ちします。]

[ふ~む3,000年の大木ですか、私の庭造りの趣旨とはだいぶ違いますが、なかなか面白そうですね]従事官に段取りをつけておくように命じて後にした。パドマサンババの関係者が息せきをきって、駆け寄ってきた。

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[お呼びたてして申し訳ないのですが、もう一度来てくれるとありがたい]と言っている旨を伝えに来た。これから昵懇にしなければいけないので是非もなく行くことにした。

[お呼び立てしまして申し訳ございません。じつはお線香のことでお願いがございます。この地区におられるお歴々は貴宗派のものを利用させていただいていますが、できれば異次元空間を行き来できるということなので各宗派の昔のお線香を持ってきていただければ、他の宗派の方々も大変うれしく思うはずですし、現次元のお線香は化学薬品入りのものがほとんどですのでこれからこの玉蘭の町にたくさんの信者さんが訪れると思いますので、大きなビジネスになると思いますがいかがでしょうか。]

すかさずゴン太がワンワンワンと賛成の返事でサスケとすずも大きくうなずいたので従事官にすぐに取り掛かるように命じた。明日香王国でも人工的にきゃらやサンダルウッドに沈香を大幅に増やすように指示した。
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というのは中国で仏教が盛んになり原料の買い占めが起きて、お線香の生産に苦労しているとの情報を得ていたからである。

参道を歩いていると横の路地から、トッテンカントッテンカンという威勢のいい槌音が聞こえてきた。面白そうなので覗き込んだら、3人の若い衆が一心不乱に打ち続けている。店頭にはおびただしい包丁に大工道具や植木ばさみ・農具などいろいろなものが並んでいる。

中から奥さんと思われる人が出てきた、[景気はどう、いいものが並んでいますね][おかげさまで職人さんや主婦の方々にひいきにしていただいています。]とにこやかに応対をしてきた。[材料の手当てとか、不足をしていることはないかな?]

[おかげさまで王宮のそばの門前町に師匠の仕事場がありますので、新門の親分にお世話になって良くしてもらっています。]活気のある仕事場は気持ちのいいもので、志野は記念に包丁を2本買って笑みがこぼれている。
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玉蘭市から仏教聖都の白雲市に行く予定を如来山に変更した。というのはエベレストを抜いて標高8,888mで世界一になるので、準備の進展具合を見るためである。

早速、麓の入り口になる町の登山準備事務所に行ってみた。登山の専門家がネパールのシェルパ族と同じ程度の高地に住んでいる人たちをサポーターとして雇い、登山ルートを決めている段階だそうだ。内々ではすでに登頂も完了していてルートも出来上がっているが、他のルートや危険場所の対応をどうするかなどをと取り決めるとのことだ。

なお最初の登頂者は誰かというのが問題になるが、なんと人間ではなくここの監視犬とし養成しているコーカシアンシェパードドックが一番乗りだそうだ、なんでも登頂が近くなって登山者の速度が鈍っているところを、余裕でスタスタと登っていきワォーン ワォーン ワォーンと3回吠えたそうだ。このコーカシアンシェパードドッグは寒さに強く大型で60kg以上あり体力もあるようだ。
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如来山8,888mはエベレストを抜いて世界一の山であるが、まだここは異次元であり現次元ではない。バングラデシュの南方のインド洋だったところに出現した大陸の山で、如来山の他に5,000m級の5つの山々が連なっている広大な山岳地帯である。

この山の隣にその世界では有名な山本長五郎こと、通称清水の次郎長が一家共々お茶とブランデー造りをしているのでちょいと寄ってみた。次郎長は富士山の麓でお茶づくりをしていたことがあり、自分から新門辰五郎に申し出てこの仕事にいそしんでいる。酒造りは国王からの要望である。

王宮スタッフの島津義弘と甥の豊久は明日香王国の総司令官と副司令官であるが、もともと鹿児島の薩摩茶の製造販売をしていた社長と常務であるのでお茶には思い入れがある。その関係でかなり頻繁に覗きに来ているようだ。ここの茶園はおもに新しい品種の抹茶と中国茶の黒茶に分類されるプーアル茶を作っている。
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一般的には烏龍茶のほうが需要が多いと思われるが、香港ではプーアル茶のほうが一般的である。それもブランデーのように何年も寝かせたものが高価で人気がある。

明日香王国の超能力者は保存してある壺の中を、一瞬で数十年や数百年を経る超高速経過年数方法を使用して希望の状態を作り出すことができる。したがって魅力的な価格で充分に完熟して芳醇な香りの良品が提供できている。

抹茶のほうであるが、茶道で使用するお茶は品質を高めるために黒の覆いをかぶせて日光を遮断しているが、こちらはそのままで覆いは使用しない。それでも宇治茶よりおいしいと評判であるし、価格も手ごろである。

[次郎長さんいい仕事をなさっていますね。][ありがとうございます、やっと目鼻がたってきました。]従業員が抹茶とプーアル茶を出してきたが一様に納得した顔をしている。中国では明代のものがたまに売りに出るが、かなりの高価で取引されている。
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超能力で作り出した150年や250年物を手頃な価格で販売できれば、かなり大きな商売になりそうである。茶園の支配人は大政で酒造所は小政が支配人になっているが総支配人は清水の次郎長である。

暴れ者の石松と鬼吉それにお調子者の法印大五郎は国王の祖父の友人で有名調理長に特別に頼んで、3人を仕込んでもらった。徹底的なスパルタで鍛え上げたので腕は心配なく上級の調理人になっている。

看板のワインとブランデーも評判である。ワインは東欧の一部で使用されている、地中壺寝かせである。そのようにすると腰の強い深みのあるものができるそうであるし、品種もこの方式にあうものが作り出されている。ブランデーはオリジナルな蒸留方法をとっている。まずこの方法に合った品種を特別に作り出し、葡萄を発酵させその後は沸騰させた蒸留が普通であるがオリジナルな蒸留法は熱を加えないで水分だけ超能力で抜き取る方法である。
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そのあと樽に50年、半地下の素焼き壺に50年もちろん超能力による高速経過年数方法を使用するので100年貯蔵酒を手頃な価格で提供しているので、いわゆるツウの方には人気であるし、世界でここだけの蒸留方法の生ブランデーである。
芳醇でしっとりと包み込むような銘酒であるが、お茶を含めた企画販売のスペシャリストがいないので様子を見ながら対応していくことを決めた。

石松の店は3人のコックの評判がよくワインにブランデーそれにジビエ料理も人気なのだが石松がけんかっ早く、少しでも気に入らない客には不遜な態度を取ってしまう。まあ、それを楽しみにしているお客も多いのだけど。

醸造所に行くと支配人の小正が出てきて、[いらっしゃいませ、どうぞ試飲をお願いします。]とワインとブランデーが用意してあった。[ワインとブランデーは確かこのブドウ園専用の品種だったな、よく特徴が出たいいものです。特にブランデーは世界に誇るものですよ。コニャックのように生産地の名前を登録したほうがいいかもな。]
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茶園と醸造所にレストランは王様が土地と資金を提供し、新門辰五郎に預けて次郎長が総支配人として采配をしている。

同じ菩薩山は5,888mであるが、山の上部800mが四角推になっていて、チベット仏教の聖山のカイラス山にとても似ているので、第2カイラス山とも呼ばれている。菩薩山カイラス寺は標高4,000m程のところにあり、世界一の石仏もありとても大きなお寺で、ここら辺の末寺200か所を統括している。

山門に王様一行が入っていくとゴン太と同じ種類の犬(セントラルアジアシェパードドッグと四国犬のMix)が8匹ほどが近寄ってきて、ゴンタの前で行儀よくお座りをした。これらは寺犬として飼われており、参拝ルートの見回りもしている。通常の犬より知能が優れていて、また、人に危害を加えないように王様自ら改良を施している。この寺の各末寺にも数匹ずつ配置されていて参拝ルートや登山ルートの見回りをしている。
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8,888mの如来山では5,500mのベースキャンプまでがこの犬種の担当で、それ以上は寒冷地になるのでコーカシアンシェパードドッグにまかせている。ここにいるコーカシアンシェパードドッグは通常顔が黒くて褐色の体色であるが、救難時に目立つようにオレンジと白のブチになるように王様が手を加えた。

寺犬に案内されて本堂脇の寺事務所に老師と思われる住職がいた。[いらっしゃい、どうぞ中に入ってお座りください。][大きくて、りっぱなお寺ですね。][な~に王様のおじい様といっしょに造ったんだよ。]ゴン太がなぜか老師のそばに近づいて尾を振っている。[お父さんはあきらめて、あなたが後継ぎに選ばれてここにいらしたわけです、すべてが観世音菩薩のお引き回しですよ。

もう亡くなられたあなたのおじいさんと元国王代理と私は気心が知れた仲間で、国の将来を語り合ったものです。]と老師はゴン太の頭をなでながら話した。
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もしかしたらゴン太はここで生まれたのではないかと思ったが口には出さなかった。しばらくすると寺僧がスタッフそれぞれに抹茶をたてて、茶菓子とともに運んできた。

[これは奥高麗茶碗の熊川型に似ていますね、私やここにいるスタッフは陶芸に関した仕事をしていますのでよくわかりますが、これはいいですね作為がなくて枇杷色の釉薬や高台も優れています。これは老師がやかれたのですか?]

[な~にここいらの土味が面白いと思って私が焼いてみました。][ここいらへんの土は唐津に似て鉄分の多い陶土なので、食器や茶陶を作ると面白いですね。菩薩山焼ということで力を入れてみたらどうですか。このお寺は参拝客が多いのでそれなりに売れると思いますので、私たちのルートで強力をさせていただきます。][もったいない話でありがたいことです。それでは窯を焚くのも修行ということで、ひろげてみますかね。]ゴン太はうなずいて尾を振っている。

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寺犬が200か所の末寺に配置されているが、どのような活躍をしているのか聞いてみた。[ここいらへんは仏教聖地で参拝客が多いが山菜や薬草も豊富に取れるので、決められたルートから奥に入ってしまい迷ってしまうのも多い。寺犬は日に2度ほどルートを巡回していますので、遭難の気配を察知し駆けつけて状況に応じた何種類かの遠吠えをあげるのです。それを聞いて寺の救助隊が出動するのです。]

[うわ~ゴンちゃんの仲間は活躍しているんですね]とすず。[何か必要なことがありましたら申し出てください。おじいさんや元国王代理の老師ゆかりのお寺なので、精一杯協力をさせていただきます。]

[ありがとうございます。申し遅れましたが、ご結婚おめでとうございます。お祝い申し上げます。]いい雰囲気で気持ちよく寺を後にした。次の訪問地はインドネシアの首都のジャカルタの前の呼び名で、古都バタビアを模した町でスマトラ島の西岸と対極にある。
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もちろんここのここの住人はインドネシア人ではなく古都バタビアの住人になりきった明日香王国人である。インドネシアイスラム教が国教であるがその前は仏教が盛んでありバタビアは仏教の町であった。

国家戦略として、インドネシアシンガポール・マレーシア・バングラデシュそれにインドを仏教国にする遠大な計画がある。一般的に見ればなかなかに難しいと考えるのが一般的であるが、明日香王国は超能力者がいる国である。極端な言い方をすれば数秒でこの国々イスラム教徒を数秒で仏教徒の信者にすることができるのである。それではあまりにインパクトが強すぎるので段階的に進めることにしたのである。

その手始めとして古都バタビアの復元である。古都を史実に基づいて忠実に復元するのでなく、仏教的要素をふんだんに取り入れそれでいてなんとなく現代に通じている、ちょっと魅惑的で面白い街になっている。
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バタビアは元々仏教・ヒンズー教それにイスラム教などがMixしていて、仏教色を強めたからといって何ら不思議はない。町には石仏が多く、お釈迦さまや観世音菩薩がまつられている。

音楽ではなんといってもガムラン音楽に力を入れ、インドネシアの古典と明日香王国独自の物語と舞踊に音楽を揃えている。西洋音楽に比すことができる偉大なものだと思い、日本の歴史上の才能ある人たちを招へいし、超能力でパワーアップしているので最高のものになっている。バリ島のガムラン音楽は最高潮に達した時に、心臓にぐさりと来るような強烈なものを持っているが、西洋音楽とは感動の仕方が大きく違うようだ。

町歩きをあちこちしたので、休憩のために手頃な茶館に入ってみた。中国式の紅茶がおいしいというのでたのんでみたら、福建省と潮州で作られている工夫紅茶に似ているがそれとはまた違ったとにかく個性の強い香りと味のものである。
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[これはやっぱりストレートに限る、他のものを加えたら個性が死んでしまうので英国式の刻みのブレンドはアウトということです。あくまでも中国茶の中の紅茶ということですね。今は異次元の世界で他の国との交流はないが、間もなく接続される。その時にこの熱帯地方の明日香王国の料理としてはどのようにもっていったらいいのか・・・。]

志野は実家がレストランもやっているので料理に興味があるのか[ムスリムベジタリアン・ヒンディー用のものなどいろいろ必要だけどマレーシア料理が幅があって面白いし、南国にあっているので日系人に気に入られると思うわ。]すずも同調している。

ちょうど昼時になったので、西インドネシアスマトラ島パダン料理の店に入った。一人に皿15枚に盛った料理が出てきたが、料理は激辛で有名でカレー味や唐辛子の効いたものが多く、牛の内臓や魚を使ったものが多く
料金は食べた皿の分だけ払えばよい。
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アヤムと言われる地鶏のから揚げを食べてみたが、脇には刻んだ唐辛子が添えられている。小型だがチャボのような地鶏を使っているので、皮がパリッとして香ばしい。[こりゃあいけます。]みんな辛そうなしかめ顔をしているが、おいしいということで一致した。ここの場所は高温多湿で多種類の果物が豊富に取れる。ランプータン・マンゴー・パパイアそれに強烈な香りのドリアンなど、いずれも日系人に好まれるものだ。

首都のきゃら市は遠く離れているが、超能力の瞬間移動でたやすく運ぶことができる。首都をトロピカルフルーツでいっぱいにするのもいいかもしれない。[どうですかゴン太君。]ワンワンワン、賛成のようである。

現在、明日香王国の人口は約6億5千万人で元太平洋・インド洋それに大西洋の広大な3大陸に分布している。ほとんどが中産階級で、貧民はあんまり聞いたことがないが、母子家庭だったり、グレて家を出たものがいたり、不良もどきも多少はいる。
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そういう下層階級や落ちこぼれの人達にもきちんと職を与えないと、悪くなりかけのものはそうなってしまう可能性がある。このような階層の人たちを新門辰五郎の幅広い度量で受け入れさせようと思っている。

つまり主体は露店販売いわゆるテキ屋であるが、一番の繁華街である福丸デパート周辺は飯岡の助五郎が仕切っているが、まずそこらあたりで手軽に南国フルーツを食べられて、おいしく南国フルーツジュースも飲める。こんな店を出すように辰五郎に言ってみるか。それと元気のいい不良崩れの者達には、車で軽食や弁当を販売するシステムを作ってやらせようと思っている。これもうまくいけばパイは大きいので面白いことになりそうである。

さてさて、まだまだ行かなきゃいけない所がたくさんあるのだけれど、益子にいる両親と兄弟に結婚をした旨を知らせないといけない。いったん王宮に戻り、段取りをつけることになった。
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船橋の陶芸店にはサスケ・すず・ゴン太と私の分身がいるので志野だけ連れて行けば良い。さて、あっという間に切り替わって船橋の陶芸店に連れてきた。かなり売れ行きがいいみたいで、地元の益子から展示させてくれというオファーも届いているようだ。

さてどうするか・・・実家に結婚したことを報告しなければいけないが、志野は異次元の人でありまだ正式な結婚発表はできないので、彼女を紹介するにとどめることにした。実家にはみんながそろう夜に行った。志野をみんなに紹介し、陶器の販売で儲けた金で両親に300万円を渡し兄妹にそれぞれ50万円をプレゼントした。

みんなニコニコ顔で泊って行けといったが、ゴン太だけ預けて温泉と料理が手軽な料金で楽しめるうな八旅館に泊まったが、単純泉で料理もそれなりにけっこう美味かった。陶芸のことは実家に浜田庄司を超える久々のスターということで、かなりの人気になっているようだ。
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大手のつかもとや益子焼共販センターが、是非に置かせてくれという申し込が届いていて、お親父が知らせたのか上毛新聞が取材に来るようなことも言っている。

べつに売り物の陶器は超能力でいくらでも対応できるが、取材でしつこく聞かれるといろいろ面倒だと思った。異次元焼きと言ってもまともにしゃべったら頭がおかしいと思われてしまうので、船橋の一戸建てに住んでいてガス釜でささやかにやっているだけだと答えることにした。

久々に益子陶器を販売している、つかもとに寄ってみた。峠の釜めしの容器造りがメインで、研修生はここで仕事をしながら研修所に通っている。卒業生には有名だったが早死にしてしまった加守田章二などがいる。
浜田庄司の次の世代のエースと期待されていた惜しい人材であったが、その後には誰もいない。

兎の糞みたいに小粒なものばかりでスターがいないのだ。サスケとすずに命じてすきなだけ置かすようにした。
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展示場所といったらやっぱり、日本橋四越デパート8階の特選展示コーナーが有名である。ここは不動産会社に勤めている時に、日本橋高島屋の該当コーナーとともにしょっちゅう訪れていたところである。

その頃は勤めをしながらあっちこっちの陶器店やギャラリーを見てあるいた。ある陶芸作家が四越デパートの展示場で個展をやっていたのだが、入口でジロリと中を見渡してニヤニヤと笑ってそのまま帰ってしまったこともある。中にいた本人と目が合ったのだが、うん・・・なに者だろうと首をひねっていた。

作家さんには失礼をしたが、生意気な時もあったのである。志野を連れて益子焼共販センターに行ってみた。もちろん一般客としてだがすこしは興味をひくものもあるものの、昔から傾向が変わっていない。すなわち浜田庄司派か加守田章二派か、その両巨頭の影響を受けたものばかりで後がいないのである。
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結局、私の益子琳派がその後に続くのかな、何の賞も取っていない陶芸家でもかなり有名になっていて、抹茶茶碗一個で250万円程である。
前からオファーが入っている有名な日本橋四越デパート8階の特選売り場での個展であるが、なんだかんだで半分ぐらいの手取りか・・まあ、金には余裕があるので儲けよりも10日の開催期間中にどのような人が来るのか楽しみである。

そして私のほうもオリジナルである益子琳派風のもののほかに、世間一般が驚きの声をあげるような催しを差し込んでおかなければ私としても面白くない。それにはどのようにするか・・・。

考えついたのが喜左衛門井戸と同程度の総合力を持った大井度茶碗(国宝級のもの)それに重要文化財程度の熊川に三島の3点を同時に展示し、案内状にもその大井戸茶碗を載せるようにすれば見る人が見ればびっくりするでしょう。なにしろ成り上がりの賞なしの一作家が、とんでもないものを展示するのだから・・さてどうなるか。